福岡、熊本、大分、宮崎、鹿児島を含む29都府県707市町村の住民に8~15日の1週間は注意するよう求め、避難経路の確認、家具の転倒防止、非常持ち出し袋の用意などの再確認を促した。
初めての巨大地震注意情報に戸惑いもあっただろう。
ちょうどお盆の時期に重なり、帰省や旅行の計画を変更した人がいた。宮崎県などの宿泊施設ではキャンセルが相次いだものの、落ち着いた行動により、全国的に大きな混乱はなかったようだ。
自治体の対応にはばらつきがあった。避難所開設や海水浴場の閉鎖に踏み切った地域がある一方で、特段の対策を取らなかった地域もある。
政府は「日常生活の継続」を呼びかけており、判断が異なったのはやむを得ない。
幸い、1週間で巨大地震につながる異常は観測されなかった。大切なのは今回の経験を次の備えに生かすことだ。
臨時情報は地震発生前に発信されるとは限らない。前触れもなく巨大地震が発生して道路が寸断され、停電し、大津波警報が出るといった深刻な状況下で、さらなる巨大地震の臨時情報が出る可能性も考えておく必要がある。
臨時情報の伝え方、具体的行動の呼びかけについて改善を重ねてもらいたい。より現実的な想定で、被害を最小限に抑えられる内容にしなくてはならない。
30年以内に70~80%とされる南海トラフ地震の発生確率は変わらない。内閣府が2012年にまとめた被害想定では、最大32万人超が死亡し、九州では最大震度7の揺れや10メートルを超える大津波が予想されている。
命を守ることを第一に、自治体や事業者、個人や家族で身の回りの防災対策を強化していきたい。
知っておきたいのは、臨時情報には解除の仕組みがないことだ。1週間の呼びかけ期間は社会的な影響を考え、人々の受忍限度から設定された経緯がある。大規模地震発生の可能性がなくなったわけではなく、政府は引き続き日常的な備えを呼びかけている。
臨時情報は、南海トラフの想定震源域内の宮崎・日向灘でマグニチュード7級の地震が発生したことを受けて発表された。地震発生の確率が相対的に高まったとして注意を促すものだったが、「1週間以内に地震が起きる予知の情報」と誤解した人もいたようだ。専門家も認めるように地震の予知はできない。いつ起きるかが予測できない中で、地震への備えと社会活動のバランスをどう取るかが問われている。
政府は今回、地震への備えを確認しつつ社会生活の継続を呼びかけたが、一部地域ではイベントの自粛や旅行のキャンセルも相次いだ。新幹線など鉄道では減速や運休もあった。臨時情報の中でも、今回は「巨大地震警戒」より深刻度が低い「注意」だった。どこまでの対応が必要だったのか、検証が求められる。
政府は有識者らの作業部会で臨時情報を巡る一連の対応を検証するとしている。全国知事会はイベント開催などで自治体の対応が分かれて混乱が生じたとして、臨時情報発表時の対応策を国が示すよう要請している。早急に具体的な対応方針などを整理し、教訓を次に生かしたい。
臨時情報の発表以降、浮き彫りになった課題は多い。避難所の暑さ対策もその一つ。避難所を開設した自治体もあったが、記録的な猛暑の中、エアコンのない避難所は健康被害を招くとして早々に閉鎖を余儀なくされた。今後も夏の気温上昇が想定される。国は自治体に対し、避難所の空調設備や非常用電源の確保を呼びかけている。国による財政的措置を強化し、対策の速度を上げる必要がある。
臨時情報の発表直後には飲料水や缶詰、トイレットペーパー、防災グッズなどを買い求める客が増え、一部店舗では品薄になる商品もあった。地震発生に備えた買い置きが一気に広がったとみられるが、裏を返せば各家庭の平時の備蓄が不十分だったということになる。
各家庭が危機感を持ち、地震への備えを点検する機会になったことは評価したい。ただ、今後も臨時情報の発表などを受け、一度に多くの人が小売店に駆け込めば混乱も生じる。政府や自治体は普段から食料や日用品を少し多めに買い、古いものから消費してまた買い足す「ローリングストック」と呼ばれる方法を推奨する。こうした日頃からの備えを習慣化していきたい。
巨大地震注意 備えを点検する契機にしたい(2024年8月20日『読売新聞』-「社説」)
対象の29都府県707市町村に、1週間、地震への備えの再確認などを求めた。
夏休み期間中で、旅行や帰省の予定を中止したり、日程などを変更したりする人もいた。一部の地域では、水や防災用品が品薄になる店舗もあった。
それでも、総じて大きな混乱に至らなかったのは、住民が政府の情報を冷静に受け止め、落ち着いて行動した結果と言える。
呼びかけによって社会活動をどこまで制限するか、明確な基準が決められているわけではない。人によって受け止め方も異なり、判断が難しい問題ではある。
今回の呼びかけは、家庭や職場で、いざという時の行動を確認する大事な機会になったのではないか。政府や自治体は、今回の対応を振り返り、これまで見逃されてきた課題がなかったか、検証してもらいたい。
次にいつどこで巨大地震が起きるか、現在の科学で完全に予測することはできない。政府の呼びかけ期間が終了しても、もともと「30年以内に70~80%」とされている南海トラフ地震の発生確率が変わったわけではない。
臨時情報には、今回発表された「巨大地震注意」のほかに、より切迫度が高い「巨大地震警戒」もある。こうした情報提供の仕組みに初めて接し、どの程度の警戒が必要なのか、戸惑った住民や自治体関係者も少なくなかった。
政府は、日頃から臨時情報の仕組みについて周知し、発表の際には、一般の人が分かりやすい説明に努めるべきだ。
臨時情報発表の翌日に、神奈川県で震度5弱の地震があった際には、「南海トラフとは構造的に異なり、関連はない」との情報が出された。こうした科学的知見に基づく情報発信は、混乱やデマの拡散防止に役立つのではないか。
南海トラフ地震を巡る臨時情報(巨大地震注意)を受け、防災用品の備えなど日ごろの心がけが改めて問われている=名古屋市北区のホームセンターコーナン名古屋北店で2024年8月9日午後1時18分、真貝恒平撮影
対象となったのは、防災対策の推進地域に指定されている29都府県707市町村だ。政府は1週間にわたって、日常生活や社会経済活動を継続しつつ、非常持ち出し品を常に手元に置くなど備えを強化するよう呼びかけた。
しかし、実際にどのような措置を取るかは個人、自治体、事業者に任されているため、対応にはバラツキが出た。
あらかじめ避難所を開設したり海水浴場を閉鎖したりする自治体もあったが、特段の対応を取らなかったところもある。
同じ地域を走っている鉄道でも、特急を運行するかどうかの判断は事業者によって分かれた。
水や食料などを購入したり、宿泊をキャンセルしたりする人が相次いだ。一方で、東京大の調査によると、「特に何も行動は取らなかった」との回答が約2割に上った。政府の呼びかけへの対応に温度差が生じた。
政府は、自治体や事業者の取り組みを集約し、情報発信の改善につなげなければならない。
そもそも、いつ、どこで巨大地震が発生しても不思議ではないのが日本列島である。
今回の臨時情報を「空振り」だったと批判するのではなく、備蓄の確認や避難誘導方法の点検などを進める契機になったとして、前向きに受け止めるべきだ。
臨時情報の呼びかけ期間は終了したが、発生のリスクが高い状況にあることに変わりはない。
地震は何の前ぶれもなく起きる。防災対策に不備はないか。いざというときに機能するのか。点検を重ねていくことが欠かせない。
東海から九州までの想定震源域で、地殻などに特段の異常は観測されなかったという。
とはいえ、リスクがなくなったわけではない。日本列島はいつ、どこで巨大地震が起きてもおかしくない。その予知は現在の科学では不可能だ。
備えに漏れがないかを確認した上で通常の生活を送りたい。
臨時情報の発表は今回が初めてだった。観光地などで若干の混乱も見られた。
政府はこの1週間の課題を洗い出して検証し、発信内容の改善を検討すべきだ。
1週間の期間は社会の受忍限度を考慮して設定された。
