過去10年で2.5倍に…急増する「外国人労働者」受け入れ再考の時 .
多くの産業で人手不足が深刻化し、外国人は貴重な労働力になりつつある。官民が協力して外国人が働きやすい環境を整えていく必要がある。
4月からはトラック運転手らの時間外労働が制限され、物流などへの影響が懸念されている。林業も担い手が先細りし、森林管理が行き届かなくなっている。
このため政府は、外国人労働者を受け入れる在留資格「特定技能」に、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野を追加し、計16分野とすることを決めた。
近い将来、バスやタクシー、トラックの運転手や駅員として、外国人が働くことになる。
人口減少という厳しい現実に対応するため、外国人就労の場を広げていくのはやむを得ない。
政府は、バスとタクシーの運転手、電車の車掌や駅員などについては、他の分野よりも高い水準の日本語試験を課す方針だ。
利用客と接する運転手らには、事故や故障など緊急時への対応が求められる。十分にコミュニケーションがとれる日本語能力を就労の条件とするのは当然だ。
外国人を雇い入れる企業は、交通ルールや運転技術などの研修を拡充するなど、安全管理を徹底しなければならない。
特定技能は2019年、人手不足が顕著な分野で、一定の技能がある外国人を受け入れるための制度として発足した。昨年末時点で20万人が働いている。企業が外国人を正規に雇い入れる仕組みとして、定着しつつある。
一方、途上国への貢献を名目とした技能実習制度には、人権侵害との批判があり、政府は廃止を決めている。代わりに、本人の意向で転職ができる「育成就労」を創設する方針だ。
今後は、育成就労で入国した外国人が、円滑に特定技能に移行できるようにすることが大切だ。
どのような在留資格であれ、企業が外国人を安い労働力と捉えていては、有為な人材は獲得できない。処遇の改善や福利厚生の拡充に努めてもらいたい。
政府は24年度からの5年間で、最大82万人の特定技能の外国人を受け入れるという。
今後は、外国人との共生をどう進めるかが課題となる。外国人労働者が日本社会に溶け込めずに孤立したり、犯罪に手を染めたりすることは現状でも起きている。