国民玉木氏が「不倫問題」で3カ月役職停止の裏側…賛否交錯、来夏「政治決戦」で国民民主の浮沈に直結(2024年12月7日『東洋経済オンライン』) 

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(写真:© 2024 Bloomberg Finance LP)
 国民民主党が4日の両院議員総会で、元グラビアアイドルとの不倫問題が発覚した玉木雄一郎代表について、「役職停止3か月」とすることを全会一致で決定したことが、政界に複雑な波紋を広げている。
 「103万円の壁」引き上げなどを巡り、与党の自民・公明両党との税制改正協議が大詰めを迎える中、“主役”のはずの玉木氏の「謹慎」処分について、国民民主党内から「今後の与党との交渉力や発信力の低下」(幹部)を不安視する声が出る一方、他野党からも「『宙釣り国会』での与野党攻防の迷走を加速させかねない」との厳しい指摘が相次ぐからだ。
 玉木氏は「(不倫は)夫婦間の問題」と政治活動との切り離しを訴えるが、過去に「不倫」が発覚した国会議員の多くが、議員辞職などに追い込まれたのも事実。それだけに、国民民主内からも「本来なら、議員辞職に値する事態」(女性幹部)との厳しい指摘が出るなど、今回の3カ月後の代表復帰を前提とした「処分」を疑問視する声も少なくない。
 しかも、玉木氏の代表復帰のタイミングを巡り「来年の3月3日は、ちょうど通常国会での来年度予算案の衆院通過で与野党攻防が大詰めを迎える時で、政治的意図がミエミエ」(政治ジャーナリスト)との臆測も広がる。このため、中央政界では「玉木氏の処分に対する国民の反応次第で、来夏の政治決戦での国民民主の浮沈が決まる」(自民長老)との見方が支配的だ。
■職務代行の古川氏は、玉木氏より“格上”
 今回の玉木氏の「処分」を受け、同氏の代表復帰までは、古川元久代表代行(元国家戦略担当相)が代表の職務を務める。古川氏は玉木氏と同じ旧大蔵省(現財務省)のキャリア官僚出身で、同省入省は玉木氏の5期先輩。加えて、旧民主党政権では国家戦略担当相など要職を歴任しており「経歴をみれば明らかに玉木氏より格上」(政治ジャーナリスト)だ。
 それだけに、国民民主党内からも「古川氏は今後、玉木氏に相談しないで対与党協議を進める構えだ」(同党政調幹部)との声が相次ぐ。
 玉木氏自身は処分後に「『年収103万円の壁』見直しなどの交渉に影響が出ないよう、(一議員として)バックアップしていきたい」と語ったが、同じ大蔵官僚出身の宮沢洋一税制調査会会長ら自民党側は「玉木氏が表舞台から去ったことで状況が変わった。これからは古川氏の出方を見極めて対応するしかない」(自民税調幹部)と身構えており、「交渉が円滑に進むかどうかは、古川氏の対応次第」(政治ジャーナリスト)となりそうだ。
■自民・広瀬氏は不倫の果てに議員辞職
 そうした中、インターネットも含めて多くのメディアが注目するのが、過去に不倫を含む不適切な男女関係が発覚した多くの与野党国会議員たちの「身の処し方」だ。具体的には議員辞職や離党、政務官辞任、口頭注意などケジメの付け方は多岐にわたるが、今回の玉木氏への処分の適否は、「最終的には国民がどう受け止めるかによって決まる」とみられている。 
 そうした中、今年もいわゆる「文春砲」や「新潮砲」など週刊誌の“餌食”となった国会議員は枚挙にいとまがない。その中で、話題満載で地上波テレビでの情報番組などが大きく取り上げたのが広瀬めぐみ・元自民党参院議員のケースだ。
 広瀬氏は2022年参院選で1人区の岩手選挙区で初当選した。同選挙区は過去に「政界の最高実力者」と呼ばれた小沢一郎衆院議員(立憲民主党所属)の地元で、広瀬氏は30年ぶりの自民党当選者で、同区初の自民党女性議員ともなったことで話題になった人物でもある。
 その広瀬氏の不倫疑惑が発覚したのは今年2月末。『週刊新潮』電子版が国会開会中における広瀬氏の不倫行為を報道し、広瀬氏はまず3月5日に自民党県連副会長を辞任した。しかし、「新潮砲」はこれで終わらず、3月19日には「広瀬氏の元公設第二秘書に勤務実態がなかった疑いがある」と追撃。これを踏まえて7月に東京地検特捜部が強制捜査の末に「詐欺罪」で立件し、広瀬氏は自民党を離党した上で、議員辞職した。
 また、自民裏金事件を巡る「内部告発」で話題となった宮澤博行元衆院議員は、今年4月にいわゆる「パパ活」疑惑として女性問題が報じられた際、自ら疑惑を認めて自民党を離党した上で議員辞職した。
 
 その一方で、疑惑を認めながらも政府や党の役職を辞任しただけで済ませた議員もあり、永田町では「当該議員の対応は、メディアが大きく取り上げるかどうかで決まる」(政治ジャーナリスト)との見方が支配的だ。
 
■「人の噂も75日」の代表復帰が大きなダメージに? 
 そこで玉木氏のケースをみると①メディアが大きく取り上げた②本人も事実関係を認め、謝罪した③党代表という重要な職務には「3カ月の停職をへて復帰」ーーという経過をたどっているのが特徴だ。ただ、政界関係者の間では「まさに『人の噂も75日』を地で行くもので、いずれ話題にならなくなるはずという狡猾な判断」(同)との厳しい指摘も少なくない。加えて、不倫相手とされる元グラビアアイドルのタレントは、玉木氏の地元香川県で「高松市観光大使」として活躍していた女性で、同市も今後の処遇に苦慮しているとされる。
 そうした事情から、「玉木氏の不倫問題は、今回の処分だけでは収束せず、『103万円の壁』引き上げが円満決着したとしても、年明け以降も政治家としての出処進退が問われ続けることは間違いない」(自民長老)との見方が支配的。
 その結果「玉木氏の言動や国民民主の対応の適否も含め、次期国政選挙での同党の命運を左右する可能性」(選挙アナリスト)も大きく、政界関係者も「“玉木党”と呼ばれる国民民主にとって、党のシンボルの不倫事件の代償の大きさは計りしれない」(政治ジャーナリスト)というのが実態とみられている。
泉 宏 :政治ジャーナリスト