政府の地震調査研究推進本部(地震本部)は、全国の地震の発生確率や地震の規模を予測した「長期評価」で公表している。この長期評価と、発生確率などを地図に落とし込んだ「全国地震動予測地図」は、行政が優先的に防災に取り組む地域を選定する上での指標になっている。
しかし、ここに大きな落とし穴がある。それは危険度を比べる指標にもかかわらず評価が一律ではないことだ。南海トラフ地震の確率は30年以内に「70~80%」だが、この数値は防災予算獲得などの理由から他とは違う特別な計算式で「水増し」されたものだ。この影響は予測地図にも反映されており南海トラフ沿いは危険を示す「紫色」で塗りつぶされている。
低確率の県はそれを「安全情報」として受け取る問題もある。石川県は大部分が0.1%~3%と評価され、予測地図の色は低確率を示す「黄色」だった。同県はホームページに予測地図を引用し、「地震リスクは小さい」などとして企業誘致を進めていた。
能登半島地震の震源は海域の活断層だとみられるが、地震本部はこの活断層を把握しながら、その存在を国民に伝えていなかった。理由は、長らく長期評価の対象は陸域の活断層で海域は7年前に調査が始まったため、評価が間に合わなかったことにある。