石破茂首相、就任後初の国会論戦もカラーは封印 安全運転のデビュー戦(2024年10月7日『産経新聞』)

衆院本会議で代表質問に答弁する石破茂首相=7日午後、国会(春名中撮影)

石破茂首相は7日、衆院本会議の代表質問で、就任後初となる国会論戦に臨んだ。立憲民主党野田佳彦代表らは首相が予算委員会を開かずに早期の衆院解散に踏み切ることを責め立てた。一方の首相は持論のアジア版NATO北大西洋条約機構)に関し抑制的な答弁に徹するなど、「石破カラー」を封印した安全運転のデビュー戦となった。

【イラストでみる】石破茂新総裁はこんな人

■「心変わり、なぜか」

「(首相は)ずっと、『今解散すれば勝てる』とばかりに解散することは、憲法の趣旨に反するという考えを何度も披露していた。ところが、就任したら戦後最短で解散を行うとしている。この心変わりはなぜなのか」

野党側のトップバッターとして登壇した野田氏はこう指摘し、9日に早期解散を断行する首相の判断を疑問視。さらに、首相指名選挙を経る前に解散を表明したことも、「天皇の国事行為に踏み込んだ発言をしたことは断じて許せない」と批判のトーンを強めた。

これに対し首相は「新しい内閣が発足したことに伴い、国民の意思を確かめる必要があるとの観点から解散の判断を行った」と理解を求めた。

■「石破カラー、脱色された」

野田氏はアジア版NATOに関しても「NATOのように集団的自衛権をフルスペックで行使をするということは、憲法改正を伴うものだ。日米同盟を混乱させかねない唐突な発言だ」とやり玉に挙げたが、首相は「一国の首相として、まずは喫緊の外交安全保障上の課題に取り組む」と述べるにとどめ、具体的内容には踏み込まなかった。

首相が4日の所信表明演説に続き、国会論戦でも石破カラーを極力抑制したのは、27日投開票の日程で行われる衆院選を見据えるからだ。石破カラーの発揮よりも、首相としての安定感をアピールする方が選挙戦ではプラスになると判断したとみられる。

ただ、手元の原稿に視線を落としたまま淡々と答弁を続ける首相の姿からは、就任前の論客ぶりはうかがえない。国民民主党玉木雄一郎代表は首相のキャッチフレーズの「納得と共感」を引用しながらこう皮肉った。

「石破カラーはなくなって、完全に『脱色』された。『納得』も『共感』も感じられない」(永原慎吾)