家具の固定や避難経路、家族の安否確認の方法などを点検してほしい。
非常用の水や食料は日ごろから買い置きし、消費分を補充する「ローリングストック」を心掛ければ、いざという時の買い占めの回避にもつながる。
自治体は防災情報の周知を外国人を含め徹底すべきだ。
どう行動すべきかの判断が個人、事業者、自治体に委ねられた。その結果が対応の差になって現れたと言える。
臨時情報が国民に広く知られた意義は確かにあったろう。
一方で政府の注意喚起は、内容によっては社会・経済活動の萎縮につながりかねない。
その兼ね合いをどう図るかは難問だ。試行錯誤し適切な解を見いだすほかない。情報を受けた自治体や事業者側がどう対応すべきかも考えねばならない。
交流サイト上には根拠のない偽情報も出回った。社会に混乱をきたしかねず、政府や事業者は監視を続けてもらいたい。
政府は15日、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」に伴う呼びかけを終了した。宮崎県沖の日向灘で8日起きたマグニチュード(M)7・1の地震発生後、さらに大きな地震や高い津波の発生が想定されるとして1週間程度、注意するようにと伝えていた。
気象庁によると、8日の地震以降、東海から九州にかけて広がる想定震源域や周辺で震度1以上の地震が20回以上発生した。だが巨大地震につながる可能性がある特段の変化を示す地震活動や地殻変動は観測されなかったという。南海トラフ地震の防災対策推進地域に指定されている29都府県707市町村の住民は、ひとまず安堵(あんど)したことだろう。
臨時情報の発表は今回が初めてだっただけに、この1週間、人々がこれをどう受け止め、行動するかは読めない面があった。一部に慌てて飲料水などの購入に走る動きが見られたが、大きな混乱はなかったようだ。
それだけに、市町村は対応に迷っただろう。不安に思う1人暮らしの住民らを考慮し、速やかに避難所を開設する例が多かったが、実際に避難した人は少なかったようだ。
夏の書き入れ時だけに、各種イベントの開催可否は主催者の頭を悩ませたとみられる。避難への対応を準備して予定通り実施した行事がある一方、中止する例もあった。JRは新幹線を減速運行したり、一部列車を区間運休したりした。観光地ではホテルの宿泊キャンセルが相次いだ。
耳慣れない巨大地震注意という呼びかけを受け、どう行動したらいいのか。人々の戸惑いや不安は大きかったに違いない。高齢者や障害者らに情報が正しく伝わっていたのかという懸念もある。
政府は情報の出し方を含め、今回の対応に問題がなかったかどうかを検証するとしている。自治体の対応などに関する調査を迅速に行い、今後の運用の改善につなげてほしい。
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の呼びかけが終了した。8日の宮崎・日向灘の地震後、巨大地震発生のリスクが高まったとしていたが、特異な変化は観測されなかった。気象庁は日常の備えを続けるよう求めている。
内閣府と気象庁は特別な注意を1週間続けるよう求めた。社会は全体として冷静に受け止めていたが、一部に過剰反応もあった。臨時情報は社会実験でもある。今回の情報発信や対応を検証し、課題を一つ一つ解決すべきだ。防災意識の向上と備えの強化につなげる契機にしたい。
今の科学では予知はできない。代わりに巨大地震を誘発しそうな現象が観測された際、防災に役立てようと始めたのが臨時情報だ。
危機感を伝え、備えてもらうことで、被害を減らす狙いがある。発表時の記者会見で「普段よりも確率が高まった」と説明しながら「必ず発生するわけではない」と付け加えた。戸惑った人も多いだろう。背景情報を含めて、ていねいに説明すべきだった。
国は社会生活の継続を呼びかけたが、イベントが中止されたり、海水浴場が閉鎖されたりした。事前の備えが十分であれば、避けられたのではないか。徳島市は避難場所や経路の案内を掲示しつつ、阿波踊りを予定通り実施した。大津波警報を想定して避難誘導計画を作っていたことが大きい。
新幹線など鉄道の一部でも徐行運転や運休が発生した。ここまでの対応が本当に必要だったのか、検証すべき課題のひとつだ。
保存食や水、防災用品が消えた小売店もあった。買い求めた人たちは定期的な補充を心がけ、慌てずに済むようにしてほしい。
国は検証を進める方針だ。臨時情報に解除の仕組みはなく、社会の受忍限度から呼びかけを1週間に定めたという。適切なのか、もう一度議論してもよい。
南海トラフ地震が起きる可能性が平常時より高まっているとして政府が発表した臨時情報(巨大地震注意)は、1週間が経過したことから特別な防災対応を求める呼びかけを終了した。宮崎県で震度6弱を記録した8日の地震以降、大地震につながる可能性のある地震活動や地殻変動は観測されていないという。
ただ、1週間たったから安全というわけではない。南海トラフ地震の30年以内の発生確率は70~80%と高い。東海から九州にかけての太平洋沿岸部を中心に最大震度7の揺れと30メートルを超える大津波が予想される。今回の臨時情報を機に、家具の固定や食料備蓄、津波が来た際の避難場所や避難経路の確認など身近な備えを改めて徹底したい。
臨時情報は、宮崎県沖の日向灘で起きた地震のマグニチュード(M)が7・1だったことから、気象庁の評価検討会が「巨大地震注意」に当たると判断して出された。2019年の運用開始後初めてで、政府は兵庫を含む29都府県707市町村を対象に、日頃の備えの再確認とすぐに避難できる準備を要請していた。
臨時情報は、あらかじめ注意を促すことで被害を抑える目的がある。一部で水やコメの買い占めが起きるなどしたが、社会全体では冷静に受け止められたようだ。
一方、巨大地震の発生可能性が普段より高まっているが、必ず起きるわけではない-とする伝え方に分かりにくさがあるのは否めない。さらに、一部地域に1週間程度の事前避難を求める「警戒」に対し、「注意」は「地震への備えを再確認し、必要に応じて自主避難を実施」とするだけで、自治体や住民の対応に関する具体的な記述がほとんどない。
臨時情報自体の認知度が低く、理解は進んでいない。政府は地震発生に注意しながら日常生活を送るよう呼びかけたが、「普段通りでいい」と受け止めた人も少なくなかったのではないか。仕組みを正しく伝え、防災行動につながる十分な説明や情報発信に努めなければ、不安や戸惑いが広がるのは当然である。
今回、避難所の開設や鉄道の減速・運休、海水浴場の閉鎖、イベント自粛など自治体や企業、観光地によって対応が割れた。国の想定していなかった動きで、各地で「旅行控え」がみられ宿泊施設の予約キャンセルが相次ぐなど課題を残した。
歴史を見ても、南海トラフ地震はいずれ発生する。臨時情報は今後も発表されるだろう。繰り返すうちに徐々に危機感が薄れることもあり得る。そうならないように、政府や自治体は一連の対応や社会への影響を検証し、運用面などを改善して「次」に生かす必要がある。
留意したいのは、巨大地震の恐れがなくなったわけではないことだ。平常時でも発生確率は「30年以内に70~80%」と切迫性は高い。南海トラフ地震は100~150年の間隔で繰り返し発生してきた。前回の発生から78年たち、プレートのひずみがたまりつつあるのは確かだ。
臨時情報の対象は茨城から沖縄まで29都府県707市町村に及び、中国地方の瀬戸内海沿岸を含む。初めての発表に、自治体や企業、個人の対応は、ばらついた。想定される被害の内容は地域ごとに大きく異なり、警戒への考え方の差が表れた形だ。
20~30メートル級の大津波が想定される地域では、安全を重視した行動が広がった。和歌山、高知の両県内では海水浴場の閉鎖が相次ぎ、避難所を開いた自治体も少なくない。一方、中国地方などでは備えの再点検や、個人的に旅行を控える行動にとどまった。
