鹿児島県警めぐる百条委、県議会どう判断 元幹部がトップ告発…似通う構図、兵庫県で注目 専門家「調べる意義ある」 志布志事件では設置陳情を不採択(2024年8月11日『南日本新聞』)

総務警察委員会で不祥事案件の再発防止対策について述べる野川明輝本部長=6日午前、鹿児島県議会

 鹿児島県警の一連の不祥事を巡り、県議会で調査特別委員会(百条委員会)を開くべきとの意見が、県議から出ている。兵庫県議会は知事のパワハラ疑惑などを巡り百条委を開設中で、全国的な注目を集めている。そもそも百条委とはどのような制度なのか。

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 「百条委」という通称は、地方議会の調査権を定める地方自治法100条が由来。国会に与えられた「国政調査権」の地方自治体版といえる。

 常任委員会や特別委員会でも調査は可能で、出席が任意の「参考人」も招致できる。常任委や特別委は自治体幹部が議員に「説明」するのに対し、百条委は出席が原則義務の証人として呼ばれ「証言」する点が大きく異なる。

 今回の事案は県警に警察庁が特別監察に入るなど、国の機関も関わっている。総務省は「調査目的が県の事務であれば、国の機関から証言を求めることは可能」としている。

 百条委には罰則もある。地方自治法は、証人が正当な理由なく出席や証言を拒んだ場合は6カ月以下の禁錮か10万円以下の罰金、うその証言をした場合は3カ月以上5年以下の禁錮と定める。

 今回の鹿児島県警の事例だと、野川明輝本部長ら幹部は常任委にも出席しているが、百条委に証人として呼ばれた場合は罰則規定が適用される。

 百条委にも限界はある。今回のように裁判中の事案は「証言拒否が認められる可能性がある」(県議会事務局)。証人は初めに真実を述べる旨を宣誓することになっているが、宣誓を拒否した場合は罰則を課せない。

 鹿児島大学の有馬晋作客員教授行政学)は兵庫県の事例と同様に、県警不祥事でも内部通報制度の在り方が論点になっていると指摘。「行政運営に関わる話であり、百条委を設置して調べる意義があるのではないか」と話した。

◇鹿児島県議会は百条委設置なし

 鹿児島県議会はこれまで百条委員会を設置したことはない。議会事務局によると、1974年に志布志湾の「新大隅開発計画」を巡り委員会設置の動議があったが、本会議で否決。志布志事件関連で2003年に提出された委員会設置を求める陳情も不採択とした。

 総務省によると、都道府県では2007~22年度に6都県が8事例で設置した。豊洲への市場移転(東京)や諫早湾干拓事業(長崎)、米軍普天間基地移設に絡む名護市辺野古の埋立承認(沖縄)など。警察事務の調査で設置された前例はない。

 13年には当時の猪瀬直樹東京都知事が、医療法人「徳洲会」グループから現金5000万円を受領した問題を巡り議会が設置方針を決めた翌日、辞意を表明した。

 県内市町村では07~22年度に、枕崎市の福祉給食サービス事業(10~11年)、肝付町の公共施設の指定管理に関する事項(15年)、東串良町のにぎやかタウン雪山土地陥没など(16年)の3事例がある。