無免許で死亡事故を起こした男に虚偽の供述をさせたとして犯人隠避教唆事件で逮捕・起訴された元弁護士の江口大和氏（３８）（有罪確定）が、横浜地検特別刑事部の取り調べで精神的苦痛を受けたとして、国に１１００万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は１８日、国に１１０万円の賠償を命じた。貝阿弥亮裁判長は「違法な取り調べで原告の人格権を侵害した」と述べた。
江口氏は逮捕・勾留された２０１８年１０～１１月、同部の検事らから２１日間の取り調べを受け一貫して黙秘する意思を示した。訴訟では、取り調べを録音・録画した映像が証拠採用され、今年１月の法廷で再生された。
判決によると、検事は、取り調べ中にトイレから戻った江口氏に「取り調べ中断してすいませんでしたとか言うんじゃねえの、普通。あなた被疑者なんだよ、犯罪の」と発言。また、体調を尋ねる質問に答えがないと、「体調も答えられないの。黙秘と関係あんの」「あなたの言ってる黙秘権ってなんなんですか」などと非難した。
さらに、検事は、江口氏の能力や資質に関して「お子ちゃま発想だったんでしょうね、あなたの弁護士観って」「ガキだよね」「あなたの中学校の成績を見たが、理系的なものが得意じゃなかったみたいだ。論理性がずれている」とも述べた。
判決は、検事の言動について「人格的な非難を繰り返すことで黙秘を解いて供述させようとしたもので、黙秘権の保障の趣旨に反する」と認定。「取り調べの必要性を考慮しても、社会通念上、相当と認められる範囲を超えており違法」と指摘した。
一方で、黙秘権を行使した後も取り調べを続けたこと自体が違法とした江口氏側の主張については「黙秘権を侵害するものではなく、違法であるとは認められない」として退けた。
江口氏は判決後、東京都内で記者会見し、「黙秘権行使をバカにする発言は許されないという判断は良かった」と一定の評価をしつつ、「説得と称する長時間の取り調べが違法とされなかったことは納得できない」と述べ、控訴の意向を示した。
法務省は「判決内容を検討し、適切に対処する」としている。
