宮内庁のインスタ好調、フォロワーは1日で「首相官邸」超え…眞子さん結婚機に積極広報(2024年4月8日『読売新聞』)

 宮内庁が写真共有アプリ「インスタグラム」のアカウントを開設し、今月から運用を始めた。皇室情報の発信強化のため広報室が新設されて1年。ホームページ(HP)の刷新も進むが、SNSを通じた中傷への対策など「皇室を守る広報」の実現は道半ばだ。

「いいね6万超」宮内庁幹部の頬緩む

天皇、皇后両陛下の活動や皇居の自然を中心に発信を開始した=宮内庁の公式インスタグラムから
天皇、皇后両陛下の活動や皇居の自然を中心に発信を開始した=宮内庁の公式インスタグラムから

 1日午前0時。宮内庁の公式インスタグラムに、天皇、皇后両陛下と長女愛子さま(22)が皇居・御所のソファに座り、笑顔を見せられる写真が公開された。1~3月に両陛下が臨まれた行事の写真や動画も同時にアップされ、この日の投稿は計19件に上った。

 フォロワー数は初日で35万人に。首相官邸の約29万人を上回り、投稿には6万超の「いいね」がついた。8日現在、フォロワー数は75万人となり、スウェーデン王室の63万人を超えた。

 「国民の関心の高さがうかがえる」。宮内庁幹部は頬を緩ませる。10~20歳代の利用率が高いインスタグラムでの発信は、皇室への関心が中高年より低い若年層への浸透が狙いだ。

 当面は、両陛下の活動や皇居の自然などを中心に投稿し、海外王室から相互フォローの依頼があれば柔軟に検討するという。

ANA・日本サッカー協会の広報経験者を登用

 宮内庁が情報発信の強化に乗り出した背景には、秋篠宮家の長女小室眞子さん(32)の結婚を巡り、SNSで中傷が相次いだことがある。日頃の活動や人柄を正確に伝え、皇室の方々への誤解が広がるリスクを減らしたい考えだ。

 広報室にはPR戦略を担う「広報推進専門官」を置き、全日本空輸(ANA)や日本サッカー協会でそれぞれ広報を経験した2人を人事交流で登用するなど、民間の知恵も活用している。

 両陛下の出席行事には室員を同行させ、宮内庁HPで独自記事の公開も開始。この1年で約40本に上った。2年後のHPの全面刷新に向けた作業も進められている。

中傷への反論「限界ある」

 課題もある。皇室を扱うサイトやSNSは数多く、事実に基づかない情報も連日のように流されている。

 中傷対策として、皇室の名誉を損なう出版物などに対処する「渉外専門官」も昨年設置したが、週刊誌などからの照会への対応が主な業務で、悪質な投稿に対し、反論は行っていない。

 皇室へのバッシングは過去にも相次ぎ、1993年には当時、皇后だった上皇后さまが倒れられた。皇后さまが皇太子妃時代の2003年に療養生活に入った後には、臆測記事が出た。

 関係者によると、眞子さんの婚約内定後、庁内では事実無根の報道や書き込みに逐一反論することも検討されたが「対応には限界がある」として見送られた。

秋篠宮さまは22年の誕生日の記者会見で、バッシングへの対応について「事実かは、当事者でないとわからないことが多々ある」とし、「反論の基準を作って意見を言うことは難しい」と複雑な胸中を語られた。

 宮内庁幹部は、「皇室の方々の 真摯しんし な姿を直接国民に伝えることで正しい理解を広げるとともに、さらなる対策について検討を重ねていきたい」と話している。

イギリス王室は2007年からユーチューブ

 海外王室の中で先駆けてSNSを広報に活用したのは英王室だ。インスタグラムのフォロワー数は約1340万人に上る。きっかけは、1997年のダイアナ元皇太子妃の事故死だ。沈黙を保った英王室に対し、国民から「冷淡で閉鎖的」との批判が上がった。

 その後、英王室はメディア専門家を採用して改革に着手。2007年にユーチューブ、09年にツイッター(現・X)を始め、国民のために尽くす王室メンバーの姿を伝えてきた。支持は広がり、22年にエリザベス女王が死去した際には市民らが弔問の列を作り、待ち時間は24時間を超えた。

 関東学院大の君塚直隆教授(王室研究)は、「英王室は複数のSNSの活用による相乗効果で、国民の理解を広げることに成功した。宮内庁もより積極的な情報発信に向けた検討が必要になるだろう」と話す。