久しぶりに帰ったのに、どうも歓迎されている気がしない…。すねた寅は、おいちゃんたちとけんかし、ぷいとまた旅に出る。映画「男はつらいよ」お決まりのパターンである。「夏になったら必ず帰ってくるあのツバクロさえも、何かを境にぱったり姿を見せなくなることもあるんだぜ」と
◆ツバメは南方で冬を越し、子育てのために日本へ渡ってくる。春になって十分な日光と水分を得た木々の葉が一斉に芽吹く。すると、それを食べる虫の幼虫が次々にふ化する。これが子ツバメの栄養源になるのである。自然は互いを支え合う、いのちのいとなみである
◆暦を持たない生きものたちは、気温や日差し、月の満ち欠けなどを手がかりに季節を知る。ところが近年、木々の葉が早く開き、追われるように虫たちもふ化して、渡り鳥が子育ての時期にえさがない、という地域も出てきた
◆世界の平均気温は昨年6月から毎月、史上最高を更新し、この春は10年に1度の暑さとか。地球がじわじわ「沸騰」し、生態系というお決まりのパターンが崩れつつある。魚がとれない。作物が実らない。暮らしの異変は地続きである
◆きょうは二十四節気の「穀雨」。収穫をもたらす頼みは雨だけではない。今年もツバメが帰ってきますように。あんな捨てぜりふを吐いた寅さんだって必ず戻ってきたんだし。(桑)