衆院選の敗因として、石井氏は自民の派閥裏金問題による「逆風」を挙げたが、それだけではない。公明自身の問題もある。
与党の一員でありながら、自民に直言する役割を果たせていない公明の姿勢が、有権者に見透かされた面も否めない。
25年の節目を迎えた自民との連立を総括すべき時ではないか。
公明は1999年、自民、旧自由との3党による連立政権に加わった。支持母体・創価学会の集票力を背景に影響力を発揮し、福祉政策などを推進した。
集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法の制定が典型だ。当初は消極姿勢を示していたが、自民に押し切られた。最近は、政権にとどまること自体が目的になっているように映る。
支持者の高齢化に伴う党勢の衰えも大きな課題だ。
公明は今月、結党60年を迎える。長らく生活者重視や平和外交を訴えてきたが、社会の変化とともに課題も様変わりしている。
内外に難題が山積する中、今後も存在感を維持するには、時代に応じた新しい政策を打ち出すことが欠かせない。
斉藤氏は当選11回で、環境相や党幹事長などを歴任してきた。党内に世代交代を求める声もあるなか、安定感と実績があるベテランに頼らざるを得ないほど、取り巻く情勢は厳しくなった。
自民党の派閥裏金事件に端を発する「政治とカネ」への対応が問われた衆院選で、公示前の32議席から8議席減らした。比例代表の得票数を100万票以上失い、初めて600万票を下回った。「政治への信頼回復」を掲げて臨んだものの、有権者の理解を得ることはできなかった。
石井代表は選挙後、自民党の裏金問題を引き合いに「公明は全く関係なかったが、与党はひとくくりにみなされた」と述べている。自民党が非公認候補の党支部に2千万円の活動費を支給していたことについて「非常に大きなダメージになった」とした。
思い違いもはなはだしいと言わざるを得ない。
集票でもたれ合う自公の緊張感のなさを、有権者は突き放したとみるべきだろう。
引き続き政権与党にとどまるというなら、選挙で示された民意の深奥を見つめ、自らに足りなかった、至らなかった点を改める行動に踏み出す必要がある。
裏金事件は誰がいつ始めたのかさえ不明なままである。再検証や政治資金規正法の再改定に取り組み、掲げてきた「クリーンな政治」を実現させるべきだ。