「四月朔日」で「つぼみ」(2024年4月1日『山陰中央新報』-「明窓」

   

つぼみがほころび始めた松江城山公園の桜=3月31日午後1時45分、松江市殿町

 年度替わりにクイズを一つ。日付の「四月一日」と書く名字がある。さて、何と読むのか。正解は「わたぬき」。エープリルフールの冗談ではない。暖かくなってきた旧暦の4月1日に冬服から「綿を抜く」衣替えの習慣から名付けられた。季節感あふれる、何とも小粋な難読名字だ

▼毎月の第1日を指す「朔日(さくじつ)」を使った「四月朔日」という名字も、同じ由来で「わたぬき」と読む。姓氏研究家の森岡浩さんの著書によると「つぼみ」という読み方もあるそうだ。ちょうど春が訪れ、花のつぼみが膨らみ始める時期だから

▼きょう4月1日は、山陰両県の多くの企業でも入社式が行われる。松江城山公園の桜はつぼみがほころび、今週末に満開を迎えそうだ。ただ新入社員が職場で一人前になって大輪の花を咲かせるのは、まだ先のこと。当面はつぼみの状態か

▼三十数年前のわが身を顧みると、上司や先輩に迷惑をかけた記憶しかない。「自分は向いていないのかな」。そんな不安や悩みを同期の仲間と支え合いながら乗り越えた。偉そうに言えないのでテレビで見た、ある経営者の金言を紹介する

▼「失敗を恐れずチャレンジしてほしい。人生は成功より失敗する数の方が圧倒的に多いですが、失敗から多くのことを学べます」。昨年のキリンホールディングスの入社式で磯崎功典社長(現会長)が述べた訓示。焦らず、つぼみを徐々に膨らませればいい。(健)