「家族は震えている。辞めるしかない」  亡くなった竹内英明・前兵庫県議を襲ったいわれなき誹謗中傷(2025年1月21日『AERA dot.』)

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県議選で当選し、喜ぶ竹内英明氏(2007年)
 その一報を聞いた時、ただ絶句するしかなかった。
 兵庫県の前県議、竹内英明氏(50)が1月18日に姫路市の自宅で亡くなった。自殺とみられている。昨年春に兵庫県の元県民局長の内部告発をきっかけに斎藤元彦知事ら県幹部の数々の疑惑が浮上してから、記者は竹内氏に何度も取材で話を聞いていた。
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兵庫県議会の百条委員会ですれ違う斎藤知事と竹内氏
 竹内氏は県議時代、立憲民主党の県議らでつくる会派「ひょうご県民連合」に所属。斎藤知事らに浮上した疑惑を解明するため県議会が設置した文書問題調査特別委員会(百条委員会)の委員になり、委員会で的確で切れ味鋭い質問を飛ばしていた。
 竹内氏の追及もあって、昨年9月に県議会は全会一致で不信任決議をして斎藤知事は辞職。県知事選が行われることになったが、この知事選は前代未聞のものだった。
 議会で斎藤氏を追及した議員や、斎藤氏に対抗して立候補した前尼崎市長の稲村和美氏らに対して、SNSなどで誹謗中傷が殺到し、拡散された。稲村氏は組織的な通報によって、後援会のX(旧ツイッター)が選挙戦中に凍結され、一時的に利用不能になったという。「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏は、自らの当選ではなく斎藤氏を当選させる目的で知事選に立候補。百条委員会委員長の奥谷謙一県議の自宅兼事務所の前で奥谷氏を非難する街頭演説を繰り広げ、それも動画で拡散された。
 竹内氏と同様、百条委員会で斎藤氏を追及していた丸尾牧県議は、こう話す。
「奥谷氏以外に立花氏から名指しされていたのが、私と竹内さん。うちにも嫌がらせ電話がかかり、事務所周辺を車が徘徊するなどされました。竹内さんのところも同様だったようです」
 知事選は11月17日に投開票され、斎藤氏の再選が決まった。その翌日の18日、竹内氏は突然、議員辞職した。
「なんで辞めるんですか」
 と記者が電話すると、
「家族が危ない目に遭うかもしれない。家族を守らないといけない。仕方ない決断なんや。SNSでここまでありもしないことを中傷され、うちはめちゃくちゃや」
 いつもの威勢がいい竹内氏とは思えない、沈んだ声だった。辞める必要はないのでは、と話したが、
「本当に危ないねん。変な車が家の周辺に来たりとか、やばい。家族は震えている。県議を辞めるしかない」
 と消え入りそうな声だった。
■「逮捕なんてアホな話はどこにもない」と憤慨
 竹内氏の辞職後も、SNSでは竹内氏に対して、デマ情報が飛び交う状況が続いていた。竹内氏に対して「警察が捜査すべき」「逮捕される」という的外れな投稿もあった。
 昨年12月に竹内氏に電話すると、
「逮捕なんてそんなアホな話はどこにもない。警察から県議会のこと教えてと協力を求められるほどやのに。デマばかり流されて参るわ」
 とデマ情報の拡散を憤っていた。
 竹内氏が亡くなった後、NHK党の立花氏はSNSで、「竹内元県議は、昨年9月ごろから兵庫県警からの継続的な任意の取り調べを受けていました」「こんな事なら、逮捕してあげた方が良かったのに」と投稿。さらにYouTubeの動画では、「竹内元県会議員、どうも明日逮捕される予定だったそうです」と発信した。
 これに対して、兵庫県警の村井紀之本部長は異例の対応を見せた。1月20日、県議会の委員会で、「竹内元議員について被疑者として任意の調べをしたこともないし、ましてや逮捕するといった話はありません。全くの事実無根」と、個別の案件を取り上げて全否定。「明白な虚偽がSNSで拡散されていることについて、極めて遺憾だ」と述べた。
 立花氏はこの後、関連の書き込みや動画を削除し、「事実と異なることを発信したことについて謝罪をさせていただきます」と述べている。
■元衆院議員の石川氏は「切れ味のある後輩だった」
 竹内氏の訃報を知って、記者が真っ先に連絡したのは、元衆院議員の石川知裕氏だった。
 竹内氏は姫路市の高校から早稲田大学に進学。政治サークル「鵬志会」に入会した。その1年先輩にいたのが、石川氏だった。
「竹内が死んだって、本当ですか? オレ言ったんですよ、どれだけ叩かれてもくじけるな、前を見ろ。苦しくなったらオレの背中を見ろ、って言ったんですよ。バカヤロウ」
 石川氏は元民主党代表の小沢一郎衆院議員の秘書をへて、2007年に衆院議員となった。小沢氏の資金管理団体陸山会」の事件によって、10年に政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で逮捕された。無罪を訴え続けたが、14年に有罪が確定。その後も政治活動を続け、昨年の衆院選では立憲民主党比例北海道ブロック候補として立候補したが、次点で落選した。
 石川氏が逮捕された後、竹内氏は石川氏の身を案じて何度も連絡をくれたという。
 石川氏は学生時代から小沢氏のもとで秘書として働いたが、竹内氏は、奥田敬和運輸大臣の事務所で修業していた。石川氏が振り返る。
「竹内は大学を卒業してセブンイレブンに就職したのですが、政治をあきらめられないと、旧民主党の職員となって、政調や国対などで手腕を発揮した。それから地元に帰って姫路市議、県議になった。切れ味のある後輩で、さすがだと思っていた」
■「竹内さんの追及も踏まえて百条委で結論を」
 元県民局長の内部告発文書の問題が公になったのは、斎藤知事が昨年3月27日の記者会見で、元県民局長を更迭する人事を説明する際、元県民局長について、
「事実無根の内容が多々含まれている文章を、職務中に作った」
嘘八百含めて文書を作って流す行為は公務員失格」
 などと厳しく批判したことだった。
 その翌日、記者はこの内部告発文書を入手し、これは「嘘八百」ではなく、大きな問題になる可能性があると思った。そして、以前、選挙取材で名刺交換をしたことがある竹内氏に連絡を取った。竹内氏の議会での活動ぶりなどから、深い情報を知っていると思ったからだ。
 竹内氏は取材に応じてくれ、元県民局長が内部告発に至った背景や、内容の真実性などを解説してくれた。それ以後、竹内氏には頻繁に取材に応じてもらい、AERA dot.でも斎藤知事の疑惑に関して、竹内氏のコメントを入れた記事を何度も書いた。
 丸尾県議はこう話す。
「竹内さんは県の職員からの信頼も厚く、勉強熱心で、百条委員会でもあっと驚くような質問をされていた。SNSのいわれなき誹謗中傷には、私も精神的にダメージを受けている。そして、SNSでは今もそれが継続中で、竹内さんも同じだったようです。私たちにできることは、竹内さんが百条委員会で追及してくれたことも踏まえて、しっかり結論を出すことです」
 百条委員会の調査報告書は2月県議会に提出される予定になっている。情報の根拠をきちんと調べ、ファクトに即した追及を百条委員会で展開していた竹内氏の意思が、そこに反映されることを願う。合掌。
AERA dot.編集部・今西憲之)
 
