巨大地震臨時情報 「発生時の備え」再点検を(2024年8月9日『産経新聞』-「主張」)

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記者会見する気象庁の担当者=8月8日午後、東京都港区(斉藤佳憲撮影)
 
 8日午後4時43分ごろ、宮崎県の日向灘震源とするマグニチュード(M)7・1、最大震度6弱地震が発生した。
 この地震で、気象庁は近い将来の発生が懸念される南海トラフ巨大地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まったとする「巨大地震注意」の臨時情報を発表した。
 地震津波への日ごろの備えを再確認するとともに、高齢者や障害者のリスクを小さくすることが大事だ。同時にSNSなどでの偽情報に注意したい。
 気象庁が初めて発表した「南海トラフ地震臨時情報」は、東海から九州にかけての南海トラフ巨大地震の想定震源域でM6・8以上の地震が起きたときなどに出される。8日の日向灘地震震源と規模が、この基準に該当した。
 平成23年3月の東日本大震災では、2日前にM7級の地震が起きている。統計データなどから、M7以上の地震が発生した領域で7日以内にM8級以上の地震が発生する頻度は数百回に1回程度だという。
 南海トラフ地震は、30年以内の発生確率が70~80%とされ、平常時でも切迫度は高い。気象庁は「政府や自治体の呼びかけ等に応じた防災対応をとってください」と呼びかけている。防災対応の基本は各家庭、地域の地震津波への備えを徹底することだ。家庭や職場では家具の固定など揺れへの備えを進めて、津波被害が想定される地域では「揺れたら必ず避難する」という意識を住民が共有することが重要だ。
 想定震源域でM8以上の地震が起きた場合には、今回の「注意」よりも強い「巨大地震警戒」の臨時情報が出される。M8級地震が連動した昭和や安政南海トラフの活動を想定している。
 今回の「南海トラフ地震臨時情報」発表を契機として「巨大地震警戒」の臨時情報が出された場合の防災対応についても、政府、自治体、地域と家庭がそれぞれ、事前に具体的な検討をしなければならない。臨時情報に関して最も注意すべきなのは、1週間が経過しても決して「もう大丈夫」ではないことである。日本は地震多発国であり、南海トラフに限らず、列島全体が地震の活動期にある。
 地震津波への備えと防災意識を高める契機としたい。