公明党(代表交代)に関する社説・コラム(2024年11月9日)

代表交代の公明党 連立での役割問い直す時(2024年11月9日『毎日新聞』-「社説」)
 
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公明党の代表に就任する斉藤鉄夫国土交通相=2023年8月25日、内橋寿明撮影
 与党が過半数割れした衆院選の結果を受け、公明党自民党との連立で果たす役割について、問い直すことを迫られている。
 9月に就任したばかりの石井啓一代表が大敗の責任を取って辞任し、新代表に斉藤鉄夫国土交通相が就く。9日の臨時党大会で決定する。
 衆院選の敗因として、石井氏は自民の派閥裏金問題による「逆風」を挙げたが、それだけではない。公明自身の問題もある。
 政治資金規正法の改正協議では、裏金作りに使われた政治資金パーティーや、企業・団体献金の温存を図る自民案を受け入れた。衆院選では自民が非公認にした「裏金議員」らを推薦した。
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大敗した衆院選から一夜明け、報道陣の取材に応じる公明党石井啓一代表=国会内で10月28日午後1時44分、宮間俊樹撮影
 与党の一員でありながら、自民に直言する役割を果たせていない公明の姿勢が、有権者に見透かされた面も否めない。
 25年の節目を迎えた自民との連立を総括すべき時ではないか。
 公明は1999年、自民、旧自由との3党による連立政権に加わった。支持母体・創価学会の集票力を背景に影響力を発揮し、福祉政策などを推進した。
 だが、第2次安倍晋三政権下で「自民1強」が進むと、独善的な政権運営に対するブレーキ役を果たせなくなった。
 集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法の制定が典型だ。当初は消極姿勢を示していたが、自民に押し切られた。最近は、政権にとどまること自体が目的になっているように映る。
 少数与党となったため、自民はキャスチングボートを握る国民民主党との政策協議に力を注ぐ。公明の影は薄くなっており、政策に主張を反映できるかどうかの正念場を迎えている。
 支持者の高齢化に伴う党勢の衰えも大きな課題だ。
 公明は今月、結党60年を迎える。長らく生活者重視や平和外交を訴えてきたが、社会の変化とともに課題も様変わりしている。
 少子高齢化が進み、社会保障の持続可能性が問われている。安全保障環境は厳しさを増し、平和の構築は一筋縄ではいかない。
 内外に難題が山積する中、今後も存在感を維持するには、時代に応じた新しい政策を打ち出すことが欠かせない。

公明党の新代表 存在意義を再確認せよ(2024年11月9日『信濃毎日新聞』-「社説」)
 
 長らく政権与党にある公明党の新代表に、国土交通相の斉藤鉄夫氏(72)が就任する。きょうの臨時党大会で承認される見通しだ。
 10月の衆院選で落選した石井啓一代表(66)の後任である。その石井氏が代表に就いたのは9月の党大会だ。在任わずか40日余りでの交代は党にとって危機的な状況といえよう。
 斉藤氏は当選11回で、環境相や党幹事長などを歴任してきた。党内に世代交代を求める声もあるなか、安定感と実績があるベテランに頼らざるを得ないほど、取り巻く情勢は厳しくなった。
 自民党の派閥裏金事件に端を発する「政治とカネ」への対応が問われた衆院選で、公示前の32議席から8議席減らした。比例代表の得票数を100万票以上失い、初めて600万票を下回った。「政治への信頼回復」を掲げて臨んだものの、有権者の理解を得ることはできなかった。
 石井代表は選挙後、自民党の裏金問題を引き合いに「公明は全く関係なかったが、与党はひとくくりにみなされた」と述べている。自民党が非公認候補の党支部に2千万円の活動費を支給していたことについて「非常に大きなダメージになった」とした。
 思い違いもはなはだしいと言わざるを得ない。
 政策活動費の10年後の領収書公開など、抜け穴だらけの改定政治資金規正法自民党とともに成立させている。さらに衆院選では、裏金問題で自民党が非公認とした候補らを「地元の意向」として推薦してもいる。
 集票でもたれ合う自公の緊張感のなさを、有権者は突き放したとみるべきだろう。
 引き続き政権与党にとどまるというなら、選挙で示された民意の深奥を見つめ、自らに足りなかった、至らなかった点を改める行動に踏み出す必要がある。
 「1強」の強引な国会運営が通用しなくなり、自民党は野党との政策協議に応じざるを得なくなった。その状況は公明党にとってもむしろ好機といえる。
 裏金事件は誰がいつ始めたのかさえ不明なままである。再検証や政治資金規正法の再改定に取り組み、掲げてきた「クリーンな政治」を実現させるべきだ。
 25年来の自民党との連立でさびついた「平和の党」の看板も磨き直してはどうか。米大統領にトランプ氏が返り咲くなど、国内外の情勢は先行きが見通しにくくなっている。党の存在意義は何か、自省からの再出発が必要である。