岸田内閣「世論調査のプロ」が指摘する “菅義偉退陣” との決定的な違い「総裁選では支持回復得られない」(2024年7月4日『SmartFLASH』)

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どうする岸田文雄首相(写真・長谷川新)
 6月21日の通常国会閉会から早2週間――。
 国会論戦を終えた与党・自民党はすっかり “総裁選ムード” に浸っている。
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 9月に控える自民党総裁選では、再選を目指す現総裁の岸田文雄首相がもちろん筆頭候補だ。しかし、近ごろの世論調査では、内閣支持率が発足以来の過去最低をたびたび記録するなど、自民党内にも “不満分子” は大勢いるようだ。
 茂木敏充自民党幹事長をはじめ、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル大臣、高市早苗経済安保大臣、加藤勝信前厚労大臣といったベテラン勢の名が取り沙汰されている。
 自民党関係者が、こう話す。
「次期総裁候補として名前があがっている石破氏、茂木氏らでは、まったく新鮮味に欠けるし、突出した人もいない。刷新感を出すためなのか最近若手の名前が浮上しています。
 小林鷹之前経済安保大臣、福田達夫元総務会長、小泉進次郎環境大臣あたりが軸で、若手ではありませんが、齊藤健経産大臣も有力候補として、最近、党内で人気が出始めています」
 だが、若手の台頭が “党の活性化” につながるという声には懐疑的な意見も党内には多いようだ。
「若手が出馬すること自体は、歓迎します。ただし、かつて野田聖子議員が推薦人を集められずに立候補を断念したことがあるように、20人の推薦人を集めるのはかなり大変です。
 また、解散総選挙がなければ、自民党総裁=首相なわけですから、若さばかりを売り物にするのは間違っているように思う。
 首相になって、日本をどうするかの確固たるビジョンを打ち出さないと、すぐに化けの皮が剥がされてしまいますよ」(自民党議員秘書
菅義偉前首相の政権末期と、現在の岸田政権では、同じ内閣支持率が低い状況でも違う部分があります」
 こう話すのは、世論調査や情勢調査のサービスを展開する「JX通信社」の米重克洋代表だ。
 菅前首相は、3年前の総裁選を前に政権運営で窮地に立たされていた。そして、自ら不出馬を宣言し、岸田首相に総裁の座を譲った経緯がある。
 そのころと現在では状況が決定的に違うようだ。米重氏が続ける。
自民党政党支持率内閣支持率の推移を長期で見ると、安倍晋三政権、菅政権の末期は、内閣支持率は下がっていたものの、自民党政党支持率は横ばいでした。
 そして、次の政権が発足すると、内閣支持率は跳ね上がりました。これは大勢いた自民党の岩盤支持層や無党派層が、新内閣に期待し支持するようになったからです。
 今の状況は、上記のような政権末期とは様相が異なります。各社世論調査では、内閣支持率だけでなく、自民党政党支持率もここ十数年で最低の水準になっています。
 まさに、『自民党』という政党自体への信頼、信用が問われており、自民党支持層自体が削られてきた状況になっていると感じています」
 9月に総裁選をおこなったとしても、支持率回復への期待は薄いという。
「これまで世論調査で『総裁候補』の選択肢にあがってきたような、“見慣れた顔” がただ別の見慣れた顔に変わっただけでは、政党自体への信頼が回復する材料に乏しいと考えます。
 もっとも、総裁選で有権者が『自民党が自ら変わろうとしている』と思えるようなプロセスや政策を目にすることができれば、見慣れた顔ぶれから新総裁が選ばれても、支持率が回復する可能性はあります。無党派層や離れかけた自民党支持層からの期待感が復活するからです。
 しかし、自民党内でその兆しは今のところ見られません。ただ単に、岸田首相から “顔を変える” ことだけが目的化して、水面下で最後まで行ってしまうと、その後の内閣支持率政党支持率の上昇や選挙での議席維持といった狙いの成就は、難しいのではないでしょうか」(同前)
 総選挙のたび “情勢分析” に長けていると噂される自民党だが、岸田首相ら幹部たちは、この「ヤバさ」に気づいているのか――。