名古屋市長選と兵庫県知事選では、与野党の相乗り候補がいずれも敗北した。7月の東京都知事選に続き、X(旧ツイッター)などSNSが選挙戦に大きな影響を与えたとも指摘されるが、既成政党に対する不信も無視し得ないほど高まっているのではないか。
各政党は有権者の声に誠実に耳を傾け、これまでの党の体質や振る舞いを厳しく自問し、再生を図らなければならない。
24日の名古屋市長選は、無所属新人の広沢一郎元副市長(60)が制し、自民、立憲民主、国民民主、公明各党推薦の大塚耕平前参院議員(65)は敗北した。
17日の兵庫県知事選でも無所属の前職、斎藤元彦氏(47)が自民の一部や公明、立民の県組織などが支持した稲村和美元尼崎市長(52)らを破って再選を果たした。
二つの首長選はいずれも、前市長の後継者や失職した前知事に与野党相乗り候補が挑む構図。手厚い支援態勢で当初は優勢が伝えられたが、突き放された形だ。
首長選の有力候補が主要政党の相乗りとなるのは、当選へ幅広い支援態勢を整えるとともに、当選後には首長と自治体議会との良好な関係を築くためなのだろう。
しかし、そうした相乗りは、既成勢力が既得権益を守ることが狙い、との厳しい批判にさらされ始めている。特にSNSにより、そうした指摘は拡散され、有効に反論できていない状況にある。
もちろん虚偽情報の拡散には法的措置を含めて厳しく対応する必要はあるが、与野党相乗り候補敗北に「既存政党への不信もある」(公明党の斉藤鉄夫代表)とは妥当な見方だ。政党を含む既成勢力がSNSに責任転嫁するだけでは有権者の負託に応えられまい。
10月の衆院選で自公両党惨敗の背景には自民党派閥の裏金事件に代表される「政治とカネ」に対する有権者の厳しい視線があるが、企業・団体献金の維持を前提とする同党内の議論を見る限り、真剣に反省しているとは言い難い。
少数与党となった自公両党だけでなく、各党ともに自治体選挙での敗北を厳しく受け止めなければ政党不信の払拭は難しい。