不確実性が高く、どれほど行動に制限をかけたらいいのか―。いかにバランスを取るかが悩ましい情報なのかが分かる。その中で水や食料の買い占めといった大きなパニックを起こさず、冷静に受け止められたのは良かった。各機関、個人それぞれが緊張感を持って有事のシミュレーションができた面もあろう。
それにしても政府の情報発信には課題が残った。「日常生活を送りながら」を強調し過ぎて、何のために発表したのか分かりにくい。企業や個人ばかりか、具体的な対応を指揮するはずの自治体までもが、どうすればいいのか戸惑った要因の一つだ。
内閣府の防災対応検討ガイドラインは、臨時情報の「巨大地震警戒」では事前避難など具体的な手順を示すが、今回の「注意」は必要に応じた自主判断と曖昧だ。いわば丸投げである。「備えの再確認」が主眼なら根気強く説明すべきだった。
南海トラフ地震の発生を想定した対応策はあっても、臨時情報での行動を定めていない事態が浮き彫りになった。事業継続計画(BCP)を策定していた企業や、災害拠点となる病院でも手探りの対応が見られた。対象地域に立地する電力4社の4原発で取り決めがないのは驚きだ。
少なくとも国民の生活に影響を及ぼす機関については、対応の基準を早急に示すべきだ。学校や病院、高齢者施設、公共交通やライフラインを担う企業向けは必須だろう。同じ地域内でばらつけば、住民の混乱のもとになる。
頻発する災害で国民の危機意識は高まり、空振りしてでも情報を公表すべきだという考えは浸透してきた。それに応える巨大地震への対応と情報発信を政府に求めたい。
サプライズとサスペンス(2024年8月17日『中国新聞』-「天風録」)
机の下で爆弾が突然爆発するのはサプライズ、爆弾の存在をあらかじめ観客に知らせるのがサスペンス―。サスペンス映画の巨匠ヒチコックは、二つの手法の違いをそう語っている
▲観客ではないが、南海トラフ地震の臨時情報は、いつか起こると知るわれわれにとってサスペンスと言えよう。宮崎県で震度6弱を記録して1週間余り。巨大地震注意の呼びかけは終わっても、危機はなくならない。むしろ、その時は近づいている
▲地震への備えとは、ヒチコック風に言えば、爆弾の存在を把握し、常に対処できるようにしておくことだろう。映画なら興ざめだが、それでいい。命に関わる現実なのだから
▲まずは来たる巨大地震をよく知り、サプライズにしないことが大切だ。サスペンスという英単語は本来、不安や気がかりといった意味を持つ。それらにつながる要素をできるだけ取り除いておく。運を天に任せるだけのサスペンスは、味わいたくない。
精度は低いかもしれないが、命に関わる情報だった。曖昧なリスクにどう向き合うかを問われた1週間だった。
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)に伴う防災上の呼びかけが、政府が目安とした期間の1週間を経て終了した。さまざまな啓発につながったとみられるが、課題も浮上した。対応を検証し、今後の備えに生かしていく必要がある。
臨時情報は、日向灘でマグニチュード(M)7・1の地震が起きた8日に気象庁が発表した。地震発生の可能性が「平常時より高まっている」と判断。日常生活を継続しつつ、家具の転倒防止策や避難経路の確認など事前の備えを促した。
「注意」発表に対しては、本県も含めて戸惑いが広がった。昨年の全国調査では臨時情報の認知度は約3割にとどまり、その中での前例のない発表になった。また、発生可能性が「相対的に高い」といっても絶対的に高い状況とは言えず、受け止め方が難しかったのは間違いない。
この結果、自治体レベルでは避難所開設やイベント開催の可否など対策に濃淡が生じた。日常生活や企業活動の継続が前提とされたが、企業対応はまちまちで、個人レベルでも旅行キャンセルなど行動を控える動きが出た。
置かれた立場やリスクに対する考え方はそれぞれだ。対応に絶対的な正解はないのが実情だろう。
ただ、振り返れば、対応の過不足やばらつきが浮かぶ。住民が戸惑わないための呼びかけ方は適切だったか。省庁間や自治体間の情報共有、連携は十分だったか。過剰な反応はなかったか。政府は対応を検証し、指針を見直す方針という。運用の改善につなげなければならない。
一部では買い占め行為や偽情報の拡散行為なども見受けられたが、総じて大きな混乱はなかったようだ。臨時情報によって、事前対策や備蓄品の確認、地震発生時のシミュレーション、家族同士での認識共有など、結果として備えの見直し、強化につながったとすれば意義があったと言える。
より危険度が高い「警戒」が出された場合は、戸惑う余地もなく避難行動などが求められる。「注意」だった今回の検証作業と併せて、「警戒」発表時の対応も熟度を上げていきたい。
継承の道筋(2024年8月17日『高知新聞』-「小社会」)
毎年、古里の祭りを楽しみに帰省する人は多いだろう。その一方で、過疎化で担い手がいなくなり、ひっそりと途絶えた祭りや芸能も少なくない。県教委が2年前にまとめた民俗芸能調査によれば、把握できた県内981件のうち、中断も含めると4割近くが途絶した状態という。
調査報告書のページをめくる。「花取踊」や「盆踊り」など芸能ごとに各地の現状が記され、「廃絶」の文字が連なる町村もある。住民だけで地域の宝を引き継いでいくことがいかに難しいかがよく分かる。
こうした現実に、県も祭りの運営などに携わる大学生らを各地に派遣するなどの支援を始めた。安芸市の「赤野獅子舞」は地区外の子どもを受け入れ、女子も参加できるようにした。男の子からは「伝統を守るってかっこいい」という希望の声も。
「伝統とは革新の連続」という言葉がある。何ら形を変えることなく継承された祭りや芸能などないだろう。今の社会のありように合わせて、しなやかに形を変えていく。そんな柔軟性も求められる。
一度途絶えた祭りや芸能を復活するのは容易ではない。「後の祭り」とならぬよう県民の知恵を重ねて継承の道筋を探りたい。
イソップにヒツジを襲わないオオカミの話がある。オオカミがヒ…(2024年8月14日『東京新聞』-「筆洗」)
イソップにヒツジを襲わないオオカミの話がある。オオカミがヒツジの群れの後ろをついて歩いている
▼最初、羊飼いはオオカミに目を光らせていたが、悪さをしないオオカミを見て、ヒツジの見張り役になるのではと考えた。ある日、羊飼いはヒツジをオオカミのところに残したまま町へ出かけた。オオカミは好機到来とばかりにヒツジを襲った。それはそうだろうて
▼幸い、南海トラフ地震の想定震源域周辺で巨大地震につながるプレート異常などは今のところ確認されていない。このまま地殻の大きな変化がなければ、15日で臨時情報の注意の呼びかけは終了になるという。オオカミがこのまま「悪さ」をしないまま立ち去ることを願う
▼地震臨時情報によって巨大地震を現実のものとして意識したとき、日ごろの備えがいかに不十分だったかを気づかされたという方は多いはずだ。残念ながらSNS上には「○日に地震が起きる」などの根拠のない偽情報や気分の悪いデマも流れている。非常時にこの手の流言飛語が混乱と不安をあおることを思えばこれにも効果ある対策が必要だろう
▼この数日間が教えた備えの不足や対策の穴を急いで埋めたい。オオカミはいつかヒツジを襲ってくる。
観光客らを乗せたバスが、狭い一本道をひた走る。左側は切り立つ崖、右には深い谷がある。
▼上からは、大きな石がごろごろ落ちてきた。地盤はもろく、バスの走るそばから道路が崩れてゆく。「今考えて見ると谷へ落ちなかったのが不思議な位だ」。パニック映画の一こまではない。仕事のため訪れた箱根で関東大震災に遭い、命拾いした谷崎潤一郎の手記である。作家は、乗客の一人だった。
▼被災といえば、自宅や職場を起点にした避難行動を思い描く人が大半だろう。旅先では地理に不案内な上、移動や通信の手段も限られてくる。非常時の備えもなく、着の身着のままで外に飛び出すことがあるかもしれない。元日の能登半島地震では、駆け込んだ避難施設で途方に暮れた旅行者もいたと聞く。自然災害は、こちらの事情を察してはくれない。
