「お体に気をつけて」。二重被災し、再び避難所で冬を迎えている能登の被災者を、温かな言葉が元気づけた。17日、奥能登豪雨で大きな被害を受けた輪島市を訪ねられた天皇、皇后両陛下。奥能登訪問は今年3度目と、異例の頻度となる。穏やかな笑みを顔にたたえて話を聴くお二人の姿に、疲弊した住民たちは「本当にありがたい」と感謝の言葉を口にした。
避難所となっている輪島市輪島中の体育館で両陛下は、約30人の被災者と対面し、言葉を交わした。
「温かみのあるお声とまなざしで言葉をかけていただいて、本当に元気をいただいた」。吉岡久美子さん(70)が振り返る。輪島市鳳至町の自宅は、元日の地震で全壊。その後入居した宅田町の仮設住宅は9月の豪雨で床上浸水し、また避難所に戻った。
両陛下に今の気持ちを尋ねられ「ぽかんと気持ちに穴があいたような感じ」と率直に答えた。すると「お体大事にしてくださいね、寒くなりますから」と励ましの言葉をかけられたという。
市中泰雄さん(86)は、豪雨で胸の辺りまで水につかった体験を、両陛下に語った。「お二人とも優しい目をしていた。頑張る、っていう気持ちになった」と話した。
●署員の健康気遣う
輪島市役所で両陛下と対面した遠藤英之輪島署長は、天皇陛下から「いろいろと大変でしたね」とねぎらいの言葉をかけられた。署員が仮設住宅の住民を背負って安全な場所へ避難させたことなどを説明。「泥水を飲んだり、後で高熱が出たりした署員もいた」と話すと、天皇陛下は署員の健康を気遣う質問を発した。
遠藤署長と同じ場で、航空自衛隊輪島分屯基地の岡英樹司令と奥能登広域圏事務組合消防本部の平岡広消防長もねぎらいの言葉を受けた。3人との別れ際には皇后陛下があらためて「お体を大切に」と、いたわるように語りかけた。
岡司令は「一言一言が身に染みる言葉だった。部下のみんなに伝えたい」、平岡消防長は「優しく話しかけていただき、熱心に聞いていただいた」と感謝の思いをかみしめた。