世界子どもの日 誰もが持つ権利を知ろう(2024年11月20日『山陽新聞』-「社説」)
きょう11月20日は「世界子どもの日」。1959年のこの日に「子どもの権利宣言」が、その30年後の89年のこの日、世界の全ての子が持つ権利を定めた「子どもの権利条約」が国連で採択された。
重要な出来事が重なる節目の日である。子どもの権利についてあらためて考える機会にしたい。
「子どもの権利条約について聞いたことがありますか」。9月上旬、吉備高原希望中(岡山県吉備中央町)で岡山ユニセフ協会(岡山市)の出前講座があった。日本を含む世界196の国と地域が締約する条約は前文と54条の条文から成る。このうち、具体的な子どもの権利を定めた1条から40条までが記された資料が生徒たちに配られた。
生きる権利、育つ権利、意見を表明する権利、休んだり遊んだりする権利、暴力や戦争から保護される権利…。「こんなにあるの?」。講座に参加した生徒10人は驚いた表情だった。
「守られていない権利がありますか」と講師が問いかけると、生徒同士が話し合う場面もあった。遊びながら子どもの権利を学ぶ「かるた」もあり、2時間はあっという間に過ぎた。
感想を聞くと、ある生徒は「子どもにも権利があり、守られていると思うと安心した」と言い、別の生徒は「虐待を受けている子どももいる。そんな子にこそ、権利の話を伝えてあげてほしい」。小学校時代にいじめに遭った経験がある生徒もおり、「この学校では子どもの権利が守られていると感じる」と話してくれた。
子どもの権利について知ることは子ども自身の生きる力につながると感じた。子どもはもちろん、子どもの意見を受け止める側の大人もまた、学ぶことが必要だ。
全国的にも子どもの権利は十分に知られているとは言い難い。こども家庭庁が昨年実施した認知度調査では、権利条約について「聞いたことがない」との回答は小学4~6年生で約7割、中学生でも約6割に上り、大人でも半数近かった。
日本が権利条約を批准して今年で30年。長年、条約に対応した国内法がなかったが、昨年4月に「こども基本法」が施行され、子どもの権利の周知や啓発の重要性が明記された。大きな一歩となる。
ことし出た「かっぱ語録」という不思議な題の本で、谷川俊太郎さんがこんなふうに呼ばれていたことを知った。「現代詩の世界に朝を連れてきた」人である、と
▲等しく地上に訪れ、生きとし生けるものに光を恵む。朝には肯定の響きがある。教科書で読んだ「朝のリレー」を思い出す人もいれば、谷川さんの詞で小室等さんが歌った「お早うの朝」を口ずさむ人がいるかもしれない。♪夢には明日がかくれている/だからお早(はよ)うの朝はくる
▲うまくいかぬ人生と向き合い、顔を上げるための応援歌にも読める。翻訳した漫画「ピーナッツ」では、苦みの利いた人生訓を少年少女が垂れる。そんな作品を届け続けてくれた谷川さんの訃報がきのう届いた。92歳
▲かつて、世界人権宣言の翻訳をアムネスティ日本に頼まれたのも谷川さんだからこそだろう。〈第8条 泣き寝入りはしない〉〈第14条 逃げるのも権利〉といったふうに、子どもでも読み取りやすい日本語に直した
▲きょう、国連「世界子どもの日」。35年前に子どもの権利条約を採択した日でもある。紛争下で命や人権を奪われた子どもは昨年、1日平均31人に上ったと聞く。等しく照らす朝の光が待たれる。