▼「巨大地震注意」と唐突に言われ、旅先で不安を覚えた人もいたのではないか。日向灘を震源とする8日午後の地震で、南海トラフ巨大地震の起こる可能性が平常時に比べ高まっていると気象庁が発表した。過度な恐れは禁物としても、「いつかは起こる」だろうことは歴史が教えている。いつどこで被災しても慌てない。そう言える準備はしておきたい。
▼非常時には、物資の買い占めや噓の情報など人の弱さにつけ込む敵も現れよう。それらに惑わされぬ心の耐性もわが身を救う護符になる。箱根の谷崎は、当時自宅のあった横浜の妻子を思って憔悴(しょうすい)したらしい。「涙が出て仕様がない」と先の手記にある。離れ離れになった家族の居場所を、どう確かめ合うか。
▼文豪の残した教訓だろう。何よりもまず、周りの人々と助け合い、互いの命を守ること。それが被災時の第一歩になる。
茨城から沖縄までの主に太平洋側の住民に、地震の備えを再確認し、少なくとも1週間はすぐ避難できる準備をして日常生活を送るよう求めている。
一方で、必ず発生するわけではないとも呼び掛けている。
過度に恐れず、極力これまで通りの生活や経済活動を続けながら、身の回りの備えを確実に済ませることが大切だろう。
今回出たのは「注意」だ。一部住民に事前避難も求める前者に対し、日頃の備えの再確認といった対応を促すにとどまる。
家具の固定、持ち出し品の点検、津波が来た際の避難経路の確認などをしておきたい。
高齢者などがいる家庭や施設は避難に時間がかかると想定される。念入りな準備が必要だ。
臨時情報は、後発地震の被害を軽減しようと政府の中央防災会議が導入を決め、2019年から運用が始まった。
ただ後発地震が必ず起きるわけではないが、起きるかもしれない―という国の伝え方に分かりにくさがあるのは否めない。
各地の海水浴場で閉鎖の動きがある。ちょうどお盆時期でもあり、居住地を離れて過ごす人も少なくない。対応に戸惑う事業者や住民も多いだろう。
能登半島地震では集落の孤立対策や、住宅の耐震化の重要性が改めて認識された。この機に備えを点検し、防災に役立てる発想が肝要である。
南海トラフ巨大地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まっているとして、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が初めて発表された。8日に巨大地震の想定震源域内となる宮崎県南部、日向灘で震度6弱の地震があったことを受けた気象庁の判断だ。
この巨大地震は東海の駿河湾から九州の日向灘沖にかけ発生する。最大の震度は7、津波の高さは30メートルを超え、最悪で32万人超が死亡すると想定されている。太平洋岸を中心に29都府県に広がる防災対策推進地域では、津波や揺れの備えが十分か総点検してほしい。
巨大地震は震源域の東側で起きた後、32時間後や2年後に西側で起きた例がある。この「半割れ」を想定し、備える意味から臨時情報の制度が導入された。半割れの場合、1週間は事前避難などを求める「巨大地震警戒」の情報が出される。
では私たちはどう行動すればいいのか。お盆に向け帰省や旅行の計画を立てている人も多いだろう。それを諦める必要はない。自分で自分の命を守るための準備をすることが基本である。
まずは、家には1週間程度の食料や飲料水などは備蓄しておく。帰省などで旅行する場合は、移動中でも食料や飲料水はできるだけ携帯することも不可欠だ。万一、途中で地震に遭遇した場合に備え、海岸の近くであれば津波から避難するタワーやビルの場所も頭に入れておきたい。実家に帰るとすれば、家族と一緒に避難の方法の確認も忘れないでおこう。
避難所を開設したり、高齢者らの避難を呼びかけたりする自治体も出てきた。地元の防災に詳しい自治体の指示に従うとともに、この機会に行政や自主防災組織で、避難所の運営や備蓄の状況、安全な高台への避難ルートなど日頃の備えをチェックすべきだ。
公共交通機関では、静岡県の三島駅から愛知県の三河安城駅の間で東海道新幹線が速度を落としている。特急の運行をやめるといった鉄道会社もある。発災時の被害軽減にはスピードを落とすことが有効である。利用者としてこの対応を理解しておきたい。
営業する商業施設などは、来館者に避難の方法を分かりやすく伝えることも忘れないでほしい。
近年、多くの地域で高齢化が進む一方で、人口は減少している。防災力の低下が言われて久しい。それを補うには災害が起きる前に安全な場所に避難したり、移住したりする事前防災の活用だ。
この注意情報を契機に地域の現状を再評価し、防災力アップにつなげる対策づくりを自治体に求めたい。
東北は対象地域になっていないが、自然はときに人間の裏をかく。別の災害が起きる場合もあるし、そういうときこそ被害が拡大する。
折しもお盆休み。祖父母や親の元へ帰省する皆さんには、公的機関やメディアの情報を参考に「里帰り防災」に取り組むことを提案したい。
関東から沖縄にかけて1週間程度、注意と備えの再確認を求めた。対象地域で暮らす人々のストレスはいかばかりだろう。東日本大震災の経験を思い起こし、胸を痛めている人も多いに違いない。
地震列島に暮らす以上、対策は地域や期間を問わず常に重要だ。帰省のタイミングでしかできない備えもあろう。
ポイントは、祖父母や親に備えを促すのではなく、帰省する人自身が行動を起こすことにある。
今回のような「注意」の臨時情報では、避難は求められず、日常生活の中で基本的な備えの確認、継続が呼びかけられる。新聞、テレビなどが伝える情報を具体的な対策に生かしたい。
家具を固定したり、寝床に倒れない場所へ移動したりするのは、揺れ対策の定番だ。ただし、年齢や健康状態によっては、その作業自体が難しく、危険を伴いかねない。
力仕事も踏み台に乗った作業も、複数で取り組むとはかどるのはもちろん、事故やけがを防止できる。
不要なものを片付ける断舎離も防災に有効だ。落下したり、倒れたりするものが減る分、家の中の動線確保、さらには避難先への円滑な移動につながる。
避難先が普段あまり行かない場所、一度も行ったことのない場所だった場合、平時でさえ足を向けにくいものだ。ましてや緊急時になると、二の足を踏んでしまうのは想像に難くない。
ならば災害時に避難しない原因になりそうな種をこの夏に取り除き、速やかな避難に結びつけたい。何事も経験。日中に比べて過ごしやすい早朝や夕方、祖父母や親を散歩に連れ出し、避難先と避難経路を足で確認してみよう。
災害時の連絡方法も決めておきたい。通信各社が開設する災害用伝言板は、安否確認に便利なサービスだが、連絡を取りたい人同士が使い方を知らないと、メッセージが一方通行になってしまう。
毎月1日、15日は、災害用伝言板を体験できる。お盆休みの15日に家族、親戚とともに使い方を覚え、連絡を取り合ってみてはどうだろう。
非常持ち出し袋に家族の写真も入れておけば、心の支えになるはず。安心安全を確かなものにし、笑顔で来年の再会を誓うお盆休みにしたい。
(2024年8月10日『山形新聞』-「談話室」)
▼▽3年前、ノンフィクションライター山川徹さん(上山市出身)は静岡県と愛知県を自転車で回った。1週間で走った道のりは500キロを超える。レジャーではない。地域を幾度も襲った地震や水害の痕を辿(たど)る旅である。
▼▽静岡県富士宮市の竹やぶの斜面に残るのは「宝永地震供養碑」。江戸中期の1707年、激しい揺れによる水害で犠牲になった民を弔う石碑だった。愛知県豊橋市の神宮寺では江戸後期の安政東海地震(1854年)の際、寺の仏像が少女の命を救ったという伝承を聞いた。
▼▽雑誌「震災学」16号のルポを読んだ時、二つの巨大地震は南海トラフが震源だったと改めて認識した。静岡県の駿河湾から宮崎県沖の日向灘に至る長大な海底の溝。その南海トラフが俄然(がぜん)注目を集める。南西端の日向灘の地震を受け、初の「トラフ注意情報」が出たからだ。
