広がり欠く“石破降ろし” 過半数割れで支持率急落でも“石破続投”容認が7割(2024年11月9日『TBS NEWS』)

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衆議院選挙の結果、与党は15年ぶりに過半数割れとなり、最新のJNN世論調査で石破内閣の支持率は先月の調査から12.7%急落し38.9%となった。それでも「石破総理辞める必要なし」が7割を超える結果になった。“少数与党”として石破内閣はどこまで持ちこたえるのか。
 
■政権発足1か月で「支持率10%以上急落」は過去30年で4例のみ
10月に石破内閣が発足して最初のJNN世論調査では支持率51.6%。これは2001年の小泉内閣以降、歴代内閣の発足直後の支持率では2008年の麻生内閣に次ぐ低い支持率だった。石破内閣はその後1か月を経て、12.7%下落し38.9%となった。
原因を探る前に、政権発足たった1か月で10%以上、支持率が下落した過去の内閣とその要因について調べた。こちらも同じく2001年以降で調べたところ菅直人内閣の1例のみだったので、さらに30年前まで遡ってみた。その結果、以下4例がそれにあたる。
(1)94年の羽田内閣はそもそも在任64日の短命内閣だった。非自民・非共産による7党1会派による連立内閣だったが総理に指名された直後に社会党が連立離脱し“少数与党”に。予算成立後、内閣不信任案が提出され内閣は総辞職。
(2)96年に発足した橋本内閣は、発足直後に住専住宅金融専門会社)の不良債権公的資金(税金)を投入することへの批判が支持率急落を招いた。
(3)2000年発足の森内閣は当初から総理の選び方が“密室談合”だと批判され、その批判を引きずったまま森総理から「神の国」発言が飛び出し支持率は急落。(※上記は「神の国」発言後緊急で行ったJNN世論調査の支持率)
(4)2010年の民主党菅直人内閣では就任後、総理の口から唐突にでた「消費税10%」発言で支持率は急落。
■15年ぶり与党過半数割れでも「総理辞任の必要なし」7割超
では石破内閣が開始早々躓いたのは何が原因なのか。
過去30年間を振り返り「発足直後に10%以上支持率低下」したのは4例しかないことを考えれば、いかに今回が異例かが分かる。過去の例はそもそも短命だった羽田政権を除けば、総理自身の“失言”や世論から不評を買った“失策”が多い。では石破総理がそれに匹敵するような失言や失策があったかというと、そうではない。むしろ総理自身の“発言のブレ”による信頼の低下や、前の政権から引きずった「政治とカネ」の問題に対する批判が主な要因となっているのではないか。
今回の衆院選は、15年ぶりに与党過半数割れとなり、羽田内閣以来、発足時“少数与党”となった。この結果については、「妥当」と考える世論が半数以上にのぼる。
一方でこの責任をとって石破総理が辞任すべきか聞いたところ、「辞任の必要はない」が7割を超えた。この結果は政権幹部も意外だったようで「面白い数字だ」と吐露した。政権が発足したばかりで実績がなく、評価できないと世論も様子見の状態なのか。裏金事件で石破総理は悪くないと感じる人もいるのかもしれない。
この数字が後押しとなったのか、今のところ目立った「石破降ろし」の動きは出ていない。7日、衆院選の総括ともいえる両院議員懇談会が開催され、党執行部への批判、不満が噴出した。会議は予定を大幅に超える3時間となったが、早期に総理の辞任を求める声はほとんど出なかった。石破総理が辞任しても“少数与党”から脱却できる展望がないことがあげられる。
この2日前、自らに近い国会議員と会食した高市早苗前経済安保担当大臣は出席者にこう呼びかけた。
自民党がガタガタしていたら野党になってしまう。しっかりとまとまって、盛り立てていきましょう」
■どこまで続く「政治とカネ」の問題 自民党の対応に8割超が「納得せず」
かといって国民が自民党の「政治とカネ」への対応に納得しているかというと8割以上が納得していない。
この問題は自民党としてどうケリを付けるのだろうか。
衆院選で非公認となった裏金議員で、今回当選した議員を自民党が追加で公認することについては7割が反対している。こうした世論を受けてか自民党の森山幹事長は、これらの議員を自民党の会派には入れたが、追加公認は「検討していない」と明言した。石破総理自身は選挙前、追加公認には前向きだったが、世論の反発を考え慎重な対応を取らざるを得なくなったと見られる。
自民党は今回の衆院選挙でいわゆる裏金議員46人を非公認または、公認はするものの比例代表での重複立候補をさせない対応をとった。公認するか非公認とするか、その線引きの1つは政治倫理審査会で自ら説明したかどうか、だった。この基準は来年夏の参議院選挙でも適用するという。そうであれば、参議院でまだ説明していない裏金議員に政倫審出席を求めるかどうかも焦点だ。
さらに次の臨時国会では、先の通常国会で“ザル法”と批判されながらも成立した政治資金規正法の再改正も焦点となる。政党から政治家個人に渡され、領収書のいらない「政策活動費」や自民党の主な収入源となってきた「企業・団体献金」について主要野党は廃止や禁止を求めている。再発防止のため、政治資金の法令違反時に勧告する第三者機関の設置を盛り込めるかどうかもポイントになる。
少数与党”が今回どこまで野党と譲歩し、再改正にこぎ着けるか。再発防止への実効性が担保される法律にならなければ「政治とカネ」の問題は、次の参院選でも争点になりかねない。
■「30代の支持率1位」飛躍した国民民主党「103万の壁」見直しの実現は?
