働く人の手取りを増やそうと、毎日のようにニュースになっている「103万円の壁」。
そんな中、パートの主婦などが直面している別の壁の問題で新たな動きがありました。
日本商工会議所が年金制度改革に関する提言を公表しました。
その内容は、将来的に「第3号被保険者制度」の解消を求めるというものです。
22日は「『“3号”解消』なら専業主婦・主夫にどう影響?」をテーマにお伝えします。
21日、日本商工会議所が政府に提言したのは、第3号被保険者の将来的な廃止ですが、まず、3号について説明していきます。
現在の年金加入者は、大きく分けて第1号から第3号に分類されます。
今回の提言に大きく関係してくるのは、675万人ほどいる会社員の配偶者など年収130万円未満の3号に分類される人たちです。
今回、日本商工会議所は次のように説明しました。
日商企画調査部長・五十嵐克也氏:
年収の壁の問題、この根っこにありますのは、第3号被保険者制度についてです。この制度、基礎年金制度ができた40年前に同時にできているわけです。もはや時代に合わない世帯モデルを元にしたもの。被扶養者として保険料の本人負担がないということから、不公平じゃないかというような指摘も根強い制度。これを解消する検討をすべきというふうに思います。
制度が導入された1986年当時、専業主婦などの第3号の人口は1092万人。
結婚すると仕事を辞める女性が多い時代でした。
そのため、国は本人が保険料を支払わなくても国民年金に加入できるよう、配偶者が加入している年金制度で保険料分を負担することにしました。
理由は、以前の制度のままでは会社員の配偶者が老後に年金が受け取れない恐れがあるためでした。
しかし、今やライフスタイルの変化で共働き世帯が当時に比べて大幅に増えています。
さらに提言では、第3号被保険者で居続けるために働き控えをする人もいることから、「年収の壁」の根本的な要因になっていると指摘しています。
“3号”廃止の時期について、日本商工会議所は「将来的に」と話し、次のように提言しています。
日商企画調査部長・五十嵐克也氏:
これ(3号制度)を今急にやめろと言っても無理です。無理ですし、基本的に3号のところにおられる方々に負担を求めるようなことにもなります。そういう方々への配慮もあって、方向としてはこの制度を解消すべきだということでありますけれども、例えば10年20年後に解消することを目指して検討していただく。その決断は早い方がいいと思う。そうしないと皆さんの準備が進められない。
街で“3号”の人に話を聞きました。
専業主婦(30代):
実際に金額がいくらかかってくるかで生活が変わってくるかなと思う。今まで払ってなかった分、払わないといけないのは家計にも負担。
育休中(30代):
厳しいですね、かなり。世知辛いというか、どうしたものやらって感じです。フルで働くしかないのかな。どうなんだろう。
では、今回の提言の狙いは何なのでしょうか。
社労士の渋田貴正さんに分析をお願いしました。
社会保険労務士法人 V-SPirits・渋田貴正さん:
今労働者不足が叫ばれている。これからどんどん労働者が減っていく時代になっていく。そんな中、日本に今いる労働力を増やせないかということで、130万・106万の壁の範囲内にいる人たちに労働時間を増やして働いてほしい。
そして今、第3号の大部分は女性なわけですが、他にはどんな影響が予想されるのでしょうか。
社会保険労務士法人 V-SPirits・渋田貴正さん:
日本は女性の社会進出というのがまだまだ諸外国ほど進んでない。それの一因は第3号被保険者制度という制度なんじゃないかということで、女性の社会進出の一助になる狙い。
長年続いてきた制度の行方はどうなるのか、今後の政府の対応も気になります。