老齢になっても自宅に住み続ける人へ、要介護に備えて、まずは正確な情報収集を(2024年3月17日)

介護は、誰にとっても避けられない重大問題

広告より、まず客観的な情報を得よう

要介護・支援700万人のうち「介護施設等」に217万人
 介護の現状はどうなっているだろうか? 
 2022年9月で、65歳以上の高齢者人口は、3627万人だ。そして、要介護・要支援の認定者数は687万人だ。

 他方で、「介護施設等」の定員数は、図表1に示すとおり、2021年で合計で217万人だ。このうち、有料老人ホーム(63.6万人)、介護老人福祉施設(特養)(58.6万人)、介護老人保健施設(老健)(37.1万人)等の定員数が多い(内閣府『高齢者白書』)。

■図表1 介護施設等の定員数最近では、有料老人ホームの定員数が増えている。

また、サービス付き高齢者住宅も増えている。新聞の折り込み広告に入っているのは、このカテゴリーだ。これについては、別の機会に詳しく述べる。 なお、ここで「介護施設等」と「等」を入れているのは、後で述べるように、正確には、「施設」はもっと狭い概念だからだ。

約500万人は従来からの自宅にいる
 先に見たように、要支援・介護の総数は687万人。他方で、介護施設等の定員の合計は、前項で見たように合計で217万人だ。

 したがって、これらの差である470万人は、それまで住んでいた自宅に住み続けて介護保険のサービスを受けていることになる(実際には、有料老人ホーム等には健常者も入居しているので、自宅にいる要支援・介護者は、もっと多いことになる)。

 つまり、数から言えば、最も多いのは、従来から住んでいた自宅に住み続け、介護保険のサービスを受ける人々だ。

 だから、有料老人ホームを調べるより先に、在宅のままでどのようなサービスを受けられるかを調べることが重要だ。

介護保険でいう「施設サービス」は特養などのみ
 介護保険の立場からは、以上で述べたのとは、やや違う分類が行なわれているので、混乱しやすい。

 介護保険では、介護サービスは、居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスの3種類に分類されている。

 この分類は、注意を要する。有料老人ホーム等の施設に入っていても、そこが居宅であれば、居宅サービスとされるのだ。

 ここでいう「施設サービス」は、多くの人が考えているより範囲が狭い。施設に入居し、24時間体制で介護を受けられるもので、次の3タイプだけが含まれる。

 1)介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)。

 2) 介護老人保健施設(老健:医療と福祉の両方のサービスが提供され、8割以上が認知症の人)。

 3) 介護療養型医療施設:療養病床を持つ病院/診療所。

 なお、図表2の「施設サービス」は、図表1の特養と老健、介護医療院の計とほぼ等しい。(注元の計数は、厚生労働省、「介護保険事業状況報告」にある。最新版は2021年度、居宅介護(介護予防)サービス受給者数は、第1号被保険者で4749万9124任だ。

■図表2 介護サービスの利用者数(2022年4月、単位:万人)

 「居宅サービス」とは 居宅サービスとは、自宅で生活を続けながら受けられる介護サービスである、 利用できるのは、要介護認定を受けている人だ。

 ヘルパーや看護師などが自宅を訪問してくれるサービス、利用者が施設に通う、短期で宿泊できるサービスなど、様々なものがある。

 図表2によると、居宅(介護予防)サービスが408万人だ。

 武蔵野市の場合、「介護サービス事業者リスト」で検索すると、サービス種類ごとに、事業者の一覧が見られる。各事業者のホームページにアクセスすると、空き具合なども分かる。他の市町村でも、同じような情報が得られるだろう。

地域密着型サービスとは
 「地域密着型サービス」とは、2006年から新しくできたサービス。 高齢者が中重度の要介護状態となっても、住み慣れた自宅又は地域で生活を継続できるようにするため、身近な市町村で提供される。

 図表2によると、地域密着型(介護予防)サービスの利用者は89万人だ。

 居宅介護サービスとの大きな違いは、訪問介護訪問看護、デイサービスやショートステイなどが同一事業所からサービスが提供されるので、顔馴染みのスタッフがいるため安心感が得られることだと言われる。

訪問介護にもいろいろある
 前回、訪問介護について述べた。多くの人は、訪問介護とは、それまでの自宅に住み続けて介護サービスを利用することであり、介護全体の中でごく一部であるように思っている。しかし、実は、介護の大部分は、訪問介護なのだ。だから、その動向は、大変重要な問題だ。

 ただし、同じく訪問介護と言っても、一軒一軒を訪問するのと、有料老人ホームなどでまとめてサービスを提供するのとでは、効率が大きく違う。この点をどう考えるかは、重要な問題だ。

 

野口 悠紀雄(一橋大学名誉教授)

 

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