今回の衆院選議席数を飛躍的に伸ばしたのが国民民主党である。「各党の支持率」をみても、最も上げ幅が大きいのが国民民主で、先月の調査1.5%から9.1%に急上昇している。これまでは政党支持率は1位自民、2位立憲、3位維新の順だったが、今回は維新を押しのけ3位となった。
支持政党を世代別に詳しく見ると、国民民主は30歳未満では自民党に次ぐ2位、30代では1位だ。
その国民民主が今回の選挙で強く訴えたのが「手取りを増やす」政策。なかでも年収「103万円の壁」を178万円まで引き上げることを主張した、都知事選で2位となった石丸伸二氏のSNS戦略を参考にしたという、玉木代表の動画は各種SNSで拡散され、とくに若者層の支持に繋がった。
課題も指摘されている。高所得者にとっては減税幅が大きく有利な点、この恩恵を受けない低所得者層への対応、そして財源だ。政府は国民民主が求める178万円まで引き上げることで7~8兆円程度減収となる。手取りを増やすなら、社会保険料が発生する「106万/130万の壁」が本丸ではないかと指摘する声も上がる。そうして懸念も加味した上で、こうした「年収の壁」の引き上げには66%が賛成だという。
今後自民党と国民民主党は政策責任者同士がこの「103万円の壁」の見直しを含む経済対策の協議を重ねる。自民党内でも年末の税制改正大綱にむけ、税制調査会が本格稼働し、詳細設計を協議する運びだ。
過半数割れしている“少数与党”の自民党にとっては、野党がまとまって内閣不信任案を提出すればすぐ可決される不安定な状況であり、これまで「数の力」で押し切ってきた法案の通し方は通用しない。
自民党としては、これまで政府・与党に”是々非々”の対応をし、過去2度予算案に賛成した“実績”のある国民民主党からの協力を得たい。そのためにも国民民主が求める「103万の壁」の引き上げは、自民にとって最初の関門となる。
■不信任案で総辞職・・“短命”羽田内閣の二の舞に?
かつて羽田内閣は予算成立後、当時の野党・自民党などから内閣不信任案をつきつけられ、羽田総理は総辞職を選んだ。石破内閣もやり方を誤れば、同じ運命を辿る可能性がある。
まず次の臨時国会補正予算案をめぐる議論が最初の山場だ。
総理は衆院選の福島・いわき市での第一声で「国費13兆円、事業総額37兆円が昨年の補正予算だった。それを上回る大きな補正予算を成立させたい」と宣言した。新たな経済対策の財源であり震災復興予算も含まれるとはいえ、年々膨張する大規模補正予算に野党も同調するかどうか。
仮に補正予算をくぐり抜けても、最大の山場は25年度の本予算案の審議だ。羽田内閣のように本予算成立だけが唯一最大の目的となれば、同じように予算成立後に退陣となる可能性がある。同じ轍を踏まないためにこれまで以上に丁寧な国会審議が求められる。 
TBS政治部 世論調査担当デスク 室井祐作
JNN世論調査 設問と結果は次の通り】
●石破内閣の支持率は38.9%(前回調査より12.7ポイント下落)、不支持率は
57.3%(前回調査より13.8ポイント上昇)
政党支持率は、自民党24.6%(前回より9.3ポイント下落)、立憲民主党
12.8%(前回より1.1ポイント上昇)、日本維新の会4.0%(前回より0.1ポ
イント上昇)、国民民主党9.1%(前回より7.6ポイント上昇)
衆院選の結果与党が15年ぶりの過半数割れになった結果について、「妥当だ
」53%、「与党がもっと議席を伸ばすべきだった」18%、「野党がもっと議席を伸ばすべきだった」22%
●与党過半数割れの責任をとって石破総理が「辞任すべき」21%、「辞任する必要はない」71%
●「政治とカネ」をめぐるこれまでの自民党の対応について、「大いに納得」1%、「ある程度納得」16%、「あまり納得せず」37%、「全く納得せず」44%
●裏金事件で非公認となり今回当選した議員を自民党追加公認することに「賛成
」20%、「反対」70%
●国民民主党が主張する年収「103万円の壁」を178万円に引き上げることについて「賛成」66%、「反対」20%
●次の政権の枠組みで望ましい形は「自公中心にした政権の継続」44%、「立憲を中心とした政権に交代」が41%
●総理指名選挙で自民・石破総裁と立憲野田代表による決選投票になった場合、望ましいのは「石破茂」50%、「野田佳彦」35%
【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。
11月2日(土)、3日(日)に全国18歳以上の男女2371人〔固定848人、携帯1523人〕に調査を行い、そのうち43.0%にあたる1020人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話508人、携帯512人でした。
インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。
より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。