岸田文雄首相が旧統一教会と接点の盛山正仁文科相を切れないわけ “裏金”解散の安倍派議員は反発(2024年2月14日)

 しかし2月6日付の朝日新聞が、盛山正仁文部科学相が2021年の衆院選で旧統一教会(世界平和統一家庭連合)系の団体から推薦状を受け取っていたことを報じたとたん、風向きが変わった。

 これは、昨年10月に盛山氏が、文科相として旧統一教会に対する命令を東京地裁に申請したことへの“報復”だろう。盛山氏は22年9月に行われた自民党の調査には「関係団体とは認識せず、1度だけ参加してあいさつした」と申告していたが、選挙協力に関しては隠蔽(いんぺい)していた疑いが強まった。野党からは大臣不信任決議案を提出する動きもあるが、任命責任を問われかねない岸田首相は、盛山氏を更迭することはできない。

 しかも盛山氏は、岸田首相が会長を務めた宏池会に所属していた。これに「ダブルスタンダードだ」と反発したのは、冷遇された元安倍派の議員たちだ。もし大臣不信任案が提出されれば、賛成票を投じなくても、欠席することで反対票を減らし、可決させることは可能になる。

■国民民主の玉木代表も離脱を決定

 そして国民民主党も岸田首相を見放した。2月7日にはトリガー条項凍結解除をめぐる自公との協議からの離脱を正式決定した。

 ガソリンにかかる揮発油税を一時的に引き下げるトリガー条項凍結解除は、国民民主党にとって2021年の衆院選に公約として取り入れて以降の「目玉政策」となっている。その実現は悲願であり、そのために野党でありながら政府予算案に賛成を投じてきた。2022年の衆院予算委員会では、岸田首相の「あらゆる選択肢を排除しない」という“トリガー条項”について言及のない発言にすらすがりつき、“から喜び”してきた。

 2月6日の衆院予算委員会で、国民民主党玉木雄一郎代表は「事務手続きはクリアできる。必要なのは総理の政治判断」と迫ったが、岸田首相は玉木氏が提示した事務手続きを「新しいご提案」として「検討する」とだけ回答。これまでの国民民主党が説明してきたことを“リセット”してしまった。

  それを冷たい目で見ていたのは、昨年11月に国民民主党を離党し、教育無償化を実現する会を立ちあげた前原誠司氏だった。前原氏は2022年度本予算を決議した衆院本会議を、体調不良を理由に欠席したが、後に「ガソリンを下げることは大変重要だが、それだけではない」と述べ、この時の路線の相違が離党の原因になったことを明かした。

 離党という仲間割れを招いてもいとわなかったトリガー条項凍結解除だが、それから3カ月も経ずして国民民主党は岸田政権から離れ、今度は立憲民主党に近づこうとしている。4月28日に行われる衆院東京15区補選で、国民民主党は高橋茉莉氏を擁立。同じく補選が行われる衆院島根1区と衆院長崎3区に候補を擁立している立憲民主党にも協力を呼びかけた。

「島根と長崎では立憲の候補、東京では国民の候補を一緒に応援しよう」というわけだ。 “党外与党”のはずの国民民主が……

 これは衆院で7人、参院で10人を擁する国民民主党の“野党化”で、岸田政権の“戦力低下”であることは間違いない。玉木氏は、宏池会の中興の祖である故・大平正芳元首相の後継を自任し、国民民主党が2022年度予算に賛成した時には岸田首相と連絡を取っていることを強調するなど、自民党との近似性を示していた。すなわち「党外に置いた与党」というのがこれまでの国民民主党の位置付けだったのだ。

安積明子