▼▽巨大地震がいつ、どこで起きるか専門家も分からないという。政府は「日常生活を継続しつつ備えの再確認を」と訴える。要は過度に恐れずに、発生時は速やかに避難できる態勢が肝要だ。昨夜は神奈川県で震度5弱の揺れがあった。いつ、どこにいても心構えは怠りなく。
「巨大地震注意」の臨時情報が発表された。2019年に運用が始まって以来、初めてだ。
専門家でつくる気象庁の検討会が臨時招集され、「今後1週間はより注意してほしい」との見解を示した。防災対策の推進地域に指定されている29都府県707市町村を対象に、通常の生活を送りながら、備えを確認するよう注意喚起した。
求められるのは、命を守るための行動だ。
家庭では食料や水、常備薬など必要なものを就寝時でも持ち出せるように準備することが大切だ。また、家具が倒れないように固定し、家族と連絡を取り合う方法をあらかじめ決めておくことも欠かせない。
お盆と重なる時期である。帰省や観光のために大勢が移動し、訪日外国人も急増している。各自治体は高台や避難所の位置、経路などについて、情報が行き届くよう周知を徹底する必要がある。
災害弱者と言われる1人暮らしの高齢者や障害者には、きめ細かな配慮が不可欠だ。円滑に避難できるよう点検を急いでほしい。
「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表し、記者会見を行う気象庁地震火山部の束田進也地震火山技術・調査課長(左から2人目)と平田直東京大学名誉教授(左端)=東京都港区で2024年8月8日午後7時56分、前田梨里子撮影
「稲むらの火の館」前にある稲むら。津波に襲われた際、夜の暗闇で道がわからない村人のために10ほどあった稲むらに火を放つことで避難路を知らせた=和歌山県広川町で2021年10月1日午後3時10分、東山潤子撮影
津波防災の教訓として知られる「稲むらの火」の故事は、江戸末期の1854年に起きた安政南海地震の際の実話に基づく。南海トラフの西側を震源とする巨大地震が発生し、現在の和歌山県広川町も津波に襲われた。商人、浜口梧陵(ごりょう)は稲わら(稲むら)を燃やすことで、高台への避難を誘導した
▲その約30時間前、トラフ東側を震源とする安政東海地震が起き、東海地方などに深刻な津波被害をもたらした。「稲むらの火の館」の崎山光一館長によると、この地震でも浜口は用心で避難を実施していた。「前日の経験は危機感を高める意識づけになったはずです」と語る
▲「巨大地震注意」という初めての情報に緊張が走った。日向灘を震源とし、宮崎県などに被害を与える地震が起きた。気象庁は南海トラフ巨大地震が起きる可能性が通常より高まったとして、1週間を目安とする注意を呼びかけた
▲お盆に帰省や行楽を予定し、当惑している人も多いかもしれない。政府は「普段の備えの再確認」を呼びかけている。さじ加減は難しいが、家具の固定や避難経路の確認などに努めたい
▲「稲むらの火」の浜口はその後も復旧や復興にあたり、私財を投じて防波堤を築いた。もとより南海トラフ、首都直下の巨大地震はいつ起きてもおかしくない。さまざまな備えを張り巡らしたい地震国の防災、減災である。
巨大地震注意 備え十分か冷静に確認したい(2024年8月10日『読売新聞』-「社説」)
自治体や企業は、それぞれが抱えるリスクを想定し、適切な対応を検討してもらいたい。
これまで「巨大地震注意」などの臨時情報は、あまり知られていなかった。2019年に運用が始まって以来、初めての発表で、驚いた人も多かったに違いない。
南海トラフ地震の発生確率は「30年以内に70~80%」とされている。この状態を目安とすれば、今回は発生可能性が若干、高まった程度である。巨大地震の危機が切迫しているとまでは言えず、過度に恐れる必要はないだろう。
臨時情報は、今回に限らず、今後も発表される可能性がある。実際には巨大地震が起きない、いわゆる「空振り」となることも多かろう。不確実な情報をどう受け止め、対応すべきか、家庭や職場でよく考えてもらいたい。
今後1週間程度は、地震に対する備えを強化することが求められる。家族との連絡手段や避難経路を確認するほか、非常用の食料品が足りているか点検するなど、できることから始めたい。
夏休みで帰省や行楽の予定がある人も多いはずだ。もしもの時にどう対応するかを想定して計画を立てておけば、むやみに予定を中止する必要はないだろう。
南海トラフ地震を巡り「巨大地震注意」の臨時情報が初めて発表された。想定震源域内で発生確率が平常時に比べて相対的に高まっているとされるが、説明が足りずどう受け止めればいいか戸惑う人も多いのではないか。背景も含めて丁寧に説明する必要がある。
しかし、評価検討会の記者会見での説明は、分かりにくかったと言わざるを得ない。
巨大地震の発生確率は数倍に上がったとするが、「数倍は地震学的には極めて高い確率」と強調しながら、結局「普段から言うように、南海トラフ地震は十中八九、何の前触れもなく起こる」と、これまでの説明に戻ってしまう。
これでは、どの程度の確率で発生するのかなど十分に説明したとは言い難い。どの地域でどの程度の防災行動が必要か分からなければ戸惑いが広がるのも当然だ。
地震の発生パターンは多様で前兆が捉えられない場合が多い。発生場所や時期、規模を絞り込んで確度の高い予測をするのは難しいとしても、観測で知り得た情報に基づいて丁寧に説明することが適切な防災行動につながり、地震の被害を減らすことが可能になるのではないか。
私たちも、分からないからといって臨時情報を聞き流すのではなく、巨大地震はいつ起きるか分からないという心構えで、避難場所や連絡方法の確認、水や食料、防災用品など備えを再確認したい。
巨大地震はいつ発生するか分からない。警戒を怠るわけにはいかない。避難経路の把握や、非常用袋など備えは万全か。しっかりと再点検してもらいたい。
8日夕、宮崎県南部で震度6弱の地震があった。震源地は日向灘で南海トラフ巨大地震の想定震源域内だ。気象庁は、巨大地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっているとして「臨時情報(巨大地震注意)」を発表した。
今回の地震規模がM7・1と推定されたことから、2017年の運用開始以来初の発表となった。
大切なのは、一人一人が改めて命を守る行動の必要性について認識することだ。
家族の所在場所を把握し、非常用袋やヘルメットを玄関に置き、靴は枕元に置くなどし、地震が起きたらすぐに避難できる準備が求められる。家具の固定や、出火防止の対策も大事だ。
障害者や難病患者など要配慮者らが適切に避難する方策について、周囲や行政できちんと考えていく姿勢が欠かせない。
今回の地震の被災地では、聞き慣れない臨時情報に接し、混乱する住民もいた。
住民に備えの再確認を促すほか、混乱を防ぐためにも行政は周知を急ぐべきだ。
過去の災害時に、悪意や悪ふざけによる偽情報の拡散があったが、再びあってはならない。
本県は含まれていないが、油断は禁物である。
巨大地震はいつ発生するか分からない。警戒を怠るわけにはいかない。避難経路の把握や、非常用袋など備えは万全か。しっかりと再点検してもらいたい。
8日夕、宮崎県南部で震度6弱の地震があった。震源地は日向灘で南海トラフ巨大地震の想定震源域内だ。気象庁は、巨大地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっているとして「臨時情報(巨大地震注意)」を発表した。
今回の地震規模がM7・1と推定されたことから、2017年の運用開始以来初の発表となった。
大切なのは、一人一人が改めて命を守る行動の必要性について認識することだ。
家族の所在場所を把握し、非常用袋やヘルメットを玄関に置き、靴は枕元に置くなどし、地震が起きたらすぐに避難できる準備が求められる。家具の固定や、出火防止の対策も大事だ。
障害者や難病患者など要配慮者らが適切に避難する方策について、周囲や行政できちんと考えていく姿勢が欠かせない。
