「大統領がピッチャーなら私はキャッチャー…(2024年11月21日『毎日新聞』-「余録」)

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石破茂首相が欠席し、バイデン米大統領が後列右から2番目に追いやられたアジア太平洋経済協力会議APEC)の集合写真=リマで2024年11月16日、AP
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バイデン米大統領(前列左端)が加わって撮り直された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の集合写真。前列中央は議長国ブラジルのルラ大統領、前列右端は中国の習近平国家主席リオデジャネイロで2024年11月19日、AP
 「大統領がピッチャーなら私はキャッチャー」「いや野球ではキャッチャーがサインを送る。どんどん送ってくれ」。レーガン米大統領中曽根康弘首相の「ロン・ヤス関係」強化が演出された1983年5月の日米首脳会談である
▲続く米ウィリアムズバーグ・サミット。集合写真で中曽根氏がレーガン氏の隣の目立つ位置に立った。2人は話しながら撮影場所に移動した。中曽根氏は「しめたとばかりそばから動かなかった」と回想している
▲撮影前にロンがヤスの腕を引っ張ったという目撃証言もある。冷戦下、中曽根氏は異例の対ソ強硬発言でレーガン氏を援護した。立ち位置などを決める議長国の配慮があっても不思議ではない
▲南米で続いた国際会議で集合写真をめぐる「事件」が相次いだ。ペルーではフジモリ元大統領の墓を参った石破茂首相が事故渋滞で撮影に欠席し、バイデン米大統領は後列の隅に追いやられた
▲ブラジルでは就任後日の浅い石破首相が最後列で無事写真に納まったものの、バイデン氏ら3カ国首脳が間に合わず撮り直す事態に。バイデン氏も2度目は前列中央に立ったが、終始前列中央だった習近平中国国家主席との違いに焦点が当たった
▲いずれの会議も陰の主役は保護主義に動き、ウクライナ支援や地球温暖化には関心が薄いトランプ前米大統領。もし出席していたら議長国はもっと気を使っただろう。石破首相には気の毒のようだが、儀礼とはいえ集合写真は時に国際政治の現実を映し出す鏡にもなる。