「メンバーを外される」…有名バトン指導者から性被害、選手を苦しめる「スポハラ」の病巣(2024年5月30日『産経新聞』)

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スポーツの世界は閉ざされた空間になりやすい。中でも指導者と教え子の関係は顕著だ。勝たせたい、勝ちたい、という思いは時に理不尽な「支配と従属」に発展し、刑事事件につながることもある。京都府警は今年4~5月、バトンを使った演技を競うバトントワリングの男子選手(19)への性的暴行容疑などで、元指導者の男(40)を逮捕した。男は世界大会での優勝経験もある実力者で、被害者とも数年間に及ぶ師弟関係にあった。
指導者の自宅でわいせつ被害
最初の事件は昨年2月、指導者だった男の当時の自宅マンションで起きた。府警によると、男子選手を宿泊させた男は、下半身を触るなどのわいせつ行為に及んだ。
選手にとっては全く予期しなかった出来事。その後も男は繰り返し選手を「食事」に誘った。男と会うことを避けようとしていた選手だったが、執拗(しつよう)な誘いを断り切れず同年3月に、再び男の自宅を訪れた。
選手は部屋の中で男から離れた場所に座ったところ、近くに来るよう指示された。断り切れずにその通りにすると、今度は両手を押しのけられて下着の中に手を入れられ、まさぐられた。数日後、同じように自宅に呼ばれると、抵抗する間もなく体を触られ、あおむけにされて性的暴行を受けたという。
関係者などによると、選手は精神的苦痛を訴えて練習に行けなくなり、予定した大会への出場も逃した。
マンツーマン指導で抵抗不能
なぜ選手は男の行為を拒否できなかったのか。府警によると選手は「抵抗すれば指導を受けられなくなったり、大会のメンバーから外されたりするかもしれないとの思いがあった」という趣旨の説明をした。
こうした経緯を踏まえ、府警は5月23日、昨年3月に起きたわいせつ事件について、「準強制性交」と「準強制わいせつ」の疑いでの再逮捕に踏み切った。いずれも、相手が抵抗できないなどの状況に乗じた卑劣な性犯罪だ。
スポーツにおけるハラスメント(スポハラ)の根絶を目指す活動に力を入れる大阪体育大の土屋裕睦(ひろのぶ)教授(スポーツ心理学)は、競技ならではの特性がハラスメントを助長した可能性を指摘する。例えばバトントワリングなどの採点競技では、幼少期からコーチからマンツーマンの指導を受けることが一般的。指導者と選手の間には深い信頼関係が生じるメリットがある半面、「一般論として、懐柔されて理不尽を受け入れてしまったり、信頼していたコーチから加害を受けたことに混乱して拒否できなくなったりするリスクはありうる」(土屋氏)。また被害者側も、ハラスメントに対して拒否したり声を上げたりすることによる指導上の不利益を恐れてしまう傾向があるという。
指導技術よりも「人間力」育成を
事件を巡っては、統括組織「日本バトン協会」(東京)のずさんな対応も問題視されている。昨年3月に選手の家族が協会に被害を申告したものの、当時の理事長が独断で対応したため、協会として把握するまで3カ月近くを要する事態となった。協会は京都府警の逮捕後、男を永久追放にすると明らかにしているが、土屋氏は「チームや協会だけでなく、スポーツ界全体で(再発防止に)取り組んでいくことが重要だ」と話した。
競技を問わず、スポハラは今もどこかで起きている。根絶に向け「指導者の質の担保と環境整備が必要」と土屋氏。指導技術よりも「人間力」に重点を置いた指導者育成カリキュラムに基づいた資格制や免許制の導入や、オープンな指導環境作りが不可避だとした。(荻野好古)
 

被害選手の家族「息子は事件以来バトンを触れなくなった」 バトントワリング元指導者を再逮捕…立場を悪用して当時10代の選手に性的暴行か(2024年5月23日『TBSニュース』)
 
 
 バトントワリングの教え子に性的暴行の疑いで、元指導者が再逮捕されました。
 準強制わいせつ・準強制性交等の疑いで再逮捕されたバトントワリングの元指導者・小城桂馬容疑者(40)。
 警察によりますと小城容疑者は去年3月、自宅マンションで男子選手(当時18歳)に対して、性的暴行を加えた疑いなどが持たれています。
 関係者によりますと、小城容疑者は選手・指導者として世界トップレベルで、男子選手が所属するチームで指導にあたっていたということです。
 男子選手は「抵抗すれば指導を受けられなくなったり、大会メンバーから外されたりするかもしれないと思った」という趣旨の話をしているということです。警察は小城容疑者が立場を悪用して犯行に及んだとみています。
 事件をめぐっては、日本バトン協会の第三者委員会が報告書をまとめていて、小城容疑者が男子選手に対してこれまでに3回、わいせつ行為に及んだことなどを指摘しています。
 男子選手の家族は、MBSの取材に対して「息子は小城容疑者を父親のように慕っていました。事件があった日、『気色が悪い』と言ってシャワーを浴び、それ以来バトンを触れなくなりました」と話しています。
 調べに対して小城容疑者は「弁護士が来るまで話さない」と話しているということです。
 

バトントワリングの元指導者を選手への強制わいせつの罪で起訴(2024年5月20日『NHKニュース』)
 
国際的に活躍していたバトントワリングのチームで、10代の男子選手にわいせつな行為をしたとして逮捕された40歳の元指導者について、京都地方検察庁は強制わいせつの罪で起訴しました。
起訴されたのは、バトンを音楽に合わせて回したり投げたりするスポーツ、バトントワリングで国際的に活躍していたチームの元指導者、小城桂馬被告(40)です。
起訴状などによりますと、元指導者は去年(令和5年)2月、チームに所属する10代の男子選手を京都市内の自宅に呼び出し、無理やり体を触るなどしたとして、強制わいせつの罪に問われています。
検察は認否を明らかにしていませんが、被告は警察の捜査段階の調べに対し、容疑を認めていたということです。
この問題をめぐっては、去年、日本バトン協会の外部調査委員会が、元指導者は優越的地位にあり、選手が同意しない意思を表明することが難しい状態であることに乗じていたと指摘していて、協会は、全面解決に向けて選手とその家族に寄り添うとともに、再発防止策として第三者のカウンセラーに匿名で相談できる通報窓口を、先月(4月)設置したとしています。
【被害に遭った男子選手の両親のコメント】
被害に遭った男子選手の両親がNHKの取材に応じ、事件についてコメントしました。
事件について両親は「指導者としての被告に、絶対の信頼を寄せていたので『どうして』という気持ちが強いです。指導者と選手という構造的な力関係があり、精神的に断ることができない状況でした。息子はいまも競技に復帰できず、事件のフラッシュバックに苦しめられています」と話しています。
そのうえで、日本バトン協会と所属チームの事件後の対応は十分ではなかったとして、「息子が競技に復帰できるように環境を整えるなど、真摯(しんし)な対応を求めたい」としています。