今回の地震の被災地では、聞き慣れない臨時情報に接し、混乱する住民もいた。
住民に備えの再確認を促すほか、混乱を防ぐためにも行政は周知を急ぐべきだ。
過去の災害時に、悪意や悪ふざけによる偽情報の拡散があったが、再びあってはならない。
本県は含まれていないが、油断は禁物である。
8日午後4時43分ごろ、宮崎県沖の日向灘で起きたマグニチュード(M)7・1の地震では、最大震度6弱が観測され、家屋倒壊や負傷者が出ている。震源地は南海トラフ巨大地震の想定震源域内で、気象庁はM8~9級の地震の発生可能性が通常より高まったとして「巨大地震注意」の臨時情報を発表した。
「注意」の対象は兵庫を含む29都府県707市町村に及ぶ。気象庁は今後、M8以上の地震が起きる可能性は「数百回に1回」程度としているが、評価検討会の平田直(なおし)会長は「現時点でどことは言えない。1週間は注意を続けてほしい」と述べた。冷静な行動を心がけつつ、命を守るために家具固定や、津波からの避難場所、避難経路の確認などの備えを怠らないようにしたい。
臨時情報は、東海から九州の太平洋沖にかけて広がる南海トラフ想定震源域でM6・8以上の地震や異常な地殻変動が観測された場合、その後に来る巨大地震に備えるために出される。8日に日向灘で起きた地震は条件に該当し、2019年の運用開始後初めての発表となった。
臨時情報には「調査中」「巨大地震注意」「巨大地震警戒」「調査終了」の4種類がある。今回を上回るM8以上の地震が起きた場合は最も危険度が高い「警戒」が出され、震源域沿いの住民はすぐに避難できる準備をする必要がある。地震発生後では避難が間に合わない恐れのある高齢者らを対象に、1週間程度の事前避難を求める自治体もある。
ただ、この仕組みは複雑で国民に理解されているとは言い難い。内閣府の昨年の全国調査で、臨時情報の認知度は3割弱にとどまり、周知は進んでいない。実効性を高めるには、国や自治体が丁寧な説明と情報発信に努めることが欠かせない。
注意したいのは、1週間が経過した後、巨大地震発生の可能性が低くなるわけではない点だ。南海トラフ震源域では100~150年周期で地震が発生し、直近の昭和南海地震からは約80年が経過している。残念ながら地震は現在の科学では予知できない。いつでも不意に襲ってくると思っておく必要がある。
来年で発生30年となる阪神・淡路大震災以降、日本列島全域が地震の活動期に入ったとされる。政府や自治体は災害対応や復旧対策などの点検を急がねばならない。家庭や地域でも住宅の耐震化や食料備蓄の確認など被害を最小限にとどめる防災、減災対策を重ね、備えるしかない。
臨時情報は、南海トラフの想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震や異常な地殻変動が観測された場合に出される。8日午後、九州の日向灘で起きた最大震度6弱の地震は想定震源域の西端に当たり、地震の規模もM7・1と基準を満たしたため、発表された。
気象庁は巨大地震の発生の可能性が「平常時より数倍高まっている」として1週間程度、注意するよう呼びかけている。2種類ある臨時情報のうち、今回は津波が急襲する沿岸の住民に事前避難を求める「警戒」でなく、備えの再確認を求める「注意」である。冷静に日常生活を送ることが求められる。
必要な備えは住んでいる地域によって異なる。まずは自治体のハザードマップで自分や家族がいる地域の災害リスクを把握する必要がある。想定される揺れや津波による浸水の程度を知り、避難する経路や避難先を確認したい。
南海トラフ巨大地震が起きた場合、岡山県や広島県東部では最大震度6強が想定されており、家具の固定が必要だ。すぐに対応できない場合は大型家具のそばで寝ないようにしたい。割れたガラスを踏んでけがをしないよう、寝る場所の近くに靴や懐中電灯を置いておくことも重要だ。
食料や飲料水は1週間程度の備蓄が望ましいとされる。断水に備え、災害用トイレの準備も欠かせない。便座にかぶせる大きめのごみ袋や、ペット用の吸水シート、新聞紙などがあれば対応できる。
夏休みシーズンでお盆も近い。旅行や帰省を計画している人も多かろう。出かける際は滞在先の災害リスクをハザードマップで確かめておくことが大切だ。電話がつながりにくくなった時に安否が確認できる災害用伝言ダイヤル(171)の使い方についても家族で話しておきたい。
南海トラフ巨大地震は、東海から九州の太平洋沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って起きる。海側プレートが陸側プレートの下に1年間に数センチの速度で沈み込んでおり、ひずみが蓄積して陸側プレートが跳ね上がると地震が発生。おおむね100~150年間隔で起きている。前回の1946年の昭和南海地震(M8・0)から80年近くたち、いつ起きてもおかしくないとされる。
次の地震の発生時期は定かではないが、いつかは必ず起きる。備えは着実に進めておきたい。
マグニチュード(M)8~9クラスで、関東から沖縄にかけての太平洋沿岸部を中心に、最大震度7の強い揺れと30メートルを超える大津波が想定される。最大で死者32万人超という国難級の災害だ。もともと30年以内に70~80%の確率で発生するといわれ、いつ起きてもおかしくない。その可能性が高まったとの判断だ。
中国地方で警戒すべきは瀬戸内海の沿岸部である。広島、山口、岡山3県の46市町が防災対策推進地域に指定されている。「巨大地震注意」で求められているのは、日頃の地震の備えを点検することだ。恐れ過ぎず、日常生活を送る中で留意を続けたい。
住む地域で想定される被害の確認は欠かせない。瀬戸内海沿岸は最大震度6強で、津波や堤防の破壊による広域浸水が考えられる。ただ広島市では建物被害の大半は液状化が要因で、福山市は間もなく到達する津波による死者が目立つ。地域で異なる上、複合的に襲ってくる。
自治体は、住民の判断材料を助ける被害想定や、地域で優先すべき対応、構えを発信すべきだ。
緊張感が高まった社会状況では、とりわけ交流サイト(SNS)を通じて偽情報やデマが拡散しやすい。公式情報はより重要で、不安やパニックの抑制につながる。
いざというとき、自らや家族たちの命を守るためにどんな行動を取るか。再確認をしたい。避難ルートを頭に入れるなどすぐ逃げられる準備が必要だ。家具の固定や、救助を求めるホイッスルを持っておくのも手である。
正月に発生した能登半島地震の記憶は鮮明だろう。連休や盆で帰省や旅行をする場合は、不慣れな土地の防災情報をあらかじめ入手しておきたい。広域災害では孤立した場合に救助の手がすぐに届かないケースが頻発する。教訓を生かす形で、自助、共助の手だてを模索したい。
聞き慣れない臨時情報に、戸惑いが大きかろう。2017年に運用を始めたが、国民への認知度は低いままだ。
それゆえ政府として、臨時情報を出す意味合いや具体的な行動について十分な説明が重要なはずだ。岸田文雄首相は情報発表を受けて中央アジア、モンゴル歴訪を中止したが、具体的な危機管理対応は見えてこない。自治体や国民に丸投げするようでは困る。
過去の災害の教訓やデータを踏まえ、地震予知が困難な中で見いだした対処法だ。事前に備えることで、失う命をできる限り減らそうとの考えに基づく。そうしたメッセージも伝える必要がある。
臨時情報には、事前避難を求める「巨大地震警戒」もある。初の注意情報によって発見できる課題があるはずだ。中身を磨く機会にしたい。
