パートナーを精神的、肉体的に追い詰めるモラルハラスメント、通称「モラハラ」。最近、このモラハラに新たなタイプが出てきたのだとか。 【画像】理解のある夫と思いきや……「ステルスモラハラ」の怖さを夫婦仲専門家が解説 恋人・夫婦仲相談所の所長である三松真由美さんに実例とともに解説してもらいます。
わかりやすい攻撃はしない「ステルスモラハラ」
少し前のデータになりますが、オンライン対応型結婚相談所「エン婚活エージェント」が発表した「離婚に関する調査」によると、離婚理由の第3位は「DV・モラハラ」だそうです。これは、第1位「性格が合わない」、第2位「異性関係」に次ぐ順位で、家庭内での嫌がらせなどで精神的な苦痛を受けている方が多くいることがうかがえます。 そんななか、最近にわかに筆者の周囲で聞くようになってきたのが「ステルスモラハラ」とも呼べる、新たなタイプのモラハラ。 「相手を罵倒する」「完全に無視する」といったわかりやすいモラハラとは違い、気づきにくいけれど、知らないうちにチクリと心を刺す――まさに「ステルス」状態からの攻撃です。
妻たちが受けた「ステルスモラハラ」とは?
「ステルス」であるが故に、周囲はもちろんやられている本人も「気にしすぎかな……」と思ってしまうところが「ステルスモラハラ」の悪質なところ。 しかし実際には、遅効性の毒のようにゆっくりと心をむしばんでいき、ある日突然、強い苦しみとなって現れるのです。 ここからは、実際に筆者が妻たちから聞いた「ステルスモラハラ」の例を見てみましょう。
事例1:報告するときに「ひと言多い」/なつみさん(32歳)
うちの夫は「○○やって」と言わなくても、自分から家事をするタイプ。それはありがたいと思ってるんです。でも、どうしても気になるのが、都度報告してくること。ただ報告するだけならまだいいのですが 「リビングに髪の毛がいっぱい落ちていたから、俺が掃除機をかけておいたよ」 「朝イチでやってないようだから、俺がゴミ出ししておいてあげるよ」 など、基本的に「お前ができてない/やってない」+「俺がやっておいてあげたから」という文脈で、私のことを否定したうえで、恩を着せる言い方をしてくるんです。本当に「いちいち言ってくるな!」って言ってやりたいです……。 私も今度から 「何も食べるものがないので、私が夕飯つくっておいてあげたよ」 「子どもを送ってくれないので、私が保育園に連れてったから」 とか、嫌みったらしく言ってみようかな、と思っています。
事例2:帰宅をじっと待っている夫/りかこさん(45歳)
私の趣味はアイドルオタクの友人グループと彼らの舞台を見に行くこと。舞台を鑑賞したあとは、「あのシーンがよかった」とか「推しのセリフで泣けた」とか、何時間でも語れるぐらい皆で盛り上がっちゃいます。 だから、舞台の日は「終わったあと、お茶して帰るから遅くなるよ。先に寝てて」と夫に言って出かけるのですが……夫はいつも寝ないで、不機嫌そうにリビングで起きて待っているんです。もちろん、心配して起きてくれているわけではありません。 「先に寝てていいって言ったのに」というと「オタクは話が長いから、終電乗りすごすかと思っていたけど、ちゃんと電車のあるうちに帰って来れたんだね」と嫌味なセリフ。 妻が若いイケメン推しなのが気に入らないのかもしれないけれど、帰宅時間を確認するために起きているなんて……ほんとイヤになります。
事例3:家事のこだわりを主張ついでに口撃/はるなさん(29歳)
某CMでイケメンたちが「洗濯男子」を演じていますよね。うちの夫も洗濯男子。ただし、CMの彼らみたいにさわやかじゃありません。 先日、干した洗濯物を畳んでいたので、「あ、私がしまおうか?」と声を掛けたら、語気強めで全否定されました。 「やらないで!俺、しまい方にもこだわりがあるから。君がやると、洗ったタオルをそのまま重ねて上に置くだろ? 新しく洗ったやつは下に入れて、上から順番にローテーションするように使わないと、同じタオルばかり傷む」 と、自分のこだわりとあわせて、私のやり方がズボラだとディスられました。もう二度と、洗濯手伝いたくないです。
事例4:なんとしてもご飯をいっしょに食べようとする/たかえさん(52歳)
子どもが小さいうちは家族そろって朝ごはんを食べていましたが、娘たちも大学生になり、朝ご飯のタイミングはばらばらになってきました。最近では、各自がそれぞれの時間で起きて、自分で食べたいものを用意して食べるのですが、それができないのが夫。 「ママは何時に起きるの?」と私に必ず聞いてきます。私が「7時」と答えると「じゃあ、俺も7時に起きようっと。いっしょに朝ご飯を食べよう」と言ってきます。 「仲良しでいいわねー」って言われますが、仲良しだからじゃないんです。「いっしょに食べる」=「朝ごはんの支度は妻がやる」だから、いっしょに起きてこようとするんです。 そこで最近は「私、朝ご飯は食べないから」って言って、夫に自分で朝食の支度をするように仕向けています。そうすると渋々自分で冷蔵庫を開けて準備をしだすのですが、 「マヨネーズの買い置きはなかった? これ、もうなくなるけど」 「ジャムがないの知ってる?」 などと、私の不手際を発見したかのように、偉そうに言ってきます。 「とっくに買い置きしてあって、いつもと同じ棚にあるわ。黙って、そこ見ろや!」 とホントは言ってやりたいのですが、取りあえずは冷静に「買い置きあるよ」と大人の対応をしています。
「うっせえわ」ならぬ「ちっせえわ」にはオトナの余裕で対応
どれも一見すると、家事にも熱心で物わかりもよく、優しい夫たち。でもそこに潜む「ステルスモラハラ」が妻の気持ちをチクチクつついています。 「これは悪意があって言ってるのか、もともとイヤミったらしい物言いなのか……」と考え始めるとよけいに苛立ち、愛情が薄れていきます。「うっせえわ」ならぬ「ちっせえわ」ですね。 もし、チクチクと刺してきていることに気づいたらどうすればいいのでしょうか? 強く反論すれば、恐らく相手は被害者ぶって、より攻撃が陰湿化するかもしれません。たかえさんのように「肝っ玉の小さい夫だね。私のほうがおおらかでオトナなんだ」と、ニッコリ余裕の笑顔を見せるのがよいでしょう。 とはいえ、「ステルスモラハラ」は、攻撃をしている本人すらそれが攻撃であることに気づいていない可能性もあります。そうすると、攻撃がずっと続く可能性もあります。そんなときは、我慢ばかりせず爆発するのもひとつの選択肢でしょう。
◆監修・執筆/三松 真由美 会員数1万3,000名を超えるコミュニティサイト「恋人・夫婦仲相談所」所長として、テレビ、ラジオ、新聞、Webなど多数のメディアに出演、執筆。夫婦仲の改善方法や、セックスレス問題などに関する情報を発信している。『堂々再婚』『モンスターワイフ』など著書多数。 構成/サンキュ!編集部