【ミルウォーキー(米中西部ウィスコンシン州)=浅井俊典、鈴木龍司】トランプ前大統領(78)は18日、当地で開かれた共和党大会最終日で演説し、11月の大統領選の党候補指名を受諾した。自身の暗殺未遂事件を踏まえ「米社会の不和と分断を修復する。米国の半分ではなく、全体のための大統領になる」と国民に結束を呼びかけた。
◆EV推進策は中止、ウクライナ侵攻やガザの戦闘は「終わらせる」
トランプ氏は演説冒頭で「撃たれる直前に頭を動かさなかったら、私は今夜ここにいなかった」と振り返った。その上で「政治が頻繁に私たちを分断してしまう時代だが、同じ市民であることを忘れてはいけない」と強調した。
大統領選の主要争点である不法移民問題では、「国境を封鎖して壁を完成させ、侵略を止める」と表明。インフレの抑制に向けて国内の石油や天然ガス採掘を進めるほか、バイデン政権が進めてきた電気自動車(EV)の推進策を就任初日に終わらせるとした。
さらに副大統領候補のバンス上院議員(39)とともに「米国第一主義」を掲げて大統領選で勝利し、「米国を再び偉大な国にする」と強調した。
◆高齢不安のバイデン氏、近く撤退決断の可能性と現地報道
一方、米メディアは、民主党のバイデン大統領(81)が近く大統領選から撤退する可能性があるとの党幹部の見方を相次いで報じた。ニュースサイト、アクシオスは、今週末にも撤退を決断する可能性があるとの党幹部の見解を伝えた。
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◆南山大・花木亨教授が解説 民主党は悩みの種が一つ減った
トランプ前大統領による今回の指名受諾演説では、先週末の政治集会における暗殺未遂事件を経て、語りに変化が生じるかが注目された。トランプ氏は銃撃事件を受け、準備してきた演説原稿を破棄し、「unity(結束、統一、調和)」を主題に一から新しく演説を書き直す意向を示していた。
敵を激しく攻撃し、政治的分断をあおるようなトランプ氏の語りを嫌う有権者は多い。トランプ氏がそこから脱却し、政党支持なし層や民主党支持層を含む多様なアメリカ人たちを一つにまとめるような演説をすることができたなら、それは民主党にとって大きな脅威となるだろう。
銃撃事件で命を落とした元消防隊員への黙とうを呼びかけた場面では、暴力を否定し、民主的な対話の大切さを聴衆に思い出させているようにも見えた。
しかし、演説が進むにつれて、いつものトランプ氏の語りが顔を出した。バイデン大統領の名前を出すことは極力控えていたものの、現政権に対する虚実をまぜあわせた批判を延々と繰り返していた。
いつもと変わらないトランプ氏の語りは、既存の支持者たちを安心させたかもしれないが、新たな支持者の獲得へとつながるものではなかっただろう。民主党にとっては、悩みの種が一つ減ったと言えるのではないか。(寄稿)
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