100年後は東京と福岡の2強時代に(2024年4月23日『産経新聞』-「産経抄」)

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走行試験を行うリニア中央新幹線の試験車=山梨県笛吹市(渡辺浩撮影)
 
 「君が代」が宮城内で初演されたのは、明治13(1880)年である。この年、府県別の人口のランキングで石川県が1位だった(ただし、現在の富山県と若狭を除いた福井県も管轄)。2位は新潟県東京府はなんと17位である。農業国だった当時の日本では、農村でより多くの労働力を必要としていたからだ(『教養としての日本地理』浅井建爾著)。

総務省が今月12日に公表した人口推計によれば、日本の総人口は13年連続マイナスの1億2435万2千人だった。都道府県別の人口は東京都が2年連続で増え、残る46道府県はマイナスである。
▼では100年後はどうか。人口は江戸時代レベルの3千万人まで減り、成長を続ける都市は東京と福岡だけになる。森知也京都大教授らが発表した、こんなシミュレーションが話題を呼んでいる。
▼森さんによれば、大阪の衰退は新幹線「のぞみ」の運行により所要時間が一気に縮まったことに始まった。便利になって人口や資本が吸い上げられる、いわゆるストロー効果によるものだ。リニア中央新幹線が開通すれば、その傾向は加速する。ほどよく離れた福岡が有利になるというわけだ。
▼限られた大都市に人口が集中する一方で、都市の内部では人口分布の平坦(へいたん)化が進むとみられる。だとすれば、都心のタワーマンションの開発や一部の地方都市が進めているコンパクトシティーの試みは、いずれ行き詰まる可能性が高い。
▼森さんは研究成果を発表するユーチューブの番組で、危機が一般国民と行政に共有されていない、もどかしさを語っていた。人口減少に伴って生まれる広大な土地をいかに活用して、国家の衰退を回避するのか。まさに「国家百年の計」を語るときである。