勤労感謝の日に関する社説・コラム(2024年11月23日) 

キャプチャ

勤労感謝の日 働きやすい環境づくりを(2024年11月23日『産経新聞』-「主張)
 
キャプチャ
混雑する中で通勤する人たち=東京都港区
 多くの人がさまざまな働き方で就労していることによって社会は成り立っている。そのことに感謝し、働く意義や労働環境を見つめ直す日にしたい。
 23日は勤労感謝の日である。昭和23年に施行された祝日法で「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう日」と定められている。
 新型コロナウイルス禍から経済が回復する過程で人手不足が深刻化するようになった。インバウンド(訪日外国人客)の急増などもこれに拍車をかけ、地方や中小企業を含め働く人の確保に苦労する時代となった。
 賃上げの動きは広がりつつあるものの、折からの物価高に追い付かず苦労している人も多いだろう。雇用環境の変化を踏まえつつ、自分に適した働き方を考えることが大切である。
 テレワークや、勤務時間などを従業員が決めるフレックスタイム制度などを導入する企業も増えている。それぞれの事情に即した多様な働き方を支える流れを着実に進展させていく必要がある。
 生産年齢人口が減少する中で女性や高齢者の就労が増えてきたことは望ましい。人手不足に対応するためにも、企業には働きやすい職場づくりへの取り組みをさらに強めてほしい。
 職場のハラスメントはもってのほかだ。セクハラやパワハラ、客による理不尽な要求や暴言などカスタマーハラスメント(カスハラ)の被害は働く意欲を喪失させる。周囲に困っている人はいないか、自分の言動が相手を傷つけていないか。絶えず目を配るよう心掛けたい。
 働きたくても働けない人もいる。そういう人たちが取り残されることのないよう家族や社会で支えることも重要である。
 日本人は古くから働くことを重んじてきた。「働」という字は中国伝来の漢字ではなく、日本で作られた国字(和製漢字)だ。時代や環境が変わろうとも働く喜びは持ち続けたい。
 勤労感謝の日は、かつて「新嘗祭(にいなめさい)」の祭日だった。天皇がその年の新穀を神々に捧(ささ)げ、自らも食する儀式が執り行われた。国民の勤労の成果を、天皇が神々に奉告したのである。
 新嘗祭(にいなめさい、にいなめのまつり、しんじょうさい)は現在も宮中で最重要の儀式であり、全国の神社でも神事が催される。勤労をたっとび、感謝し合う日であることは今も昔も変わらない。

働ける毎日に感謝(2024年11月23日『佐賀新聞』-「有明抄」
 
 10年ほど前、アンチエイジングで知られる医師の南雲吉則さんにインタビューしたことがある。実年齢より10歳は若く見える秘けつは「節制」に尽きたのだが、その努力を長続きさせるための考え方が記憶に残る
◆仮に余命3日と告げられた時、人は何をするか。おいしいものを食べるといった快楽を求める人が多い。では余命3カ月なら? 海外旅行など非日常を選ぶ人が多い。では余命3年なら? すると、いい仕事をしようとか家族を大切にしようと答える人が増えるそうだ
◆つまり、若さを保つための努力が快楽や非日常のためなら長続きしない。健康や若さを保つには人生の目的を知ること、日常の大切さに気づくことにあるという意味。至言である
◆誰もが長寿を保証されているわけではない。持てる時間は人それぞれ。だからこそ与えられた仕事を続け、家族を大切にするといった長期的目標を大切にしたい
◆きょうは勤労感謝の日。好きなことを仕事にできた人はそれほど多くないと思うが、出合った仕事を好きになることはできる。米大リーグの大谷翔平選手がきのう、2年連続で最優秀選手(MVP)に選ばれた。日々の節制、努力のたまものだ。けがを経験した大谷選手はこう思っているだろう。働ける毎日に感謝することが大事。いつかごほうびになって返ってくる、と。(義)