非常に強い台風10号は、鹿児島県の種子島・屋久島地方などを暴風域に巻き込みながら北へ進んでいて、気象庁は奄美地方を除く鹿児島県に暴風と波浪の特別警報を、鹿児島県薩摩地方に高潮の特別警報を発表しました。
九州南部では風や雨が強まっていて、暴風や高波、高潮のほか、大雨にも厳重に警戒してください。
周囲を確認しづらい夜間に災害の危険度が急激に高くなるおそれがあり、今夜は頑丈な建物で安全を確保して過ごすようにして下さい。
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台風情報 データマップ
【台風の位置と強さ】午後7時推定
【風の見通し】大規模な災害発生が予想 最大級の警戒必要
台風はさらに発達し、29日にかけて、非常に強い勢力のまま九州へと近づき、その後、上陸するおそれがあります。
気象庁は28日午後1時に奄美地方を除く鹿児島県に暴風と波浪の特別警報を発表し、さらに午後4時20分には鹿児島県の薩摩地方に高潮の特別警報を発表しました。
住宅が倒壊するような猛烈な風や高潮、高波による広い範囲の浸水といった数十年に一度しかないような大規模な災害の発生が予想され、最大級の警戒が必要です。
28日の最大風速は
▽奄美地方と九州南部で50メートルと一部の住宅が倒壊するような猛烈な風が吹くほか
▽九州北部で20メートル
▽四国で18メートル
最大瞬間風速は
▽奄美地方と九州南部で70メートルに達し
▽九州北部と四国で30メートルと予想されています。
さらに奄美地方では29日にかけて、西日本では30日にかけて猛烈な風が吹くおそれがあり
29日の最大風速は
▽九州南部で50メートル
▽奄美地方と九州北部で40メートル
▽四国で25メートル
▽中国地方で18メートル
最大瞬間風速は
▽九州南部で70メートル
▽奄美地方と九州北部で60メートル
▽四国で35メートル
▽中国地方で30メートルと予想されています。
【大雨の見通し】鹿児島 宮崎で大雨の特別警報の可能性
その後、30日夕方までの24時間には
▽九州南部と北部と四国で400ミリ
▽東海で300ミリ
▽近畿で200ミリ
▽中国地方で150ミリと予想されています。
さらに、31日夕方までの24時間には
▽東海と近畿と四国で300ミリ
▽中国地方で200ミリ
▽九州北部で120ミリの雨が降る見込みです。
【海上の見通し】猛烈なしけ続く見込み
“過去最強クラス”の可能性 今夜は頑丈な建物や建物の高い階へ
また、落雷や竜巻などの突風にも十分注意が必要です。
今回の台風は専門家が「過去最強クラス」の可能性があると指摘するほど非常に強い勢力で接近するため、風や雨が急激に強まって災害の危険度が高まるほか、台風から離れた場所でも暖かく湿った空気の影響で大雨のおそれがあります。
これから夜の時間帯を迎え、道路や川など周囲の状況を確認するのが難しくなります。
周囲の状況が悪化しても避難場所までの移動が危険な場合があるため、28日は近くの頑丈な建物や建物の高い階で崖や斜面と反対側の部屋に移動するなどして安全を確保して下さい。
「台風の特別警報」とは
台風の特別警報は数十年に1度しかないような勢力で日本に接近すると予想される際に発表されます。発表の基準は中心の気圧が930ヘクトパスカル以下、または、最大風速が50メートル以上に達する台風などの接近が予想される場合で、暴風、高潮、波浪を対象に発表されます。
沖縄や奄美、それに小笠原諸島は、中心の気圧が910ヘクトパスカル以下、または最大風速が60メートル以上となっています。
【大雨特別警報との違い】
台風の特別警報は状況が悪化する「前」に出されます。台風の中心が対象とする地域に達するおよそ12時間前に発表されます。
一方、「大雨特別警報」はすでに大雨が降り状況が極めて悪化した状態に発表されます。大雨特別警報の見通しが出されていない地域が安全だということでは決してありません。
【特別警報待たず早めの避難を】
台風が接近すると暴風によって建物が倒壊するおそれもあるほか、大雨や高潮で建物が浸水する被害が出るおそれもあります。