普段見慣れた日本海と比べ、太平洋は明るく雄大に感じた。2カ月前、高知市の坂本龍馬記念館を訪ねた。海に面した施設は海抜50メートルの高台にあり、屋上から見下ろす光景は「圧巻」の一言だった▼同時に恐ろしさも抱いた。南海トラフ巨大地震で大津波がやって来ると、ひとたまりもないのでは。「この施設は大丈夫ですが、周辺は冠水してしまい、営業できないでしょうね」と記念館職員。冗談交じりの会話だったが、南海トラフの足音は近づいている▼宮崎県南部で震度6弱を観測したおとといの地震。震源地は南海トラフの想定震源域内で、気象庁は発生可能性が平常時に比べ相対的に高まっているとして、初の臨時情報を発表し、震源域内の住民に注意を促している▼一方で、全域が震源域に入る高知県では対策が進んでいた。国内で最も高い34・4メートルの津波が想定される南西部の黒潮町は犠牲者ゼロを目指し、戸別津波避難カルテをつくって全世帯の状況と避難路などを把握。安全な高台に逃げ切るため約230の避難道を造り、間に合わない所では津波避難タワーを6基建てた。住民の防災に対する意識も高まっているという▼翻って、山陰への南海トラフの影響は太平洋側に比べて小さいとされる。必要以上に恐れる必要はないが、油断は禁物。今回の発表を機に、防災グッズや避難経路など改めて確認しておきたい。備えあれば憂いなしだ。(健)
大規模地震に備える重要性を強く意識づけられた。当面は社会、経済活動を維持しながら、いつ起きてもおかしくないとの危機意識が必要となる。被害の軽減へ身の回りを再確認し、対処すべき課題への取り組みを加速させたい。
8日夕、日向灘の南海トラフ地震の想定震源域でマグニチュード(M)7・1の地震があり、気象庁は南海トラフ地震臨時情報を初めて発表した。巨大地震発生の可能性が平常時に比べ高まっているとして「巨大地震注意」情報を出した。
評価検討会の平田直会長は、南海トラフ地震が発生する可能性を「普段より数倍高くなっている」と解説する。想定域のどこで起こるか分からず、西側に限らないとする。最大規模の地震が発生すれば、関東から九州にかけて強い揺れと、太平洋沿岸で高い津波が想定される。
1週間ほどを過ぎると通常の生活となる。ただ、大規模地震が発生する可能性がなくなったわけではないことに留意する必要がある。注意情報は特定の期間の地震発生を具体的に知らせるものではないと知っておくことが大切だ。
しかし、周知は進んでいない。昨年の全国調査では、知っている人は3割に届かなかった。今回まで発表されなかったことも認知度に影響しているのだろう。
それだけに注意情報をどう受け止めていいのか、日常生活との兼ね合いなどで戸惑いもありそうだ。細やかな情報提供が求められる。
今回の地震では、宮崎県で震度6弱の揺れと約50センチの津波を観測し、負傷者や家屋倒壊の被害が出た。高知県内も宿毛市で最大震度3、土佐清水市で30センチの津波を記録した。県は災害対策本部を立ち上げ、各市町村も自主避難を受け入れる避難所開設などの対応を進めた。
4月には宿毛市と愛媛県で、現在の震度階級では四国で初めてとなる最大震度6弱を記録する地震が起き、南海トラフ地震を強く意識させられた。臨時情報の対象とはならなかったが、地震への備えを考える契機となったことは間違いない。
行楽の時季でもある。イベントは安全対策の強化が不可欠だ。訪問先でも万一を想定した避難経路の確認などが大切となる。備蓄を進めることは必要だが、買い占めは混乱を招く。また、虚偽の情報を流すことは控えなければならない。冷静な対応が求められる。
注意して進む(2024年8月10日『高知新聞』-「小社会」)
昔見たSF映画に、地球にやって来た宇宙人が、見よう見まねで車を運転する場面があった。交差点に差しかかると信号が黄色に。宇宙人が「こうする合図だろ」といわんばかりに、急加速したのには噴き出してしまった。
黄信号を「注意して進む」と勘違いしているドライバーが多いという。本来は原則、停止。停止線に近接していて安全に止まれない場合は例外となる。安全運転を心がけたい。
一昨日、日向灘の地震を受けて初めて出された南海トラフの「巨大地震注意」情報。事前避難などが求められる「巨大地震警戒」情報を赤に例えるなら、こちらは黄といったところだろう。ただし、気象庁や専門家の説明では「注意して進む」イメージらしい。
来店客の1人に話を聞くと「実は備蓄を全くしていなくて…」。一斉に買いだめに走ると混乱を引き起こす。落ち着いた行動が求められるが、家具の固定状況、避難場所なども再確認したご家庭が多かっただろう。
「注意して進む」にのっとり、よさこい祭りも予定通りの開催を決めた。お盆には帰省客も増える。みんなで情報を共有したい。くれぐれも備えなしでアクセルを踏み込まないように。
注意を促す情報を冷静に受け止め、命を守る備えを着実に進めたい。
宮崎県や鹿児島県でけが人が出て、家屋倒壊などの被害も確認されている。そこへ耳慣れない巨大地震への注意を求められ、不安を感じる人も多いのではないか。
政府や自治体は住民に分かりやすい情報を提供し、避難などの相談に応じてほしい。
検討会は、1週間程度は注意を続けるように呼びかけている。すぐに巨大地震が発生するとは限らないが、これまでも発生確率が高いと指摘されていた。落ち着いて対処することが肝要だ。
いま私たちにできることは過度に恐れず、身近な備えを確かにすることだ。
家具が倒れないように固定して、水や食料、薬を備蓄する。非常用バッグを手に避難場所までの経路を確認する。家族や頼れる人との連絡手段も決めておく。
帰省や旅行をする人が多いお盆の時期を迎える。移動先でも避難場所や災害関連情報の入手方法を調べておくといいだろう。
近年の災害はデマが出回りやすい。とりわけ交流サイト(SNS)の情報は真偽を確かめて行動することを心がけよう。偽情報の拡散に加担してはならない。
高倉健さんの遺作となった映画「あなたへ」は遺骨をふるさとの海に散骨してほしいという妻の遺志を受け、主人公が富山から長崎県平戸まで車で旅する物語。妻がそう望んだ理由は分からないが、人生の最後はふるさとに戻りたいと思う人は結構多いのではと感じた
◆ふるさととは単に生まれた土地をいうのではなく、その人の人格形成に最初に大きな影響を与えた土地、言い換えればその人の土台が築かれた土地と思う。苦くつらい経験があっても、年をとれば懐かしく振り返ることができ、戻れば安らぎを感じられる
◆そんなふるさとの良さが伝わってくる。創刊140周年記念でわが社に130点を寄贈される画家中島潔さんの作品である。夢と大志を抱いてふるさとを離れる人もいれば、生計のため仕方なく離れる人もいる。でも、心のどこかにふるさとが息づく。苦しい時に励ます声が聞こえてくる
◆きょうからの連休に合わせて佐賀に帰省する人も多いだろう。中島さんの作品は佐賀新聞社ギャラリーに一部を展示中だ。家族で鑑賞するのもいい。さまざまな出会いに支えられて今がある、帰れる場所があるって幸せなこと。きっとそう感じる。(義)
巨大地震への備えはできているか再確認が必要だ。
震源地の宮崎県日向灘は南海トラフ巨大地震の想定震源域内にあり、気象庁は巨大地震の発生可能性が高まっているとして初の南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表した。最大規模の地震が発生した場合、関東から九州にかけての広範囲で強い揺れ、関東から沖縄にかけての太平洋沿岸で高い津波が想定されるとして1週間程度、注意するよう呼びかけた。
気象庁の臨時情報は「大地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられる」というものだ。大地震が目前に迫っていることを意味しているのではないので、冷静な対応が求められる。日常生活の中で水や食料備蓄状況、ハザードマップ、避難場所などをチェックし、地震発生時には速やかに避難行動が取れるよう防災対策を整えてほしい。
南海トラフ巨大地震は静岡県の駿河湾から宮崎県の日向灘にかけてのプレート境界を震源域とし、おおむね100年から150年間隔で大地震が起きている。前回の南海トラフ地震は「昭和東南海地震」(1944年)と「昭和南海地震」(46年)で、既に約80年が経過している。気象庁は「次の南海トラフ地震発生の切迫性は高まってきている」としてきた。
