野球「プレミア12」日本代表 決勝で台湾に敗れ連覇ならず(2024年11月25日『NHKニュース』)

野球の国際大会「プレミア12」で日本は24日夜に行われた決勝で台湾に0対4で敗れ、2大会連続の優勝はなりませんでした。

日本は、世界ランキング上位の12の国と地域が出場した「プレミア12」で1次リーグのグループBを5戦全勝し、東京ドームで行われた2次リーグでも3連勝で1位通過して、24日夜の決勝で今大会3回目となる台湾との試合に臨みました。

日本は今シーズン、セ・リーグ最多奪三振のタイトルを獲得した戸郷翔征投手が先発し、4回まで5つの三振を奪い無失点と上々の立ち上がりを見せました。

一方、打線は、先発予定だったきのうの日本戦の登板を急きょ回避し、決勝に温存された台湾の先発、林※ユーミン投手に4回まで内野安打1本に押さえ込まれ、中盤まで投手戦となりました。

※「日」の下に「立」と「王」へんに「民」

5回、戸郷投手は台湾の先頭バッターに甘く入ったストレートをライトスタンドに運ばれ、1点を先制されました。

さらに、ランナーを2人置いて3番の陳傑憲選手にスリーランホームランを打たれ、リードを4点に広げられました。

追う展開となった日本は、そのウラの攻撃で台湾の2人目から2アウト一塁二塁のチャンスを作りましたが、2番の小園海斗選手がファーストゴロに倒れ、無得点に終わりました。

日本はその後、台湾の投手陣に6回から9回までヒットわずか1本に抑えられ今大会好調だった打線が最後まで得点できませんでした。

日本は0対4で完封負けを喫し、2大会連続の優勝はなりませんでした。

井端監督「負けはすべて私の責任」 

井端監督は試合直後のインタビューで「選手は非常によくやってくれた。大会を通じて技術も上がったと思うし、精神的にも肉体的にも強くなったと思うので、来シーズン以降楽しみにしたい。負けたのはすべて私の責任です」と淡々と話しました。

相手の台湾の印象については「出てくるピッチャーは力があったし、どのピッチャーもすばらしくてなかなか打つことができなかった。打線も力強くすばらしいチームだったと思う」とたたえました。

そのうえで「最後に勝たせられなかったのは私の責任だと思う。これだけ過酷なスケジュールの中で選手はよくやってくれたので選手たちに感謝したい。自信をつけた選手もいると思うし、さらに成長してくれるとうれしい」と話していました。

戸郷投手「世界大会の借りは世界大会で返す」

決勝の先発マウンドを任された戸郷翔征投手は、5回に2本のホームランを打たれ4失点で負け投手となり「僕の中ではいい球ではあったがホームランにされるところは実力不足だ。優勝する気でいたし、世界一になりたいという思いで井端監督に話をいただいたので裏切る形になってしまい申し訳ない」と振り返りました。

その上で「次のWBCワールド・ベースボール・クラシックにも選ばれるように世界大会の借りは世界大会でしか返せないと思うので、まだまだ精進したい」と前を向いていました。

牧選手「強いジャパンを作りあげていくしかない」

2次リーグの第2戦で決勝の満塁ホームランを打つなど打線の軸として活躍した牧秀悟選手は、若手も多く選出される中臨んだ大会について「初めてメンバーに選ばれる選手もいれば今まで選ばれていた選手も混ざりながら、いろいろな経験ができたすばらしい大会だった」と振り返りました。

その上で、24日の決勝については「これまで自分たちの野球ができていたが、最後の最後に台湾の先発ピッチャーや中継ぎピッチャーが自分たちの野球をさせてくれなかった。勝たなくてはいけないところで負けてしまったので課題は多いと思うし、次につなげないといけない」と冷静に話していました。

今後については「強いジャパンを作りあげていくしかないし、また選ばれるように頑張りたい。次の大会に向けて個人個人レベルアップしたい」と話していました。

源田選手「次の大会で悔しさを晴らしたい」

2019年の前回大会で優勝を経験している西武の源田壮亮選手は連覇を逃した心境について「宮崎での合宿からみんなでこの日のために頑張ってきたが勝てなかったので悔しい。ただ、精いっぱいやった結果なので受け止めたい」と絞り出すように話していました。

今大会では13人の選手が初めて国際大会を経験できた点に触れて「今回、日本代表のユニフォームを初めて着た選手がまた着たいと思うだろうし自分も改めて思った。次の大会で悔しさを晴らしたいし全員で日本の野球をレベルアップさせて次は優勝を狙いたい」と前を向いていました。

日本 国際大会で5年ぶりの黒星 連勝は「27」で止まる 

野球の国際大会、「プレミア12」の決勝で敗れて大会連覇を逃した日本は2019年から続いていた国際大会での連勝が「27」で止まりました。

日本の国際大会での連勝が始まったのは、2019年に行われた「プレミア12」の前回大会の2次リーグ、第3戦のメキシコ戦からです。

稲葉篤紀監督率いる日本は2次リーグ第2戦のアメリカ戦に敗れましたが、第3戦のメキシコ、第4戦の韓国に勝って、1位で突破すると決勝で再び韓国に勝って3連勝で大会初優勝を果たしました。

