神奈川県警のパトカー
神奈川県警の警察官がマンション居室に承諾なく立ち入ったなどとして、視覚障害のある夫婦が県に計220万円の損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁(高取真理子裁判長)は21日、障害者差別解消法が定める合理的配慮の提供を怠る過失があったなどとして請求の一部を認め、県に27万5000円の支払いを命じた。原告側弁護士によると、行政の対応を巡り、合理的配慮義務違反を根拠に国家賠償法上の責任を認める判決は全国で初めて。
判決によると、県警磯子署の警察官5人が2019年10月9日深夜、怒鳴り声などに関する通報を受け、横浜市磯子区のマンションの夫婦宅を訪問。当初、強度の弱視の妻が玄関先で職務質問に応じたが、全盲の夫が周囲の住民に配慮して玄関内に入るよう促したところ、警察官4人が居室まで立ち入った。
◆「見えないゆえの恐怖は十分に認められなかった」
高取裁判長は、夫婦が入室を認めたのは玄関内までで、居室は含まれないと指摘。警察官は、2人が視覚障害者だと分かっており、障害者差別解消法の趣旨に鑑みて「どの場所にまで立ち入ることを許容する趣旨かを明示的に確認すべきだった」とした。下着姿で対応した夫に女性警察官がいることを伝えなかったことに関しては、同法の合理的配慮の提供を怠り、「原告の羞恥心を著しく害し、人格権を侵害した」と結論付けた。
判決後、夫婦は取材に「立ち入りの違法性を認められたのはうれしいが、見えない故の恐怖は十分に認められなかった」と語った。
県警の加藤秋人監察官室長は「主張が一部認められず、残念。判決内容を検討の上、適切に対応する」とコメントした。(森田真奈子)
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