政府は2014年、南海トラフ巨大地震対策の基本方針となる「防災対策推進基本計画」を定めている。10年計画で最悪で30万人以上と想定される死者数を8割減、約250万戸と想定される建築物の全壊戸数を5割減とするというものだ。計画に基づき、県内16市町村を含む29都府県の707市町村を地震防災対策推進地域に指定した。
計画には建築物の耐震化や火災対策、津波に強い地域構造の構築、安全で確実な避難の確保。防災教育・防災訓練の充実などの諸施策が盛り込まれた。計画策定から既に10年が過ぎたが、防災・減災対策は進んだか、今回の臨時情報を機に再確認する必要がある。本県も地震や津波に強い地域づくりの現状を点検しなければならない。
今回の臨時情報を受け、県内の指定16市町村は災害警戒対策本部などを設置し、情報収集を実施している。玉城デニー知事は9日の会見で「今後、地震の発生に伴い、津波が到達する恐れがある。引き続き今後の気象や地震などの情報に留意してほしい」と注意喚起した。
宮崎県沖の日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が8日、発生した。地震の規模を示すマグニチュード(M)は7・1と推定される。この地震で気象庁は「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を初めて発表した。
聞き慣れない言葉に驚き、不安な夜を過ごした人もいるだろう。改めて、命を守る行動を確認したい。
臨時情報は、駿河湾から日向灘沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が平常時に比べ相対的に高まった場合に気象庁が発表する。今回、Mが7以上、8未満だったことから「巨大地震注意」が発表された。
過度に恐れず、冷静に非常時に備えたい。
■ ■
各市町村は8日以降、災害警戒本部を設置したり、緊急会議を開いたりするなど対応に当たっている。
糸満市は職員4人が午後10時まで待機し、その後も1人が朝まで庁舎に待機する態勢を1週間続ける予定だ。
県も8日から、職員を増員して24時間態勢で警戒に当たっている。
行政機関には、課題解決を急ぎ、対策を再点検するなど防災力の強化に努めてもらいたい。
■ ■
今の科学では、地震を予知することはできない。私たちにできることは備えることだ。
防災マップなどで避難場所や避難経路を確認する、家族で安否確認の方法や連絡手段を決めておく、1週間程度の水や食料を備蓄しておく-。
備えをチェックし、足りなければ補う。今できることを実行したい。
巨大地震の発生で、最優先すべきは命を守ることだ。事前の備えの徹底によって被害を最低限に抑えることが重要となる。冷静な対応を心がけてほしい。
日向灘を震源にきのう発生した震度6弱の地震を受け、気象庁は新たな大規模地震の可能性が相対的に高まっているとして、「巨大地震注意」の臨時情報を初めて発表した。中部から九州にかけ津波などの大規模被害が予想される南海トラフ巨大地震の想定地域の住民に、地震が発生したらすぐに避難できるよう準備を求めた。
巨大地震注意は、南海トラフの臨時情報で、最も警戒レベルの高い「巨大地震警戒」に次いで2番目に高いものだ。気象庁は「必ず地震が起きるという発表ではない」としているものの、今後1週間は、気象庁や自治体の発表する情報にいっそうの注意が必要だ。
巨大地震で最も警戒が必要なのは津波だ。きのうの地震では、発生からすぐに津波が観測された。東日本大震災では家族が心配で家に戻り、津波の犠牲になった人が多かった。地震が発生したらどのように行動するかや、家などに戻らないことなどを家族や職場で再度確認してもらいたい。
南海トラフの津波や揺れの想定域には、原発が複数ある。原発が一度事故を起こせば、被害のあるなしにかかわらず、避難者や社会に大きな混乱をもたらす。各事業者は事前の計画に基づき、安全を最優先にした対応が求められる。
非常時には信頼できる情報を基に行動することが大切だ。大規模災害の発生時には、交流サイト(SNS)で不確かな情報が大量に発信されることがある。臨時情報の段階でも、同じことが起きる恐れは極めて高い。情報収集には、新聞や行政の公式サイト、テレビ、ラジオなどを使い、SNSについては信用できる情報源で改めて確認することが肝要だ。
能登半島地震の際は、SNSで閲覧数に応じて支払われる収入を狙って、うその情報が発信され、救助の現場などが混乱した。うその情報は、本当に救助を求める人の命を奪いかねない。善意による情報の拡散も、事実かどうかを確認しない限りは慎むべきだ。
県内でも警戒が必要なのは、ビルの高層階をゆっくりと揺らす長周期地震動だ。この震動は地震の規模が大きいほど遠くに伝わる特徴があり、危険がある場合には緊急地震情報が発表される。緊急情報が発表されたら、高いビルに住居や職場がある人は揺れに備え、頭を保護し、体勢を低くして身の安全を守るようにしてほしい。
臨時招集された評価検討会の平田直会長は「発生確率が普段よりも高くなった。現時点でどこの地域で注意が必要かわからない。1週間は注意をつづけてほしい」と説明した。すぐに巨大地震が起きるとは限らず、落ち着いた対応が必要だ。
避難できる準備をして日常生活を送るようにしてほしい。対策に抜けや死角はないのか点検し、備えを怠らないことが大切だ。
臨時情報は南海トラフの想定震源域でM6.8以上の地震や異常な地殻変動を観測した場合に出される。今回、日向灘で発生した地震は条件を満たした。同地域での地震は南海トラフに影響が及ぶ可能性があると考えられる。
南海トラフの震源域では、いったん大きな地震が起きると、その後連動して別の大きな地震が起きている。1944年の昭和東南海地震、1854年の安政東海地震では、それぞれ2年後、32時間後に巨大地震が発生した。
家族と連絡を取り合う方法も決めておきたい。懐中電灯や携帯ラジオ、薬などを入れた防災袋と、日常着や下着をまとめたバッグを玄関の近くに置いておけば、いざというとき役に立つ。食料や飲料水は1週間分の備蓄が望まれる。
現在の科学では、地震の予知はできない。しかし、時期は不明でも近い将来の発生が間違いないのなら、それに備えるのは当然だ。一人一人が対策を考え、地域が連携し、国とつながることが防災力を向上させる。
▼愛知の郷土史家が人々から「学徒動員された先輩が、工場の煙突が倒壊して死亡した」といった証言を集め、それを同僚が3年前に記事にすると「私も話したい」と訴える人が多く現れた。戦時は地震の話を口にできぬ空気があり「死ぬ前に話しておきたい」と語る人もいたという
▼南海トラフ沿いでは昭和東南海地震の2年後に昭和南海地震が起きた。また大きな地震が連動して起きるのか。南海トラフ沿いの宮崎・日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が一昨日あり、気象庁が「臨時情報」を出して巨大地震への注意を呼び掛けた
▼巨大ではなかったが、昨夜も関東で揺れた。要注意は1週間程度という。15日の終戦記念日ごろが目安か
▼戦争と昭和東南海地震を経験したある女性は、戦後は穏やかな日々だったといい「平和で何事もなく、ありがたい、ありがたいと思っているんです」と語ったそうだ。戦没者を思う8月。これ以上揺れず、何事もないことを祈る。
記者会見する気象庁の担当者=8月8日午後、東京都港区(斉藤佳憲撮影)
気象庁が初めて発表した「南海トラフ地震臨時情報」は、東海から九州にかけての南海トラフ巨大地震の想定震源域でM6・8以上の地震が起きたときなどに出される。8日の日向灘の地震は震源と規模が、この基準に該当した。
南海トラフ地震は、30年以内の発生確率が70~80%とされ、平常時でも切迫度は高い。気象庁は「政府や自治体の呼びかけ等に応じた防災対応をとってください」と呼びかけている。防災対応の基本は各家庭、地域の地震、津波への備えを徹底することだ。家庭や職場では家具の固定など揺れへの備えを進めて、津波被害が想定される地域では「揺れたら必ず避難する」という意識を住民が共有することが重要だ。