続く2021年の東京オリンピックでも日本は予選リーグを2連勝で通過すると準々決勝のアメリカ戦でサヨナラ勝ちし、準決勝は韓国に、決勝では敗者復活戦から勝ち上がったアメリカに競り勝ち、5連勝で金メダルを獲得し稲葉監督はプレミア12から「8」連勝で退任しました。

その後、栗山英樹監督があとを継ぎ、2023年のWBCワールド・ベースボール・クラシックでは1次ラウンドを4連勝で突破し、準々決勝のイタリア戦、準決勝のメキシコ戦、そして決勝でアメリカに勝利し7連勝で世界一に輝きました。

これで「15」連勝となりました。

さらに栗山監督の後任の井端監督は去年2023年、初陣となった若手選手中心のメンバーで戦う「アジアプロ野球チャンピオンシップ」で予選リーグから決勝まで負けなしの4連勝で大会2連覇を果たし、連勝を「19」に伸ばしました。

そして、今回の「プレミア12」でも1次リーグから8戦全勝で決勝に進み、国際大会での連勝を「27」まで伸ばしましたが、決勝で台湾に敗れて実に国際大会で5年ぶりの黒星を喫し、連勝が止まりました。

表彰式の様子は…

試合後には表彰式が行われ、野球の主要な国際大会で初優勝を果たした台湾の選手たちが歓喜に沸いた一方で、大会連覇を逃した日本の選手たちは終始厳しい表情でした。

大会打率が6割2分5厘と驚異的な結果を残し、決勝ではスリーランホームランを含む3安打3打点の活躍で大会のMVP=最優秀選手に選ばれた台湾の陳傑憲選手は、試合直後に涙を流しながらチームメートたちと何度も抱擁していました。

決勝には4万1827人のファンが訪れ、表彰式の最後に陳選手が優勝トロフィーを頭上に掲げるとスタンドから大きな歓声が沸いていました。

一方、敗れた日本の選手たちは一塁側のファウルゾーンに一列になって並び、厳しい表情で台湾チームの様子を見つめていました。

選手たちには銀メダルが贈られましたが、中には表彰台から降りると首から外してユニフォームのポケットに入れる選手の姿も見られ、1次リーグと2次リーグでともに勝っていた相手に最後に敗れた悔しさをにじませました。

課題と収穫

今大会、それぞれの選手に経験を積ませようと意図を持った起用を続けてきた井端監督は、最後に敗れて「育成を進めながらの優勝」という結果を手にすることはできませんでしたが、着実に成果も残した大会となりました。

【初選出組 貴重な経験の場に】

大リーグで活躍する主力選手が出場しない今大会、井端監督は国際舞台を踏んでいない13人を選出したほか、選手にこれまでとは違う役割を与え、経験を積ませるチャンスだと捉えていました。

「日本が長く世界一であり続けるには若い選手が出てこなくてはいけない」。

2年後のWBCやさらにその2年後のロサンゼルスオリンピックを見据えたとき、継続的な育成が必要だと考えたからです。

大会に入ると重要な初戦に初選出の23歳、井上温大投手を先発させるなど大会を通して初出場組の13人全員を起用しました。

このうち野手の7人は全員がヒットを打つなど、経験を積ませることができた点はひとつの成果です。

また、井端監督はWBCでリリーフ経験のある高橋宏斗投手や戸郷翔征投手にはリリーフではなく重要な試合で先発を託しました。

さらに経験値を上げてもらうのがねらいで、このうち戸郷投手は重圧のかかる決勝のマウンドで5回4失点と結果を残せませんでしたが、今後の成長に向けた糧とすることが期待されます。

【打では積極性の意識が浸透】

決勝では完封負けと苦しんだ日本でしたが、大会全体を見ると打線が活発で井端監督が選手たちに求めた打席での「積極性」が浸透した大会でもありました。

国際大会では、次々と初対戦のピッチャーがつぎ込まれるため、積極的なスイングをしながらその打席の中で適応していく意識を徹底させました。

選手たちは井端監督のことばどおり初対戦のピッチャーに対しても甘い球を積極的に振りにいく姿勢をみせ、今大会のチーム打率は3割に迫る2割9分8厘をマークし、決勝以外は切れ目なくつないで得点し、主導権を握る試合運びが続きました。

世界トップレベルのピッチャーとの対戦はなかったものの、優勝時した前回大会では2割6分5厘だったことを踏まえると、井端監督の意識づけが一定の成果となってあらわれた形です。

【投手陣は課題も】

一方、投手陣は課題も残しました。今大会では先発投手のあとを受けた2人目、3人目のピッチャーが9試合中8試合で失点していて、所属チームでは先発を務めるピッチャーの順応や投手リレーのタイミングの難しさも浮き彫りとなりました。

これについて井端監督は「先発が6回まで持たず、中継ぎを前倒ししていく形になって持たなかった。シーズンが終わったあとの大会ということで、起用の難しさはあった」とシーズン後に行われる大会ならではの厳しさにも触れながら話していました。

それでも試合後の会見では選手たちに対し「この結果をレギュラーシーズンに生かしてほしいし、今後の糧にしてほしい」と期待を込めて話し連覇がかかる2年後のWBCに向け、課題と収穫を手にして新たなスタートを切ります。