崖や川、海岸の近くから離れ、頑丈な建物に避難することも重要です。暴風雨の中で移動することは困難です。
雨や風が強くなる前に危険な場所から離れ、避難してください。そして特別警報が発表されていない地域でも、特別警報を待たず、海岸や川の近く、周囲より低い土地、それに崖の近くに住む人は早めの避難を心がけてください。
「台風の特別警報」発表は過去3回
【2014年・台風8号】
台風による特別警報が初めて発表されたのは、2014年7月の台風8号です。
このときは、大型で非常に強い勢力で沖縄の南の海上を北へ進み、気象庁は沖縄県で記録的な暴風や高波になるおそれがあるとして、特別警報を出す可能性があると発表しました。
それからおよそ7時間後、実際に宮古島地方に特別警報を発表し、台風は沖縄本島と宮古島の間を通過して渡嘉敷島では53メートルの最大瞬間風速を観測したほか、名護市では降水量が457.5ミリに達し、記録的な大雨となりました。
さらに台風は北上を続け、鹿児島県阿久根市付近に上陸し、西日本から東日本の太平洋側を東寄りに進んで四国や東海などでも300ミリを超える大雨となり、長野県では土砂災害で犠牲者が出るなど、あわせて3人が亡くなりました。
【2016年・台風18号】
次に、台風の特別警報が発表されたのは2016年10月の台風18号です。
このときは、沖縄県の久米島の南の海上で猛烈な勢力にまで発達し、沖縄本島地方に特別警報が発表されました。
沖縄本島に接近したあと九州の西の海上を北へ進み、対馬海峡から日本海へと移動して各地で風が強まり、沖縄県の久米島空港では59.7メートル、金沢市でも43.4メートルの最大瞬間風速を観測しました
【2022年・台風14号】
最も直近で台風の特別警報が発表されたのは2022年9月の台風14号です。
このときは、大型で猛烈な強さに発達し、気象庁は、九州南部と九州北部で台風と大雨の特別警報を出す可能性があると発表し、およそ10時間後に鹿児島県に特別警報が発表されました。
沖縄県以外に台風の特別警報が発表されたのはこれが初めてのことでした。
台風は大型で非常に強い勢力で鹿児島市付近に上陸し、九州を縦断したあと、進路を東寄りに変えて中国地方や北陸付近を進みました。
台風の動きが遅く、台風本体や周辺の雨雲が長期間かかり続けたことによって降水量は宮崎県で900ミリを超えるなど9月の1か月分の平年の雨量の2倍前後となったところもありました。
このため、各地で大きな被害となり、宮崎県などであわせて5人が亡くなったほか、3000棟余りの住宅が被害を受けました。
【特別警報が発表されなかったケースも】
このほか、2020年9月の台風10号では気象庁が記者会見で「鹿児島県に特別警報発表の可能性の確度が高まった」と伝えましたが、その後、発達が弱まり、台風の特別警報は発表されませんでした。
政府 「特定災害対策本部」を設置 早めの避難呼びかける
台風10号の接近に伴い、気象庁が鹿児島県と宮崎県に大雨の特別警報を出す可能性があるなどと発表したことを受けて、政府は、災害対策基本法に基づき、松村防災担当大臣を本部長とする「特定災害対策本部」を設置し、会合を開きました。
本部長を務める松村防災担当大臣は、政府一丸となって災害対応にあたるよう岸田総理大臣から指示があったことを伝えた上で「地方自治体の首長は、地元の気象台とも緊密に連携し、人命を最優先に考えて空振りを恐れずに避難指示などを出し、安全な場所や避難所への避難が確実に行われるようにお願いしたい」と述べました。
また「国民のみなさんは『自らの命は自らで守る』との意識を持っていただき、避難指示などが出ていなくても、少しでも危険を感じればちゅうちょせずに避難してほしい。高齢者や障害者などの要配慮者については特に時間を要することから、早めの避難をお願いしたい」と呼びかけました。
そして関係省庁の担当者に対し、今後も最大限の緊張感を持って自治体の支援などを続けるよう求めました。
気象庁「暴風が吹き始める前に避難することが重要」
