大麻は覚醒剤に比べ抵抗感が薄く、興味本位から手を出すケースも少なくないとみられる。「大麻は安全」との誤解も根強い。啓発活動の強化などを通じ、若年層を中心とした大麻汚染の広がりを食い止めなければならない。
大麻関連の摘発は年々増加している。昨年の摘発者の年齢層別では、20~29歳が3545人と全体の約5割を占めて最多となった。20歳未満は1222人で約2割だが、19年の609人からほぼ倍増した。警察庁によると、スマートフォンの普及に伴い、大麻に関する誤った情報に触れる機会も増え、心理的ハードルが下がっているとみられるという。
実際、23年10~11月に大麻取締法違反の所持容疑で摘発された容疑者1060人を対象に行った警察の調査では、10~20代の約4割が、交流サイト(SNS)を通じて密売人など大麻の入手先を知っていた。さらにSNSを使った10~40代の容疑者の約9割が、X(旧ツイッター)を通じてだった。
特に懸念されるのは、大麻の危険性に対する認識の低さである。今回の調査対象の容疑者のうち、8割近くに上る810人が、危険性が「全くない」もしくは「あまりない」と回答した。
だが、大麻は脳に影響し、幻覚や妄想、記憶障害などをもたらすことがある。特に脳が発達段階にある青少年期は影響を受けやすく、思考能力や学習機能を低下させる恐れがあるとされる。こうした危険性を学校や大学などの教育現場でしっかりと啓発することが欠かせない。
大麻の入手を巡っては、海外の通販サイトで購入するケースも相次いでいる。海外では大麻を合法とする国や州があり、一般の商品と同じように販売されていることや、比較的安い価格で入手できることが大麻汚染が拡大する背景にある。
気軽に手を出しやすい大麻は薬物犯罪の「ゲートウエー(入り口)ドラッグ」とも呼ばれる。犯罪防止に向け、大麻をはじめとした薬物について、有害性や危険性への認識を社会全体で深めたい。