首都女帝決戦に火ぶた
東京都知事選(7月7日投開票)が6月20日、告示された。注目されるのが小池百合子都知事、蓮舫前参院議員の2人の「女帝」のバトルだ。2人は告示前日の19日、日本記者クラブでの共同記者会見で激突。自民党について小池氏が「都政を現実に進めていくためにはいろいろな連携が必要」と言えば、蓮舫氏が「政治とカネ、裏金問題に怒りをもって国会に臨んでいた」と批判するなど、舌戦を繰り広げた。ただ、今のところはリードしているとされる小池氏だが、今後の女帝2人の戦いの行方は。
小池VS蓮舫…対照的な第一声
「狙うこと、大目標は世界で一番の都市、東京の確立。キーワードは首都防衛。都民のみなさま方の命を守る、暮らしを守る、経済を守るだけではありません。発展させていきます」
通常は街頭演説で広く有権者に訴える第一声だが、小池氏は4月の東京15区補選で候補者たちがつばさの党による妨害を受けたことを理由に、事務所内での第一声にしたと説明。集まった支援者らからの拍手を受けた。
立候補届が完了せず、当初の予定よりも30分以上遅れてマイクを握り、「政治は何をしてくれているのか。みなさんの暮らしよりも裏金だ。私がリーダーとなって、東京都のみなさん、あなたのために東京を変えたい」と訴えた。
学歴詐称疑惑などについてヤジを受けることのないよう、公務や妨害の恐れを理由にして露出は極力”AIゆりこ”などのネット中心にする方針です。
一方、蓮舫氏陣営は『巻き返せる』と鼻息が荒く、街頭演説で支持の広がりを図ります。ただ、『立憲共産党』との批判を気にして、第一声では共産党議員が一緒に並び立つことはありませんでした。共産党との距離のとり方に腐心しています」(全国紙政治部記者)
学歴詐称疑惑に関する質問は「排除」の小池氏
2人の「女帝」は公約発表も対照的だった。
小池氏は異例のオンライン会見で、「無痛分娩費用の助成」「保育料無償化の対象を第2子から第1子に拡大」といった公約をアピール。
オンライン会見とした理由については「マスコミから非常に多くの問い合わせをいただいた」「希望するすべてのみなさまに参加していただけるように」と説明したが、実態は異なるようだ。
「小池氏が12日に出馬表明をした直後のぶら下がり取材では、指名を受けていないフリーの記者が学歴詐称疑惑について質問し、小池氏が戸惑う場面がありました。
それだけに、オンライン会見にしておけば、不規則な質問を「排除」でき、会見終了後に自身にとって都合の悪い質問をぶつけられることもないため、オンライン会見にしたとみられる。実際に、質問できた記者は5人で、会見は40分ほどで終了。
余計なことを言わず、ボロを出さないようにする方針は一貫しており、19日の蓮舫氏らとの共同記者会見では、他の候補者を指名し質問する形式でのやりとりの際にも「皆さんの声を伺いたいので質問はない」とかわし、現職としての余裕を強調してみせた。
立憲内からも「小池氏の方がやり手」の声
一方の蓮舫氏。小池氏と同日の18日に、立憲の周辺スタッフらとつくった公約「7つの約束」を発表。会見では記者の人数制限を設けず、1時間にわたり19人の記者が質問した。
ただ、「少子化対策は小池氏が高校授業料無償化など方針をすでに打ち出しており、独自性を出すのが難しい」(立憲議員)と苦戦。
リベラル層が注目する神宮外苑の再開発をめぐる問題についても「環境アセスメントを、もう一度厳格に検証します」などとしているが、すでに東京都が施行の認可を出しているために、抜本的な見直しには課題も指摘されている。
蓮舫氏も再開発の撤回まで踏み込むかを記者から問われると「検証する前に言葉だけが独り歩きするような答えは、ごめんなさい」と濁した。
立憲関係者は「神宮外苑の再開発に関心がある都民は、そう多くはない。そのこともわかった上で小池氏は進めているし、子育て政策も『無痛分娩費用の助成』など、都だけで実現でき、かつキャッチーなものを打ち出しています。蓮舫氏より小池氏の方が1枚も2枚も上手でやり手ですね」と冷ややかだ。
立憲内の空気も、蓮舫氏の出馬直後とは変わってきているという。
一度党内でしらけムードができてしまうと、選挙戦を戦うのは難しい。蓮舫氏に近い一部の議員は意気軒高ですが……」(同)
少しの失言やムードの変化で一気に流れが変わると言われる首都決戦。七夕の夜に笑うのは誰か?
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班