与野党の各県組織幹部にも衝撃走る 岸田首相の総裁選立候補見送り 理由に厳しい見方も(2024年8月14日『中国新聞』)

岸田首相の総裁選立候補見送りを残念がる中本会長代理

 岸田文雄首相(広島1区)が自民党総裁選への立候補見送りを表明した14日、中国地方5県の政党の県組織幹部にも衝撃が走った。再選を期待した地元広島の与党からは惜しむ声が上がった。野党からは「政治とカネ」問題にけじめをつけるとした退陣の理由に厳しい見方もあった。

写真で振り返る岸田政権 2021年10月の政権発足~自民総裁選不出馬表明

 「本当に残念。トップとして責任を取らねばならないという強い意志の表れでは」。記者会見を開いた自民党広島県連の中本隆志会長代理は首相の心境をおもんぱかった。6日の広島市の平和記念式典で面会し、再選への全面支援を伝えた際には「前向きにやるぞという気概にあふれていた」と振り返る。

 国政で連立を組む公明党広島県本部の栗原俊二代表も「当然、再選へ立候補されると思っていた」と驚く。昨年5月の同市での先進7カ国首脳会議(G7サミット)に触れ「岸田総理なくして開催できなかった。最大の功績だ」と評価する。

 自民党の各県組織からは派閥裏金事件を機に高まる政治不信への危機感が強い。「国民が求める処理を十分できず、政治状況を俯瞰(ふかん)して判断されたのだろう」とみるのは党島根県連の園山繁幹事長。党鳥取県連の斉木正一幹事長も「支持率の低さが響いたのか」と推測。去就が注目される石破茂元幹事長(鳥取1区)には「ぜひ総裁選に立ってもらいたい」と期待した。

 党山口県連の友田有幹事長は「熟慮を重ねられた上で判断されたものと受け止める」とした。

 一方、野党側は首相の再選見送りで裏金事件の幕引きを図る手法に批判を強めた。共産党広島県委員会の村上昭二委員長は「事件の真相解明をせず、政権が行き詰まったので投げ出しただけだ」。立憲民主党岡山県連の柚木道義代表も「うやむやのままの退陣となった。政権交代でうみを出し切るしかない」と訴える。

 日本維新の会広島県支部空本誠喜代表は「誰が総裁・総理になろうと国民の自民党に対する不信感は拭えるわけでない」と強調する。

 9月の総裁選後の早期解散・総選挙を警戒する声も上がる。国民民主党広島県連の金口巌副代表は「選挙は早まると考え、気を引き締めたい」と語った。