斎藤知事と折田社長
兵庫県の斎藤元彦知事が再選された出直し知事選で、公職選挙法違反の買収とされる有償でのSNS選挙広報を担ったとPR会社社長が“告白”した問題で、斎藤氏側が「ボランティアでやってもらっただけ」との主張を強めている。タダ働きを受け入れた、との構図になれば、PR会社社長だけが自社社員を選挙に動員したとして「運動員買収」に問われる可能性もある。果たして社長はこのまま黙っているのか――。
折田氏が買収された構図で立件されれば斎藤氏は買収者とみなされ…
折田氏はnoteで、自分が斎藤陣営の4つのSNS公式アカウントの管理、監修を含む広報の「運用戦略立案」を行なったと表明。
「そのような仕事を兵庫県にある会社が手掛けたということもアピールしておきたい」とも書き、ボランティアではなくプロとして請け負った業務だったという趣旨の説明をしている。
公選法ではネットの選挙運動が有償で行われれば買収となり、候補者本人や陣営幹部が買収をしたと認められれば当選は無効になる。
折田氏は、今回の“仕事”が違法だとの認識がないまま、社業をアピールする目的でnoteを書いたのではないかと指摘されている。
在阪の記者はこう話す。
「選挙前の9月29日に斎藤氏本人は選挙参謀を伴ってmerchuを訪問しています。その場で折田氏から『SNSの利用』を含む斎藤氏の選挙に協力できることについて説明を受けたことは斎藤氏の代理人・奥見司弁護士が11月27日の会見で認めました。折田氏のnoteにその時の写真が掲載されていたためでしょう。
この状況でもし折田氏が買収された構図で立件されれば、斎藤氏は買収者とみなされ、当選無効の可能性が出てきます。
斎藤陣営は『ポスターデザイン制作』などの名目で計71万5000円をmerchuに支払ったとしています。この金が少しでもSNS広報の対価であればアウトです。なので、斎藤氏は『折田氏やmerchuは選挙に協力したが、ポスター制作など有償でも法に触れないものは有償で行い、SNS関連はボランティアだった』と主張しているのです」(在阪記者)
SNSを駆使したPRという、会社の“本業”だけは無償で自発的にやってもらった、と斎藤氏側は言っているわけだ。
そこで強調するのは「認識の齟齬」という概念だ。会見で奥見弁護士はこう述べた。
「(折田氏の)noteの書きぶりを見ると、あたかも仕事として請け負ったように書いておりますけども、斎藤氏または斎藤陣営からしたら、折田氏の個人の活動については依頼したりやってもらったという認識はございません。あくまで個人として動いていただいたと認識しております。そこで認識の違いはございます」
相手は仕事と思っていたかもしれないが、頼んだわけでなく、勝手にやってただけだ、との主張である。
斎藤氏の誕生日にプレゼントが殺到…
「merchuは広島県などからもPR事業を請け負ってきた会社です。社長の折田氏は選挙期間中YouTubeで『人生過去一忙しい』『(知事選で)広報全般を任せていただいておりまして』と発言しています。これほどの労務の提供が全部タダだった、というのはかなり苦しい気がしますね」
そう話す地元記者は「でも、よく考えたら斎藤氏が前期に知事を失職した遠因には、視察先での過剰な“おねだり”が問題化したこともあったくらいですからね」と続ける。
その言葉通り、県議会の調査特別委員会(百条委)が7、8月に行った県職員のアンケートでは、斎藤氏が視察時、業者や生産者組合が用意した特産品を同行者の分まで持ち帰ったとする証言が多く寄せられた。(“おねだり疑惑”について斎藤氏は否定)。
一方、知事選中は斎藤氏フィーバーともいえる人気の中で、おねだりではなくプレゼントを巡って騒ぎも起きていた。陣営関係者が話す。
「投票2日前の11月15日は斎藤さんの47歳の誕生日で、前日くらいから女性を中心に花やプレゼントの攻勢がすごくなったんです。
誕生日当日の夜は姫路での演説でしたが、規模が千人を超えるほど大きくなり、有権者の輪に入って握手をして回る斎藤さんにも次々とプレゼントが押し寄せました。
その時、選挙カーから女性運動員がマイクで『法律の関係もあるのでプレゼントは控えてくださるようお願いします』と呼び掛けたんですね。それを聞くなり、車のそばにいた別の運動員の男性が『よけいなこと言うな』と車内に向かって怒鳴って、女性運動員を黙らせちゃったんです。
