2024年「休廃業・解散企業」動向調査
休廃業・解散、倒産件数 年次推移
2024年の「休廃業・解散」した企業(以下、休廃業企業)は、6万2,695件(前年比25.9%増)と初めて6万件を突破した。2000年に調査を開始以来、最多の2023年(4万9,788件)を超え、過去最多を更新した。
コロナ禍を経て、増加は3年連続。2024年の企業倒産は、11年ぶりに1万件が視野に入るなか、休廃業企業と倒産を合算した市場からの退出企業は約7万2,700件(前年5万8,478件)が見込まれる。
コロナ禍の手厚い支援が終了し、事業継続の再考が促されたことに加え、代表者の高齢化などが背景にある。また、事業再生ガイドラインなど「円滑な廃業」に向けた取り組みが動き出し、件数を底上げしたとみられる。
2024年の休廃業企業は、業歴別で50年以上の構成比が過去最高の13.0%(前年比1.2ポイント増)に達した。また、損益(最終利益)は、赤字企業率が48.5%(同0.9ポイント増)で過去最悪となった。後継者育成が遅れた高齢の代表者は、将来性や生産性向上に向けた投資や新規雇用などに躊躇し、競争力を失う。負のスパイラルが赤字廃業率の上昇に繋がっている。
人口動態と産業構造に大きな変化はなく、休廃業企業は今後も増勢をたどる可能性が高い。
※本調査は、東京商工リサーチ(TSR)が保有する企業データベースから、「休廃業・解散」が判明した企業を抽出した。「休廃業・解散」は、倒産(法的整理、私的整理)以外で、事業活動を停止した企業と定義した。
※2024年に取材方法を一部改定し、公告情報をトリガーとした解散判定の精緻を高めた。
業歴別 老舗企業の比率が上昇
業歴別の構成比は、最多は30年以上40年未満の19.7%(前年16.2%)だった。50年以上100年未満は13.0%(同11.8%)で、老舗企業の増加が目立ち始めている。
産業別 サービス業他が32.1%
10産業すべてで増加した。最多は、飲食業や娯楽業などを含むサービス業他の2万111件(構成比32.1%、前年比23.4%増)。次いで、建設業の9,387件(同15.0%、同16.7%増)、小売業の7,201件(同11.5%、同17.3%増)と続く。
産業を細分化した業種別(中分類)では、衣服や食料・飲料、建築材料などの各種商品卸売業が659件(前年比144.9%増、前年269件)、飲料・たばこ・飼料製造業の120件(同79.1%増、同67件)などが大幅に増加した。
損益別 赤字率が過去最悪
休廃業・解散 損益別
休廃業、解散の直前期の決算(判明分)は、2024年は損益(最終利益)が黒字の企業率は51.5%、赤字率は48.5%だった。
黒字率が最低、赤字率が最悪だった2023年からそれぞれ0.9ポイント悪化し、ほぼ半数が赤字となった。
2000年に調査を開始以降、黒字率は70%前後を維持したが、コロナ禍の2021年に初めて60%を割り込み、2024年は50%台でギリギリ踏みとどまった。
昨今の賃上げと人件費の上昇や、原材料価格の高騰、金利上昇などを加味すると、2025年の黒字率は史上初めて50%を割り込み、赤字・黒字率が逆転する恐れがある。
※直前期は、休廃業・解散から最大2年業績を遡り、最新期を採用した。
代表者年齢 60代以上の構成比、過去最高を更新
休廃業企業の代表者の年齢別(判明分)は、70代が最も多く41.6%(前年42.9%)を占めた。以下、80代以上が26.2%(同23.6%)、60代が19.6%(同20.3%)と続き、60代以上は全体の87.6%(同86.9%)を占めた。
60代以上の構成比は前年より0.7ポイント増加し、過去最高を更新した。
一方、20代以下は0.1%(前年0.1%)、30代は0.5%(同0.6%)にとどまった。
休廃業企業の代表者の平均年齢は72.6歳(前年72.0歳)、中央値は74歳(同74歳)だった。
法人格別 最多は株式会社
法人別では、最多は株式会社の3万1,821件(構成比50.7%)だった。次いで、有限会社の1万5,315件(同24.4%)、個人企業の5,417件(同8.6%)と続く。
株式会社は調査を開始して以降、初めて3万件を超えた。2015年に1,092件だった合同会社は4,750件(構成比7.5%)に達し、10年で4倍以上に膨らんだ。
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2024年の「休廃業・解散」企業は6万2,695件で、過去最多を記録した。企業倒産は1万件前後の見込みで、両者を合算した市場からの「退出企業」は過去最多となる公算だ。
コロナ支援の縮小と同時に、人件費や原材料価格の高騰が加速し、日銀の金利引き上げなどの複合的な要因が絡まり合い、中小企業の生き残りは厳しさを増している。
2024年の休廃業企業の代表者年齢は、80代以上が全体の26.2%(前年比2.6ポイント増)と大幅に増加した。また、業歴別では30年以上40年未満が全体の19.7%(同3.5ポイント増)、50年以上も13.0%(同1.2ポイント増)を占めた。
代表者の高齢化などで事業承継が緊急の課題と叫ばれて久しいが、「退出」が本格的に始まったといえるだろう。これまでの資金繰り維持を念頭に置いた支援策へのカウンターもあり、「新陳代謝」を求める声もある。だが、いたずらに新陳代謝を求めても休廃業問題の根本的な問題は解決しない。事業や雇用の受け皿の確保、高齢代表者(家族含む)の生活保障にも目配せしないと、サプライチェーンだけでなく、地域の社会基盤そのものを破壊しかねないからだ。
現在の休廃業の状況は、福祉政策とのセットで考える時期に差し掛かっている。休廃業企業の赤字率の高まりは、代表者やその家族、従業員の生活の糧となる資力が不足していることも想像させる。取り組みが進む「円滑な廃業」についても、破産なき廃業は円滑なのか、本質的な意味の再定義も必要だろう。