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兵庫知事の公選法違反疑惑で元支持者「説明が不十分」 知事は「公務がある」と説明せず(2025年1月21日『産経新聞』)
 
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報道陣の取材に応じる斎藤元彦兵庫県知事=21日午後、神戸市中央区
昨年11月投開票の兵庫県知事選で、斎藤元彦知事が県内のPR会社に有償で広報宣伝を任せたのは公職選挙法違反(買収)罪に当たるとして告発された問題で、斎藤氏の元支持者の男性(54)が21日、県庁で記者会見を開き、「公選法に違反した認識はない」と主張している斎藤氏について「説明が不十分」とし詳細の説明を求めた。
男性によると、斎藤氏とは令和元年ごろに知り合い、支援するようになった。今は公選法違反疑惑を巡る斎藤氏の説明姿勢などから支援していないという。
公選法違反罪の告発を巡っては、このPR会社の女性代表が投開票後にインターネット上で「広報全般を任せていただいた」と投稿し疑惑が浮上した。斎藤氏の代理人は記者会見でポスター製作費などでPR会社に71万5千円を支払ったことを認めたが、広報の監修依頼は否定している。
一方、選挙戦で斎藤氏に動画編集などの支援を申し出た神戸市の上原みなみ市議が今月14日、動画を投稿。告示前に斎藤陣営の広報担当者から「SNS監修はPR会社にお願いする形となりました」と無料通信アプリ「LINE(ライン)」で連絡を受けたことを明らかにした。
「選挙のSNS監修はPR会社に依頼」と神戸市議が動画投稿 兵庫知事の公選法違反疑惑で
男性は斎藤陣営の説明と市議が受け取ったラインの内容に齟齬があるとし、「斎藤氏は誠実に答えて頂くことが第一」と強調。県政を前に進めるためにも「いち早く(詳細を)説明して」と求めた。
斎藤氏は報道陣の取材で、男性からの要望の受け止めについて聞かれたが「公務があるので」と足早に立ち去った。

「選挙のSNS監修はPR会社に依頼」と神戸市議が動画投稿 兵庫知事の公選法違反疑惑で(2025年1月14日『産経新聞』)
 
昨年11月の兵庫県知事選で、斎藤元彦知事が県内のPR会社に有償で広報宣伝を任せたのは公職選挙法違反(買収)罪に当たるとして刑事告発された問題で、上原みなみ神戸市議が14日、X(旧ツイッター)に投稿し、選挙前に斎藤陣営の広報担当者からSNS監修をPR会社に依頼する旨のメッセージを受け取ったと明らかにした。斎藤氏側はPR会社への広報宣伝委託を否定している。
上原市議の投稿によると、市議は告示前の昨年10月5日、斎藤氏や陣営の広報担当者と面談し、動画配信で「撮影や編集をお手伝いできる」と提案。だが、翌6日に広報担当者から「SNS監修はPR会社にお願いする形となりました」と通信アプリ「LINE(ライン)」で連絡を受けたという。
上原市議は産経新聞の取材に、メッセージに関する一部報道を受けて名乗り出たと説明。一方、広報担当者は「答えられない」としている。
疑惑を巡っては、PR会社の女性代表が投開票後にインターネット上で「広報全般を任せていただいた」と投稿。斎藤氏のX公式応援アカウントなどを「管理・監修していた」と記載した。同アカウントは、上原市議が広報担当者から連絡を受けた翌日の10月7日に立ち上がった。斎藤氏の代理人は、ポスター製作費などでPR会社に71万5千円を支払ったことを認めたが、広報の監修を依頼したことは否定している。