酒に酔って抵抗できない状態だった部下の女性検事に性的暴行を加えたとして、準強制性交罪に問われた元大阪地検検事正の北川健太郎被告(65)の初公判が25日、大阪地裁であった。閉廷後、女性検事が大阪市内で記者会見した。要旨は次の通り。
女性検事に性的暴行を加えた北川健太郎・元検事正
被害を受けて約6年、本当に苦しんできました。
被告はなぜもっと早く罪を認めてくれなかったのか。そうしてくれていたら、経験を過去のことにし、新しい人生を踏み出すことができた。被告が認めたとしても処罰感情は和らぎません。
被告は、「被害を表沙汰にすれば、検察が組織として立ちゆかなくなる」と、組織を人質にして口止めをし、私は被害を申告できませんでした。被告からは「(被告の)退職後に被害を訴えないか」と聞かれ、腹が立ちました。
私の経験を話すことで、苦しんでいる人に寄り添うことができればと会見を決意しました。
大阪地裁
法令を順守し取り締まる検事正から被害を受けて、全てを壊されました。女性として、検事としての尊厳を踏みにじられ、身も心もぼろぼろにされました。
被告は重大な罪を犯したのに影響力を持ち続けていました。被害者の存在を忘れたかのような振る舞いで、何とか生きていこうとした私を踏みにじりました。被告が罪深く不道徳で、非常識であることを誰も気付いていませんでした。
私はたくさんの被害者と泣き、寄り添ってきました。事件当時、性犯罪の事件を多数担当していました。
犯罪者を適切に処罰するのが検察官の使命なのに、被害者である私は被告を適切に処罰できていません。私の心身は限界になり、休職せざるを得ませんでした。被告を罪と向き合わせ、同じ被害者を生み出してはいけないと覚悟を決めて、処罰を求めました。
副検事が被告側に捜査情報を漏えいし、検察庁内で自分が虚偽告訴をしたとのうわさが広められていると知って絶望し、再び休職せざるを得なくなりました。
検事正から性被害を受け、副検事から名誉毀損(きそん)の被害を受けているにもかかわらず、検察庁からは謝罪もなく、非常に孤立させられました。検察庁には、適正に処罰をしていただきたい。
性被害は誰にも言えないし、表に出てこない。自分を責めてしまう。声を上げるのは勇気がいるけど、救ってくれる人が絶対にいると被害者に伝えたい。