衆院の首相指名選挙は、1回目の投票で過半数(233票)を得る候補が出ず、上位2人による決選投票となった。決選投票では石破氏221票、野田氏160票、無効票84票で、石破氏は過半数に届かなかったが、首相に選ばれた。参院本会議では1回目で石破氏が指名された。
第2次内閣は、衆院選で落選した法相と農相にそれぞれ鈴木馨祐元外務副大臣(47)と江藤拓元農相(64)を起用した。公明党代表に転じた斉藤鉄夫氏(72)の後任の国土交通相には、同党の中野洋昌元経済産業政務官(46)を充てた。
◆政治資金規正法の再改正は?
裏金事件を巡っては、政治資金収支報告書に不記載があったが衆参の政治倫理審査会(政倫審)で弁明をしていない議員が少なくない。首相は「説明責任を果たすため、政倫審の場を含めてあらゆる場を積極的に活用されることを期待する」とも述べた。
◆第1次内閣での石破首相の在職日数は42日間
第1次石破内閣は11日午前の臨時閣議で総辞職した。第1次内閣での首相の在職日数は42日間だった。
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◆裏金を許さないという国民の声に向き合って
「政治とカネ」問題への対応を巡り、与党が大敗した衆院選を経て、第2次石破内閣が発足した。有権者は自民、公明の与党に過半数の議席を与えず、民意の支えは脆弱(ぜいじゃく)だ。石破茂首相も与党も、自民の裏金事件を決して許さないという国民の声に今度こそ正面から向き合い、早急に結果を出して応えなければならない。
一般市民が物価高に苦しむ中で明らかになった裏金事件は、国民と国会議員の金銭感覚のズレをまざまざと見せつけた。選挙後、首相は政治改革を裏付ける法整備の一部についてようやく進める姿勢を示したが、裏金事件の全容解明には二の足を踏んだままだ。
首相指名選挙の決選投票が行われた衆院本会議=11日、国会で(浅井慶撮影)
「政治の使命は勇気と真心をもって真実を語ることに尽きる」。首相が折に触れて披露する、政治の師から受け継いだ信念だ。裏金事件の真実を語るためには、真相の究明は避けて通れない。政治改革と両輪で進めるべきだ。
選挙結果は、議席を増やした立憲民主党などの野党を全面的に支持したものでもない。現に政権交代は起きていない。ただ、第2次石破内閣は野党の協力を必要とする。与野党双方で国民を向いた政治を取り戻さなければ、与党はさらに、野党は再び、民意を失うだけだ。(山口哲人)