防災に関する知識や技能を備えた「防災士」の資格を持つ人でつくる日本防災士会長野県支部は28日、「聞こえる人も、聞こえない人も、みんなで考える防災」と題した研修会を飯田市東栄町の勤労者福祉センターで開いた。会員11人が災害時において特に重要とされる聴覚障害者への対応を学んだ。 (池山航一郎)
3歳のころに耳がほとんど聞こえなくなり、現在は阿南高校(阿南町)の非常勤講師を務めながら、難聴者としての講演活動などを行っている同市の片山茂さん(65)が講師として登壇。片山さんから「聴覚障害者の中にも、手話ができない人もいる」との指摘を受けながら、参加者は火事や地震などの自然災害発生の伝え方や、「集まれ」「危ない」といったコミュニケーションの仕方を模索していた。
突然地震が起こった場合を一例に挙げ、「普段から発声をしていないので声が出しづらく、人が来ている気配もわからず、不安」と説明した片山さん。「手話ができなくても、何か支援をしてもらえるとうれしい」と話し、手話の他に、筆談や身ぶり手ぶり、そら書き、口の形を読んでもらう「口話」などさまざまな手法を紹介していた。
質疑応答の時間では、「避難指示」の情報を聴覚障害者に伝える方法を問う声も。片山さんは「今までに経験は無い」としたうえで「自分が聴覚障害だとわかっている近所の人に、紙に書いて説明してもらうことになると思う」と回答。そのためにも、「聞こえない人の家がどこにあるか知り、情報をつないでもらうことが大事」と話していた。
県支部長の大久保隆志さん(65)は「目線を低くして防災を捉える。健常者だけを考えていると、取り残される人が出てくる」と指摘。聴覚障害者の方との交流は少ないため、「自分たち自身が経験することが大切」と話した。