怒鳴り声は響き渡って、私も含め車の周囲にいた者はドン引きでした。「スタッフの多くは選挙未経験の“素人集団”なので“『もらえるものはもらっとけ』っていう感覚もあったんでしょう」(陣営関係者)
候補者へのプレゼントは選管に届けるなどすればほとんどのものは認められる。
ただ、別の陣営関係者は「選挙ではその前から、手紙に始まりいろんな贈り物が斎藤さんに渡されていました。ありがたいんですけれど、安全面もあるし、原則的にはお断りしようと事務所内で話が回っていました。姫路での演説会は暗かった上に逮捕者も出るなど混乱したので、事前の申し合わせ通り贈り物は辞退すると呼びかけただけ。なんで怒鳴る必要があったんですかね」と指摘する。
「今後の展開によれば名誉毀損等の問題はあるのかもしれません」
こうした環境もあり、SNS広報も当然全部無償提供だった、との主張を斎藤氏側は貫く方針とみられる。だがそうなると、折田氏は一人で罪をかぶりかねない状況になる。
斎藤陣営のSNSには、merchu社員と思しき数人が斎藤氏と演説会場で撮った記念写真がたびたびアップされているほか、SNS発信作業にも社員が関わっていたとみられる。折田氏自身、SNSを含む広報の運用全般を「信頼できる少数精鋭のチームで協力しながら行なった』と書いているのだ。
「この社員の扱いが問題になってきます。SNS広報が無償で行われたことになり、なおかつこの作業に関わった社員に選挙期間中給与が支払われていた場合、雇用主の折田氏は、公選法の『運動員買収』に当たる可能性が出てきます」(社会部デスク)
noteの内容が買収の“自白”だとの声が沸き上がると、内容は削除・改変されたが、当初の記述内容についての説明を求める声には折田氏は沈黙したままた。
斎藤氏の代理人の奥見弁護士は11月27日の会見で「今後の展開によれば(折田氏による)名誉毀損等の問題はあるのかもしれません」と発言。noteの記載内容は虚偽で、SNS広報は無償で行なったと表明しなければ折田氏を訴えることも考えると圧力をかけた。
斎藤氏当選の大きな力となったSNS広報は仕事だったのか奉仕だったのか。折田氏の説明を望む声は日増しに高まっている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
折田楓氏へのバッシングが「過熱しすぎている」ワケ。キラキラ女子を叩きたい“欲望”の恐ろしさ(2024年11月30日『女子SPA!』)
画像:折田楓 公式Instagramより
11月17日に投開票された兵庫県知事選挙において斎藤元彦氏の選挙活動を支援した、PR会社「merchu」の代表・折田楓氏が注目を集めている。
キラキラを通り越して“チカチカ”の折田楓氏のInstagram
XやInstagramなどの複数のSNSを巧みに使いこなし、政策の発信や斎藤氏の人柄を伝える施策も功を奏したのか彼を当選に導いた。ただ、注目されているのはその手腕ではない。選挙活動のサポートにおいて報酬が発生していた可能性が囁かれ、公職選挙法に抵触している疑いがあるためだ。
疑いを向けられたきっかけは、メディアプラットフォーム「note」における11月20日の折田氏の投稿である。現在は一部修正されているが、公開時の記事内では折田氏から斎藤氏へのSNS戦略のプレゼンの様子、応援用のSNSアカウントの作成についてなど、さまざまな「広報の業務内容」が詳細に記されていた。言ってしまえば自爆だ。わざわざnoteを公開しなければ、もしかしたら公職選挙法違反の疑いをかけられなかったかもしれない。
折田楓氏はキラキラを通り越して“チカチカ”女子
折田氏のインスタアカウントには、高級ホテルに泊まった報告、有名人とのツーショット、リゾート地でお子さんと接している光景など、いずれもキラキラした写真ばかり。“ワンランク”も“ツーランク”も上な女性の日常が余すことなく映し出されている。