「同じ場所で長時間大雨に 最大級の警戒を」
また、「台風の特徴として動きがゆっくりであることが挙げられる。そのため、九州南部や奄美地方は暴風の吹く期間が長く、九州南部ではあさっても一部、暴風になる見込みだ。徐々に台風が北上すると九州南部だけでなく九州北部や四国、中国地方、近畿も影響を受けるようになる。九州北部に接近しても台風の速度は遅い状況で暴風や高波の警報を発表する期間が長引くおそれがある。また、ずっと同じ風向きで暖かく湿った空気が流れ込むため地形の影響などで上昇流が発生し、同じ場所で長い時間、大雨となることが考えられ最大級の警戒が必要になる」と述べました。
国土交通省「今のうちにハザードマップの確認を」
また、国土交通省は、「河川では現在、ダムの事前放流や水門の閉鎖など、氾濫を防止するための事前対策を進めているが、台風の接近に伴って長期的な大雨や集中的な豪雨が重なると、氾濫の危険性が高まる。早め早めの避難行動をしてほしい。雨や風が強くなったり、暗くなったりしてからの移動は危険を伴うため、早めの避難行動をお願いする。今後、台風の接近が予想される地域の人は、事前の準備が大事だ。今のうちにハザードマップなどの確認をして、停電や断水なども視野に準備を進めてほしい。運休や欠航、道路の通行止めの可能性があり各事業者のウェブサイトなどで最新の情報を確認してほしい。特に、外出の予定がある人は十分な時間的余裕を持った行動をお願いしたい」と呼びかけました。
土砂災害の専門家「最高レベルの警戒を」
土砂災害に詳しい鹿児島大学の地頭薗隆名誉教授は、台風10号に伴う大雨で地盤が緩むだけでなく、暴風で木が揺さぶられ斜面に亀裂が入ることもあるため、通常の大雨よりも土砂災害が起きやすくなると指摘しています。
また、九州では8月8日に起きた日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震で斜面に亀裂が入り、以前より崩れやすくなっている場所も多いとみられるとして、これまで以上に注意が必要だとしています。
地頭薗名誉教授は「避難の判断の際には過去の経験にとらわれないでほしい。これまで土砂災害が起きていないところは、斜面の土の層が蓄積していてかえって危険だ。土砂災害に対して最高レベルの警戒をしてほしい」と話しています。
さらに、今回はかなりの雨量が予想されているため、斜面の表面が崩れる「表層崩壊」だけでなく、岩盤深くから崩れる「深層崩壊」が起きるリスクも高いとしています。
九州では過去に火山性の地質の場所で400ミリ程度、九州山地のような山あいの地域で800ミリ程度の雨量で「深層崩壊」が起きたということです。
時間がたってから斜面が崩れたケースもあるということで、地頭薗名誉教授は、「雨の降り方によっては大規模な崩壊にも警戒が必要だ。雨がやんだあとも、しばらく警戒を続けることも念頭においてほしい」と話しています。
避難行動に詳しい専門家「台風から離れた場所でもリスクあり」
災害時の避難行動に詳しい静岡大学の牛山素行教授は、台風10号について動きが遅いため同じ場所で長時間にわたって雨が降り続けるおそれがあるとしています。
そのうえで、奈良県で総雨量が1800ミリに達するなど紀伊半島を中心に記録的な大雨となった2011年の台風12号を例に、今回は九州南部や四国などふだん雨がよく降る地域にとっても大雨になるおそれがあると指摘しています。
また、東海などですでに大雨となり土砂災害が起きていることを挙げ、台風の位置だけに注目すると避難のタイミングを逃すおそれがあるとしています。
このため、気象庁のホームページで雨雲の状況や災害の危険度など自分がいる場所の最新の情報をこまめに確認するよう呼びかけています。
牛山教授は「週末の予定を変更したり延期したりして屋外での行動を極力避けることも重要な避難行動の1つだ。また、避難をする前に雨や風が激しくなった場合には斜面から離れた場所や、頑丈な建物の2階以上など少しでも安全な場所で安全を確保してほしい」と話しています。