1950年代の日本映画の黄金期に製作され、70年ぶりに発見された名探偵・金田一耕助が主人公の映画について、劣化したフィルムの修復費用を募るクラウドファンディングが3日から始まりました。
フィルムは作品を製作した映画会社に寄贈され、会社では、劣化したフィルムのゆがみや傷を修復する作業に入っています。
修復費用は400万円以上が見込まれ、ほかの経費もかかることから、その一部を3日からクラウドファンディングで募ることにしました。
目標金額は映画の最初の公開日にちなみ、195万4427円に設定されました。
修復中の映画は名探偵・金田一耕助を当時の時代劇スターの片岡千恵蔵さんが演じ、スーツ姿でアクションも見せるなど原作のイメージとは異なる金田一が見られる貴重な作品で、ファンの期待も高まっているということです。
東映の梨田日色 映像資産管理室長は「映画黄金期の名作なので、数多くの横溝ファン、金田一ファンとチームになって一緒に修復して作り上げ、大スクリーンで上映し、当時を思い出してもらいたい」と話していました。
会社では寄付した人を対象に、来年1月に都内で上映会を開く計画です。
古い映画フィルムはどうやって修復される?
今回見つかった映画のフィルムを修復する東映では、今では見ることが難しい昔の映画を見たいという需要は今後、増えると見込んで、劣化したフィルムの修復に力を入れています。
フィルムの修復とデジタル化には、大きな手間がかかっているといいます。
はじめに経年劣化によるフィルムの切断や亀裂をテープで補修し、表面の汚れを綿棒を使って手作業で取り除いたあと、デジタル化するための専用の機械でスキャンします。
今回見つかったフィルムは変形やゆがみもあることから、通常よりも2倍の時間をかけてスキャンしていきます。
そして画面上に仕上がった映像を出し、縦の線や汚れなどをコマ送りしながら取り除き、何度も繰り返し再生して調整をします。
見つかった映画は1時間20分ほどの長さで、修復には半年ほどかかる見込みです。
会社によりますと、一連の修復にかかる費用は400万円以上に上る見込みだということです。
東映では、年間1億5000万円の予算をとって、毎年300作品以上の修復を進めているということです。
このうち1940年代後半から60年代のフィルムの劣化が激しく、優先的に取りかかっているということです。
東映が製作したこの年代の作品で、デジタル化する予定のフィルムは、およそ1500に上り、向こう4年間ですべてのデジタル化を行う計画です。
梨田日色 映像資産管理室長は「今はアーカイブへの認知度がそれほど高くないが、これから先は間違いなくアーカイブの需要は増えるし、一つの映像資産として残すことが映画会社のミッションだと思っています。なるべく早くデジタル化して今回のような名作を皆さんに見てもらう機会を作りたい」と話していました。
映画やドラマでも人気の高い名探偵・金田一耕助はこれまで多くの人気俳優が演じてきました。