先生の6割が「3年以内の離職・転職」を考えている…教員不足で現場に起きているひずみの数々(2024年4月101日『東京新聞』)

 
 大学教授らでつくるグループが、教員不足について公立学校の現職教員にアンケートしたところ、昨年12月時点で「勤務校の教員不足が起きている」と答えた小学校教員が64%いたことが分かった。「4月の年度初めから不足していた」と答えた教員は37%、「夏休み明けの9月から」と回答した教員は57%で、年度内でも徐々に悪化していく状況が浮かび上がった。(榎本哲也

◆公立学校教員1231人の回答を分析すると…

 中学校教員の回答では、不足が起きた時期が4月が37%、9月55%、12月56%。特別支援学校ではさらに深刻で、4月に欠員があったと答えた教員が63%、12月は77%にまで増えていた。調査結果やアンケートの自由回答からは、産育休や病気の欠員を補充できず、教員の健康や子どもたちの学びに悪影響が出ている実態が見て取れる。
 
教員不足の実態をアンケート結果を基に説明する末冨芳・日大教授(中央)ら

教員不足の実態をアンケート結果を基に説明する末冨芳・日大教授(中央)ら

 調査したのは、NPO法人スクール・ボイス・プロジェクトなどでつくる「#教員不足をなくそう!緊急アクション」。昨年12月~今年2月、SNSを通じてウェブアンケートを実施。寄せられた回答のうち公立学校教員の1231人分を分析し、今月9日に発表した。
 小学校教員のうち「3人以上の教員不足」が生じたと答えた教員は4月時点が2%だったが、12月では10%に上った。また、1年以内に離職や転職を考えていると答えた小学校教員は13%で、「3年以内」も含めると62%。中学校教員もほぼ同じ割合だった。
 調査を分析した日本大文理学部の末冨芳教授(教育政策学)は「まず、教員志願者の奨学金返済免除や、定年後再任用教員の待遇改善などに取り組んだ上で、根本治療として基礎定数の改善、教員養成課程におけるカリキュラム負荷の軽減などを進めてほしい」と提言している。
 
【教員不足アンケートの自由記述欄から】※一部、内容を変えない範囲で記述を修正
▽ドリルなど自習時間が増えた。大人がいない時間帯ができるため子ども同士のいさかいが起き、トラブルの度合いがひどくなる(長野県・小学校)
特別支援学級の担任5人のうち、初任者が出勤しなくなり、主任が出勤しなくなり。多忙さから病休者が出て最後は1人になった(東京都・小学校)
▽契約上は担任になれない非常勤講師が担任になった(神奈川県・小学校)
ADHD注意欠陥多動性障害)など支援が必要な児童に対応できず放任してしまう(高知県・小学校)
▽割り切って帰る人は5時に帰る。やらなければと感じる人は残る。職員室が2分化(神奈川県・小学校)
▽すでに1人欠員状態で私の妊娠が分かり、休みにくく、頑張った結果、切迫流産で入院。私の代わりは来ず、教務主任が担任をしてくれた(京都府・小学校)
▽副校長が担任に。職員室に管理職が不在の時間が増えて、緊急連絡の受け手がいない(東京都・小学校)
▽教室ではなく武道場に2クラスの生徒を集めて、同時に授業を行う予定(東京都・中学校)
▽病休者の代わりが見つからず、その教科の授業ができなかった(千葉県・中学校)
特別支援学級の教員が不足し、別々に授業すべきクラスが一緒に授業している(福岡県・中学校)
養護教諭が欠員で、保健室が夏休み明けから閉鎖(岩手県・高校)