49歳の今がベスト! 車いすラグビー島川慎一「俺が世界最強」 競技歴25年いばらの道を歩み、得たスタイル(2024年8月26日『東京新聞』)

 
 気が付けばチーム最年長の49歳。「今が一番状態が良い」という確信がある。車いすラグビーで高い運動量が求められる障害の軽いハイポインター、島川慎一(バークレイズ証券)は年を重ねても進化の歩みを止めない。6大会連続出場で悲願の金メダルを狙うパリ・パラリンピックを「ラグビー人生の集大成」と位置付ける大ベテランの原動力はただ一つ。「負けたくない」。
日本代表の公開合宿でプレーを確認する島川慎一

日本代表の公開合宿でプレーを確認する島川慎一

◆年齢の壁をトレーニング量で打破

 競技歴は25年。今でこそ、ほぼプロとしてプレーする選手が大半を占めるようになったが、働きながら貯金を切り崩して遠征費などを捻出していた時代を知る。競技レベルを上げる海外挑戦や、競技に専念でき、環境面の支援も受けられるアスリート雇用の先駆けとなり、常に車いすラグビー界をけん引してきた。強烈なタックルが光るストイックな攻撃スタイルは、いばらの道を歩む中で築き上げられた。
 3年前の東京パラでは、同じハイポインターで主将の池透暢(ゆきのぶ=日興アセットマネジメント)とエース池崎大輔(三菱商事)の「イケイケコンビ」に続く3番手の存在に甘んじた。2大会連続の銅メダルに、「金メダルに向けて練習は十分だと思っていたが、それでも足りなかった」。悔しくて、1週間後には練習を再開していた。
東京パラリンピック車いすラグビー3位決定戦 オーストラリアに勝利し銅メダル獲得を決め、写真に収まる(左から)池、島川、池崎

東京パラリンピック車いすラグビー3位決定戦 オーストラリアに勝利し銅メダル獲得を決め、写真に収まる(左から)池、島川、池崎

 「(パフォーマンスが)年齢とともに落ちていくなら、トレーニング量を増やすだけ」。関節などへの負荷を考え、筋力トレーニングは低重量で回数を増やす内容に変え、走り込みにも注力。苦手意識のあったパスの精度も磨き、試合中に効果的に使えるようになった。「パスの距離も伸びたし、20メートル走も自己最高記録をたたき出せた」と胸を張る。

◆代表チームは「今が一番強い」

 パリ・パラのメンバーは、東京パラから1人入れ替わっただけ。この3年で練度は増し、直前の海外遠征でも優勝を重ねてきた。島川も「長いこと代表チームを見てきて、今が一番強い」と太鼓判を押す。個々のレベルが上がり、誰を入れ替えてもその強さを維持できるのがチームの武器だ。もちろん、最も存在感を放つのは自分。22歳で伸び盛りの橋本勝也(日興アセットマネジメント)までも「ライバル」と表現し、負けるつもりはさらさらない。
パリ・パラリンピック代表発表会見で意気込みを語る島川慎一

パリ・パラリンピック代表発表会見で意気込みを語る島川慎一

 何度出場しても、パラリンピックは緊張するという。そんなとき、島川は鏡を見つめ、自分に言い聞かせる。「俺が世界最強で、かっこいい」。コート上を誰よりも駆け回り、はね返され続けた金メダル獲得を今度こそ成し遂げる。(兼村優希)

 島川慎一(しまかわ・しんいち) 49歳、熊本県出身。パリ大会の車いすラグビー1次リーグで、日本はドイツ、米国、カナダと同組。9月1日に準決勝、2日に決勝が行われる。

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<連載:マイ・ウェイ! パリ・パラリンピック
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