2024年も寒い冬が続いている。心も体もぽっかぽかな日々を過ごしたい。と思ったら、銭湯に行こう。ピーク時には2300軒を超えるなど大阪は知られざる「銭湯王国」なのだ。おりしも放映中のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」の舞台の一つは銭湯。さあブギウギの軽快な調べに乗って、元気に営業を続ける銭湯を巡ろう。
寿温泉―見上げれば、歴史脈々
JR弁天町駅から徒歩7分ほどの住宅街にある寿温泉(大阪市港区)は、ドラマ「ブギウギ」のロケ地にも選ばれた“レトロ”な銭湯だ。
ドラマのモデルは「東京ブギウギ」などで知られる大スター、笠置シヅ子さん(1914―85)。笠置さんの親はかつて大阪の下町で銭湯を営んでおり、笠置さんも幼少時を過ごしたとされる。
寿温泉は60年創業で、笠置さんの親が経営していた実際の銭湯ではないものの、格式高い「折り上げ格天井(ごうてんじょう)」が広がる脱衣場や石造りの浴槽などの内装は創業時のまま。店主の今井久治(ひさはる)さん(63)は「昔ながらの趣を残す銭湯は少ない。雰囲気を楽しみながら温まってほしい」と話す。【二村祐士朗】
龍美温泉―一歩入れば、わくわく
紅葉に囲まれ、そびえる大阪城の天守閣――。龍美温泉(福島区)は、男湯と女湯にまたがって大きく描かれたモザイクタイル絵が売り物となっている。洗い場には古代ギリシャ彫刻を模したオブジェもあり、西洋の雰囲気も感じられる不思議な銭湯だ。
前身の銭湯は明治時代に開業したとされ、現在経営する坂本岩雄さん(74)夫妻が1978年3月に前の店主から買い取り、「龍美温泉」をオープンさせた。阪神野田駅から徒歩10分ほどの住宅街の中にあり、神社と寺に囲まれ、御利益を期待して訪れる人もいる。
おかみの妻はる子さん(74)は「銭湯は街の明かりで、人との縁をつなげる場所。大きな湯船につかって明日の活力につなげてもらえれば」と話す。【砂押健太】
朝日温泉―催し、にこにこ
朝日温泉(住吉区)は3代目の田丸正高さん(42)が家族で営む。浴場やロビーで音楽ライブなどさまざまな催しを開き、紙芝居アイドル「おきゃん」さんの上演も人気企画の一つ。毎月第1、3日曜日には利用者の寄付により、子どもが無料で入浴できる「こども銭湯」も実施している。
「銭湯は顔の見えるお付き合いができる場所」と田丸さん。「育ててもらった地元への恩返し」と、たくさんの笑顔の花を咲かせている。【安田美香】
千鳥温泉―きらり、鏡広告
千鳥温泉(此花区)は1952年創業。銭湯好きの桂秀明さん(57)が廃業のうわさを知り、会社を辞めて2017年に引き継いだ。
大阪では珍しいタイル絵の富士山が広がる浴場内には、「名物」の鏡広告が並ぶ。“ラブレター”など個性的な内容とデザインでファンも多い。外観は国内外アーティストが手がけた壁画で彩られる。自身の自転車好きから、ロードバイク専用の保管場所も設置するなど、「自分の好きなものが詰まった部屋みたい」(桂さん)な個性的な銭湯だ。【長崎薫】
■なるほど‼ホットなトリビア
ケロリンおけ、地域で大きさ違う?
黄色い「ケロリンおけ」は富山の製薬会社などが薬の宣伝のために作った。製薬会社によると、昔から関西は浴槽の湯を直接すくって使うことが多く、関西のケロリンおけは湯が入っても片手で持てるように、関東のものよりも一回り小さい。
「軟水使用が売り」府内に多い?
「軟水」は「各家庭の内風呂で使われる水道水そのままよりも、美肌効果や乾燥などを防ぐ効果がある」(「軟水」導入の銭湯)という。そのため、府内の銭湯で「軟水」を使う銭湯は多い。水道水を専用の機械に通して使用している。
お風呂のお湯はどうやって沸かす?
ボイラーの燃料に重油や廃材、ガスなどを使う。電気で沸かす銭湯もあるが、多くはない。そのため燃料代は銭湯によってさまざまだ。一方、水道代は府公衆浴場業生活衛生同業組合によると平均で100万円。当然、浴槽の大きさや数によってこれも変動する。
共通入浴券は色が時期で変わる?
よく銭湯を利用する人にとってお得な共通入浴券(10枚つづり)は半年ごとに色が変わり、有効期限が分かりやすい。府公衆浴場業生活衛生同業組合の各支部別に地域名が記載されており、集めて楽しむ愛好家もいるらしい。