「記憶にございません」は政治家の常とう句の一つ。盛山正仁文部科学相が会期中の国会で、野党から旧統一教会側との関係を追及され、連発している

▼国会で多用されるようになったのは、ロッキード事件がきっかけとされる。1976年、証人喚問された実業家の故・小佐野賢治氏が繰り返した。当時の流行語にもなっている

▼正当な理由なく出頭を拒めば禁錮か罰金刑、うそをつけば偽証罪に問われかねない証人喚問。緊迫したやりとりから、事実関係を明言せずに質問をかわす手段として生まれた

▼現在の政治家の言葉は、さらに軽薄さが際立つ。「お答えを差し控えさせていただく」「仮定の話にはお答えできません」。最近では、新たな常とう句も生まれ、記者会見などでも言い逃れが目に余るようになった

自民党派閥の裏金疑惑では、捜査中を理由に「答えを差し控える」とのコメントが相次いだ。政治資金の不正使用を疑われているのに、国民への説明を避けては、政治家の使命を果たしているとはいえない

▼よもや時間がたてば、国民が忘れると思ってはいまいか。長期政権のおごりも垣間見える。森友学園加計学園問題、桜を見る会、旧統一教会問題、派閥の裏金疑惑-。これだけのスキャンダルを忘れるはずもない。政治家と異なり、国民の記憶力は確かなはずだ。(照屋剛志)