加えて、折田氏自身はエルメスのバーキンやヴィトン、ヴァンクリといったハイブランドのアイテムを身につけており、キラキラを通り越してもはやチカチカだ。こういったチカチカする投稿から折田氏の自己顕示欲への指摘は相次ぎ、その高すぎる自己顕示欲を制御できずに公職選挙法抵触の“尻尾”を自ら出してしまったと予想する人は少なくない。
間違いなく才女な折田氏、キャリアは誰も否定できない
公職選挙法に違反しているのであればそれは大問題だ。そもそも、今回の兵庫県知事選挙の開催には、斎藤氏のパワハラ問題などが背景にある。“いわくつき”の斎藤氏を支持して、法に背いて当選を手助けしたのであれば、その罪はかなり重い。
とはいえ、「公職選挙法違反では?」という疑問は一旦置いておいて、折田楓氏というここ数週間で突如注目された“逸材”について掘り下げたい。
折田氏は慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)に通い、在学中にフランスの一流ビジネススクール・ESSECに留学。卒業後は初任給600万円と噂されるフランスの大手銀行・BNPパリバに就職する。そこで経営の基礎を学んだ後、2017年に「merchu」を設立した。
その私生活のチカチカさをより明るく照らすほどの輝かしい経歴・実績を持つ折田氏。もはや容姿端麗、才色兼備という言葉では収まらない。実際、バッシングばかりではなく、折田氏の容姿や実績を賞賛する声も散見される。今回は公職選挙法違反という犯罪に手を染めてしまった可能性もうかがえるが、折田氏のキャリアのすごさは誰にも否定できない。
過熱しすぎている折田氏バッシングの背景
最近はSNSもテレビも折田氏の話題で持ちきりだ。開票前から全国的な関心を集めていた兵庫県知事選で公職選挙法違反の可能性が浮上したのだから、その“渦中”の折田氏が注目されるのは当然と言えば当然。ただ、折田バッシングの内訳は公職選挙法違反に関するものばかりではない。折田氏がキラキラしすぎていたがために、よりバッシングが過熱しているように見える。
ここ最近、“陽キャ”を馬鹿にする傾向は根強い。数年前から、“インスタ映え”する写真を撮影するため、映えスポットや人気飲食店に長蛇の列を作るような女性を揶揄(やゆ)する人は少なくなかった。現在も「キラキラ女子は叩いても良い」という歪んだ認識が広まっていることが、折田氏バッシングを加速させているように思う。
折田氏がこの暴風雨レベルの向かい風に対してどのようなアクションを見せるのか、今後に注目したい。
<文/浅村サルディ>
【浅村サルディ】
芸能ネタ、炎上ネタが主食。好きなホルモンはマキシマム ザ ホルモン。
ハイヒール・リンゴ(63)が進行する読売テレビ「あさパラS」(土曜午前9時25分=関西ローカル)が30日、放送され、弁護士の三輪記子氏(48)や元厚労相官僚で神戸学院大学教授の中野雅至氏(60)が出演。斎藤元彦知事が再選された兵庫県知事選での広報やSNS戦略をめぐり、公職選挙法に抵触する可能性が浮上している問題についてコメントした。
三輪氏は「社長が無償だったとしても、従業員を動員して。それで、従業員が本当にただ働きなのかどうかって(いう問題が)出てきますよね」と指摘。加えて「連座制が適用されると、当選そのものが無効になってしまう可能性もゼロではないんですよね。もし、当選後に仕事の提供があると、場合によって贈収賄にあたる可能性もあります」と見解を示した。
中野氏は、その理由を「今出てる物的証拠はそれ(ポスター制作)だけなんで、問題はそれ以外、証拠が出てるかどうかで、おそらく公職選挙法違反であれば、捜査当局動きますから。証拠隠滅が怖いから、早めに動くと思うんですよ。で、それがどこまで証拠を集めてるか。ただ、僕は目立った警察の動きを聞かないから」と続けた。
捜査当局が積極的に動いている気配がないと指摘し、さらに根拠を続けた。
「なぜ聞かないかっていうと、数十億かけてやっている選挙。この手のもので1回1回やり直したら、民主主義のコストが膨大すぎる。僕はそんな悪質なものだと思わない。ある意味、騒ぎすぎてるような気。それよりも、百条委員会の方がはるかに重要だと」
実際、SNS運用をめぐっては「確かに、あいまいな点はいっぱいある」としつつも「民主主義のコストがかかりすぎるので、僕はちょっとこれ、やりすぎかなって」と繰り返していた。