熱中症対策に関する社説・コラム(2024年8月18日)


熱中症対策 暑さと湿度上昇に警戒したい(2024年8月18日『読売新聞』-「社説」)
 
 熱中症で救急搬送される人が相次いでいる。厳しい暑さは8月後半も続く見通しだ。警戒を怠らないようにしたい。
 お盆の期間中も、各地で「熱中症警戒アラート」が出る日が続いた。台風の影響などで湿度が上がると、日差しがなくても熱中症にかかりやすくなる。湿気で汗が乾きにくくなり、体に熱がこもるためだ。
 7月以降、熱中症の疑いで救急搬送された人は全国で毎週1万人前後に上っている。東京23区では、7月の1か月間だけで123人が熱中症で亡くなった。前年の7月に比べると28人増えた。
 かつては熱中症にかかっても亡くなる人は少なかったが、気温が上昇した影響で、近年は大幅に増えている。熱中症は今や、命を脅かす重大な健康被害になっていると言えるだろう。
 日本救急医学会は先月、熱中症の重症患者に対する治療法の指針をまとめた。重症者の救命には、霧吹きで体を湿らせて風をあてるなど、早急に体にこもった熱を奪う処置が有効だという。
 医療現場でこうした情報を共有し、患者の救命にしっかり生かしてもらいたい。
 熱中症の簡単な応急処置としては、首元やわきの下に冷えたペットボトルを当てる方法もある。
 熱中症で亡くなった患者の多くは高齢者だ。屋内で普段通りに過ごしていて、熱中症にかかってしまうケースがほとんどだ。
 高齢者の患者の多くがエアコンを使っていなかった。年齢を重ねると、暑さやのどの渇きを感じにくくなるためだろう。エアコンを適切に使うとともに、こまめな水分補給を習慣にしてほしい。
 周囲が異変に気づくことも、命を守ることにつながる。独り暮らしのお年寄りや、高齢の夫婦だけといった世帯では、外部との接点が少なくなりがちになる。
 近所同士で声をかけ合うことは大切だ。遠方にいる家族は、お年寄りと頻繁に連絡を取り、体調を確認する必要がある。
 気がかりなのは、新型コロナウイルスの流行が続いていることだ。熱中症対策として冷房は有効だが、部屋を閉めきっていたら感染リスクが高まる。時々窓を開けて換気することが欠かせない。
 お盆には帰省や旅行で人が集まる機会が増えるため、コロナは例年、お盆明けに感染が拡大する傾向にある。手足口病などの感染症も流行している。熱中症で体が弱っていると、感染症にもかかりやすいので注意が必要だ。