発がん性が懸念され世界的に問題になっている有機フッ素化合物、通称「PFAS(ピーファス)」が、3日の参院代表質問で取り上げられた。石破茂首相は、水道事業者へのPFAS検査の義務付けを来春をめどに取りまとめると表明。自然界でほとんど分解されることがなく“永遠の化学物質”と呼ばれるPFASは、どんな問題をはらんでいるのか。
ここ1年で、にわかに健康被害が懸念されているPFAS。炭素とフッ素の化合物で、1万種類以上あると言われている。その中でもペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)と呼ばれる物質が、人や動物への毒性、蓄積性が確認されており、日本を含め国際的に規制されている。
PFASには、水や油をはじき、熱や薬品に強いという特徴がある。このため、規制対象になっていないPFASは日用品に幅広く使用されている。「テフロン」などフッ素樹脂加工されたフライパンや鍋、防水スプレー、防水服、防水加工されたカーペット、消火器の消火剤、太陽光パネルなど。さらに身近なところでは、一部のファストフード店ではハンバーガーを包む紙やフライドポテトの袋にも使われている。米マクドナルドは2025年末までに包装資材でPFASを全廃すると発表。国内のマクドナルドでは現在、使われていないという。
規制の対象外であっても、PFASが自然界に残る。水源が汚染されるケースも多い。環境省は2020年、PFOSとPFOAについて、公共用水域と地下水の暫定目標値を2物質の合計値で1リットルあたり50ナノグラム(ナノ=10億分の1)に設定した。そんな中、岡山県吉備中央町では22年、暫定目標値の28倍を検出。23年も22倍となり全国的に注目を集め、「PFAS」が知られ始めるきっかけとなった。水源近くに使用済みの活性炭が山積みされており、これらとの関係が指摘されている。
一度体内に入ると、排出まで長期間かかることも問題だ。体内に入った量の半分が排せつされるまでの時間「半減期」が、PFOSで5年、PFOAで3年という調査も。米国ではPFOAの血中濃度が高い人は腎臓がん、精巣がん、潰瘍性大腸炎、脂質異常症などの発症率が上がることも確認されている。
現状では確立された汚染除去技術がないPFAS。水は全ての基本。欧米では全面使用禁止を含めた大幅な規制強化が進み始めている。日本も一刻も早い対応が求められる。