岸田首相「安保や改憲で責任ある対応を」、立民・泉氏「解散すべき」 党首討論要旨(2024年6月19日『産経新聞』)

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約3年ぶりに行われた党首討論=19日午後、衆院第1委員室(春名中撮影)
岸田文雄首相(自民党総裁)は19日、立憲民主党泉健太代表ら野党4党首と約3年ぶりとなる党首討論を行った。主なやりとりは以下の通り。
立民・泉代表
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立憲民主党泉健太代表「政治資金規正法改正案が可決された。企業・団体献金もやめない、政治資金パーティーもほぼそのまま。政策活動費は10年後の公開だ。次の総選挙でも候補者に政策活動費を執行するのか」
岸田文雄首相(自民党総裁)「反省の上で党改革を進め、今回の法改正に臨んだ。政策活動費は党勢拡大のための戦略的な活動を行うために活用されてきた。個人のプライバシー配慮と透明性の確保のバランスの中で制度を作った。この制度に基づき政策活動費を使っていく」
泉氏「あなたたちが抵抗勢力だ。1年で10億円、しかも各議員に行けば領収書はどうなるか分からない。『消える魔球』みたいだ。自民は裏のお金を作って使って政治活動をしようとしている」
「経済、物価について聞きたい。実質賃金は25カ月連続マイナスだ。給料が増えても、年金額が上がっても、使えるお金は減っている。国民生活が厳しい中、なぜ電気・ガスの補助金を切ったのか。両方合わせ月2000円の負担増だ。補助金を復活してはどうか」
首相「御党は企業・団体献金禁止、政治資金パーティー禁止、政策活動費も禁止と、全て禁止だ。禁止を言いながらパーティーを開いているとか、労働組合などから献金を受けているとあげつらう場ではないが、禁止、禁止、禁止というのは大変気持ちがいいかもしれない。しかし、政治資金は民主主義を支える大変重要な要素だ。現実的に考える責任ある姿勢が大事だ」
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「実質賃金がマイナスのままだとの指摘だが、私の内閣で経済対策・賃上げを最重点項目として取り組んできた。昨年は春闘で3・58%プラス、今年は33年ぶりに5・08%プラスと賃上げの効果が出てきた。秋以降に実質賃金がプラスになると多くの民間エコノミストが評価している。賃上げの流れを確実なものにしていく。定額減税もやる。年金生活者への配慮を秋に向けて行う。今年は物価に負けない所得を実現し、来年は物価に負けない賃上げを定着させることを国民に約束している」
「御党にも責任ある具体的な政策をしっかり提示していただきたい。安全保障やエネルギー分野も、憲法改正も責任ある対応をお願いしたい。憲法改正案の起案の動きがあれば国会の委員会を全てとめるというような発言もあった。極めて無責任な対応ではないか。憲法審査会は13年間議論しても起案にたどり着かない。先週、与党筆頭幹事が起案について具体的な骨子を示した。あす(20日)は衆院憲法審査会の定例日だ。具体的な改正の起案について議論を始めるよう協力をお願いしたい」
泉氏「われわれはずっと憲法の審議に応じ、真摯にやっている。論点があるのに、すっ飛ばして何をするのか。議論するのは当たり前だ。一つ一つ国会のルールの中で議論していく。政治資金規正法改正が結果だというならば落第点だ。首相は『私自身の責任については国民に判断いただく』と言った。判断のときが来ているのではないか。衆院を解散し、国民に信を問おうではないか」
首相「憲法について議論しているというが、具体的な条文の議論を行うならば委員会をとめると言っていた。今後、そういうことを言わないと答えていただきたい。規正法改正で終わったとは考えていない。さまざまな課題に取り組み、結果を出していくことに専念していかなければならない。これが今の私の立場だ」
泉氏「われわれは現実路線で政権運営をしていきたい。外交も安全保障も経済もだ。裏金体質を抱えている政治よりも、国民にとって誠実な政治が必ずできると確信している。ぜひとも政権交代をさせていただきたい。そのためにも解散しようではないか」
維新・馬場代表
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日本維新の会馬場伸幸代表「政治とカネの問題で維新に対し自民から協議をしてくれないかという話があり、10項目の改正案を出したのに蹴られた。時間が流れ、5月29日に首相の指示でどなたかから維新の遠藤敬国対委員長に電話があり、私と首相で3項目の合意文書を交わした。文書を作ろうと言ったのは維新か、自民か」
首相「結果として両党関係者が合意した」
馬場氏「政治資金規正法も旧文書通信交通滞在費(調査研究広報滞在費)もこれから改革していかなければならない。協議を拒否するものではない。ただ、本気でやるならば(23日までの国会の)会期を延長したらいい。憲法改正の話だが、議論は煮詰まってきている。憲法改正をやるか、やらないかだ。見ていると『やるやる詐欺』だ。国民は岸田内閣を『何もやら内閣』と言っている。なぜできないのか」
首相「旧文通費は馬場代表との合意で動かし、議論をスタートさせた。合意時点から(会期末まで)3週間余りしかなかったので、合意後に協議会を立ち上げ、有識者の話を聞き詳細を詰めることを考え、期限を明記しなかった。一刻も早く成立させたいとの思いは全く偽りない。会期延長は国会で決めることだが、議論を進めることに同意をいただきたい。憲法についても議論を続けて結果につなげていきたい」
馬場氏「『何もやら内閣』と言われている原因は首相のリーダーシップが欠けているからだ。岸田内閣は万策が尽きている。あす、あさってにも内閣総辞職をして首相を変えてほしい。責任を持って仕事ができる首相にバトンを渡してほしい」
首相「残された会期はわずかだが、条文の起案に向けて議論を進めることが大事だ。先送りできない課題に向け最善を尽くす。今先送りできない課題に専念し、結果を出すことに全力を挙げる」
共産・田村委員長
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田村智子氏
共産党・田村智子委員長「夫婦同姓か別姓かを選択できず、同姓を強制されることで女性が個人の尊厳を傷つけられ、不利益をこうむっている。これが事実だという認識があるか」
首相「不利益があるということは重く受け止めている。ただ、この問題はさまざまな角度から議論する必要がある」
田村氏「選択的夫婦別姓の議論で、家族の一体感に関わる問題を指摘すること自体が特定の価値観の押しつけだ」
首相「一定の価値観に基づき判断していることはない」
国民民主・玉木代表
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国民民主党玉木雄一郎代表「首相は四面楚歌だ。なぜこういう事態に陥ったのか」
首相「四面楚歌だとは感じていない。当然、批判は出てくるが、やるべきことはやる。これが政治家の責任だ」
玉木氏「四面楚歌の理由はトップが責任を取らないからだ。今やらなければいけないことは首相が潔く職を辞し、責任をしっかり果たすことだ」
首相「先送りできない課題が山積する中、経済も安全保障もエネルギーもあらゆる課題で結論を出していく強い覚悟で臨む」