学びを止めるな(2024年4月9日『中国新聞』-「天風録」)

 手帳を開き、きょうが元日から100日目に当たると気付いた。ということは、能登半島地震からも100日を数える。明くる年に期待を込め、求めた日記帳が、心ならずも被災日記に転じてしまった人々の胸中を察する

▲腹をくくった人もいる。最大震度7の揺れが襲った石川県輪島市に立つ県立輪島高の平野敏校長である。被災から3日目にブログを再開し、こう書いた。〈学ぶことを止めてはならない/それを生徒たちに伝えたい〉

▲お手本にしてきた先人がいるという。焼け野原となった戦後、チョーク1本で子どもらに語りかけ、希望の光を示した。動かぬ北極星のような存在だったらしい

▲♪負けない事・投げ出さない事・逃げ出さない事…。大学受験に向かう生徒たちの前で平野校長はギターをかき鳴らし、お気に入りの曲「それが大事」を歌った。そんな熱さに、ほだされるのだろう。一肌脱ぐブログ読者が絶えず、閲覧総数も既に200万アクセスを超えている

▲非常時だからこそ開けた視界、腹に落ちた先達の言葉もあるようだ。校長ブログは、授かった学びの種の宝庫といえる。中でも、〈どんな時でも学びを止めるな〉の警句は一番光って見える。