北海道大の教員「追い出し」問題 教職員組合、解決求め大学に要望書(2024年10月17日『毎日新聞』)

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化学部門が入る北海道大理学研究院=札幌市北区で鳥井真平撮影
 北海道大理学研究院の化学部門で複数の教員が「教授会によって組織的に孤立させられている」と訴えている問題で、北大の教職員組合は17日、問題の解決を求める宝金清博学長宛ての要望書を大学に提出した。教員に正当な処遇を与える指示を化学部門に出すことなどを要望した。
 化学部門では、教授が定年退職や異動などで不在になった研究室に残った教員を「旧スタッフ」などと呼んで区別している。部門の教授会に当たる「講座委員会」が2020年度に作成した内部基準に基づき、ほとんどの旧スタッフは学生も配属されず1人で研究する環境に置かれている。
 同組合は要望書で▽化学部門の教員の処遇や講座委員会の決定に関する事実確認とその正当性を確認する▽不当だった場合、正当な処遇を与えるよう指示する▽部門が対応を拒むか十分な対応を行わない場合、大学は「部局自治」を言い訳とせず、実効性のある対応を部門に求める――ことなどを大学に求めた。
 同組合の清水池義治・執行委員長は「教員があるべき姿から懸け離れた状態にあり、明らかに人権侵害だ。部門内で正当化されていたのも異常だ」と問題視。「問題が発覚したにもかかわらず、公的な説明もない。部局任せにせず、大学本部が責任を持って対応すべき事案だ」と指摘した。
 北大は「内容を確認の上、真摯(しんし)に対応していく」とコメントした。
 毎日新聞は10月、旧スタッフ以外にも理学研究院で孤立した環境に置かれている助教がいることを報じた。同組合はこれも踏まえ、大学に問題解決を求めることを決めた。【鳥井真平】

2024年10月17日
総長 寳金清博 様
執行委員長 清水池義治
本学理学研究院化学部門における複数の「追い出し部屋」報道に係る対応の要望について2024 年5月9日付けの毎日新聞の記事で、本学理学研究院化学部門の複数の准教授に学生が配置されず、さらに当該准教授らを本学がいわゆる「追い出し部屋」に追い込んだとされる報道がなされました。このことについて本組合は2024年7月3日付けの質問書を提出し、大学から2024年7月25日付けで回答書を得ました。
この回答書において、理事名で「部局長等連絡会議において、部局長に対して、教員の教育研究環境の悪化につながりかねない、社会から疑念を抱かれるような取扱いが行われないよう、今一度部局内の取扱いについて確認するとともに、教員が安心して教育研究に専念できる環境を提供できるよう、引き続き適切な管理運営に努めるよう要請した」ことと「今後、引き続き理学研究院と情報を共有しながら、同研究院において適切な対応が講じられるよう、大学として必要な対応に努め」るとすることが回答されたことから、本組合では大学が報道に係る事態の収拾を図るものとして状況を注視しておりました。
そのような中、2024年10月1日付の毎日新聞の記事で、さらに新たに理学研究院化学部門の助教に対する学生不配置と「追い出し部屋」へ配置されたとされる報道がなされました。この報道に関する事実確認を本組合はまだ大学に求めておりませんが、本組合においても報道内容と矛盾しない教員の異動や論文の著者名の記録等を確認しており、10月1日付けの報道内容が事実に基づいた可能性が高いと判断いたしました。
既に 5 月に報道された内容について一部事実であることは上述した回答書でも確認されておりますが、立て続けに行われた報道も事実である場合、それは不当に処遇された教員が化学部門にさらに他にいたことに加え、そのような事実が全国紙である新聞で報道されたことにより、対外的に本学の名誉と信用は著しく失墜したものと言わざるを得ません。本組合ではこのような複数の報道に際し、北海道大学が可及的速やかに対応を講じてその経緯等を学内外に公表すべきであると考え別紙のとおり本件報道に係る対応を要望いたしますので、速やかに対応願います。
本学理学研究院化学部門における複数の「追い出し部屋」報道に係る対応の要望
1.北海道大学毎日新聞等で報道された「複数の准教授」及び「助教」(以下、「本件教員」という。)の理学研究院化学部門における処遇や同部門講座委員会等が行った決定について、速やかに事実確認を行うこと。
2.事実確認により明らかとなった本件教員の処遇について、大学としてその正当性を確認すること。
3.本件教員に対する処遇が不当であると確認される場合に、速やかにそのような処遇を撤回して本件教員に正当な処遇を与えることを指示するとともに、そのような不当な処遇を与えるに至った原因の究明と再発防止のための策を大学として講じること。
4.以上の要望について理学研究院化学部門や同部門講座委員会が対応を拒むか充分な対応を行わない場合に、大学当局は「部局自治」を言い訳とせず、理学研究院長と協働して実効性のある対応を理学研究院化学部門や同部門講座委員会に対して行うこと。
5.以上の対応について、大学は学内外に経緯や対応方法を公表し、本学及び理学研究院の名誉及び信用の回復に努めること。