1981年から95年までフランスの大統領だったミッテラン氏には、隠し子がいた。大統領就任直後に一人の記者が隠し子について質問した。ミッテラン氏は「それがどうかしたか?」と聞き返し、それきりとなった。十数年後に週刊誌が暴露すると、むしろ週刊誌に非難が集中した。
▼その後の歴代大統領も女性スキャンダルには事欠かなかったものの、支持率低下にはつながらなかった。「『リベルタン』(放蕩(ほうとう))は仏政界の名誉ある伝統」。本紙のパリ特派員を長年務めた山口昌子さんの指摘である。
▼日本でも昔は政治家の放蕩について、メディアは寛容だったようだ。節目となったのは、宇野宗佑元首相と神楽坂の芸者をめぐるスキャンダルである。宇野氏は退陣に追い込まれた。それからどれほどの政治家が、不倫報道によって血祭りに上げられてきただろう。
▼なにしろ国民民主党は衆院選で公示前勢力から4倍の28議席に躍進したばかりである。過半数割れした自民、公明両党をしり目にキャスチングボートを握っている。代表の玉木氏は、今や「時の人」となった。昨日の特別国会での首相指名選挙では党員から投票されて名前が呼ばれた。まさに「晴れの日」でもあった。
▼玉木氏は昨日開いた記者会見で、報道をおおむね事実と認めた。夫人からは「こんな大事な時期に何をやっているんだ」と叱られたという。不倫はあくまで当事者の問題との見方もある。ただ玉木氏についてはさすがに、脇が甘すぎるとの批判から免れまい。