兵庫県知事選での斎藤元彦知事の再選を受け、党代表選を実施中の日本維新の会が立て直しを迫られている。知事選に独自候補を擁立できず、支援した候補は85万票以上の大差で完敗。3年前の知事選で推薦した斎藤氏に対しては疑惑告発文書問題を巡り、県議会が維新を含む全会一致で不信任決議を突き付けた経緯があり、関係の再構築を模索する。選挙戦では一部県議が斎藤氏支援に回り、県議団の結束も問われている。
■辞職促した吉村氏「リスペクト」
「(維新の県組織である)兵庫維新の会が腹を据えて、維新の改革を実行することに尽きる」
吉村氏自身は9月、文書問題への対応で県議会から猛批判を受けていた斎藤氏に電話し「間違っていたことは認めて辞職すべきだ」と促した。ただ、今月17日に斎藤氏の再選が確実になると「脱帽です。当選おめでとうございます」とメール。その後も記者団の取材に「リスペクトして(敬意をもって)接したい」と持ち上げた。
知事選で維新は当初、独自候補の擁立を目指していた。県議会の全会一致での不信任決議を踏まえ「誰が知事として適任なのか、県民に提示するのが筋」(吉村氏)との考えからだ。
■支援候補の得票率1割
しかし党側が出馬を要請した清水貴之参院議員(当時)は、幅広く支持を得るためとして党の公認も推薦も受けず、離党し無所属で立候補した。結果、得票数は斎藤氏の111万3911票に対し、清水氏は25万8388票。得票率は1割だ。
10月の衆院選での県内の比例代表得票数(約44万6千票)と比べても開きがある。兵庫維新代表の片山大介参院議員は、公認も推薦もしなかったことで「逆に維新支持層が離れる結果になった」と、ほぞをかんだ。斎藤氏が1期目の実績とともに改革の継続を訴え、差別化できなかった点も影響したとみられる。
■一枚岩でなかった県議団
県議団も一枚岩でなかった。関係者によると、無所属の清水氏への支援を強制しないよう求める声が出た。選挙戦では一部県議が斎藤氏支援に回り、岸口実団長は20日、記者団に「清水氏を応援してもらえると思っていたが、随分と温度差を感じた」と吐露した。
令和3年知事選で推薦し、不信任決議を経て返り咲いた斎藤氏との距離感について、岸口氏は「(1期目と)全く同じわけにはいかない。合うところは合わせ、われわれの思いは伝える」と強調した。
吉村氏は不信任決議をした責任について「なかったことにはできない」として、兵庫維新に総括を求める考え。24日の会合で自身の考えを述べるとしており、議論が紛糾する可能性もある。
■代表選候補、党員以外にも周知
維新の代表選が告示されたのは、兵庫県知事選の投開票日と同じ17日だった。日程は10月の衆院選敗北を受け、早期に代表選を実施すべきだと判断した党執行部が段取りをつけたが、斎藤元彦氏の猛追で結果が注目された知事選と重なり、スタート時から埋没した感は否めない。
10月末の維新常任役員会で代表選実施の方針が固まり、12月1日に臨時党大会を開き、投開票を行う案が浮上。今月6日の常任役員会で17日告示、12月1日投開票の日程を確認した。
常任役員会の出席者によると、代表選の日程協議について「臨時党大会をいつ開き、いかに早く代表選を実施するかが議論の中心で、12月1日から逆算して告示日を決めた。兵庫県知事選と重なるといった指摘は出なかった」と明かす。
維新関係者は、党員のみが投票できる選挙の論戦について「盛り上げるのは難しい」と認める。その上で「選挙期間は2週間ある。投票権を持つのは党員だが、維新の今後のあり方は党員に限らず、広く知ってもらったほうがいい」と強調し、オンライン討論会を中心に各候補の主張を周知する考えを示した。(山本考志、喜田あゆみ)